プレスリリース
No.3710
2025/01/22
エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)市場に関する調査を実施(2025年)

2035年度のエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)市場規模を735億円と予測
~改正省エネ法の施行、蓄電池の普及、DRready制度の導入などが後押しとなり、市場は成長の見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)市場に関する調査を実施し、容量市場や需給調整市場、経済DRなどの動向、参入事業者の動向、将来展望を明らかにした。
エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)の市場規模推移・予測
エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)の市場規模推移・予測

1.市場概況

エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB:Energy Resource Aggregation Business)とは、発電事業者や電力の需要家が保有するエネルギーリソース※1を束ね、将来の電力の供給力や、電力に不足または余剰が生じた際の調整力として活用するビジネスである。多数の需要家を束ねるERAB事業者(アグリゲーター)が介在することにより、DSR(Demand Side Resources:需要家エネルギーリソース)やDER(Distributed Energy Resources:分散型エネルギーリソース)のエネルギーリソースを有効に活用し、家庭も含めた多様な需要家が電力取引に参加できるようになる。

アグリゲーターが束ねた電力は、将来の供給力を取引する容量市場(発動指令電源)や需給調整市場の三次調整力②といった電力市場での供給力・調整力として、取引される。また、小売電気事業者が、電力の需要計画と実需要に差が生じること(インバランス)を回避したり、電力の需給逼迫時に高騰する卸電力市場からの調達を回避したりする目的で、自社と小売契約を結ぶ需要家に下げDR※2を要請して、協力した需要家にインセンティブを支払う経済DRも活用されている。

本調査におけるエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス市場は、ERAB事業者(アグリゲーター)が容量市場や需給調整市場での取引により得る収入、および需要家が電力の需要を抑える(節電する、下げDR)ことで得るインセンティブ(経済DR)を合算して、金額規模を算出した。
2022年度のエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス市場を173億1,000万円、2023年度の同市場を前年度比123.9%の214億4,000万円と推計した。市場は右肩上がりで推移しており、主にエネルギーを大量に消費する高圧・特別高圧の需要家において、脱炭素化の推進やエネルギー価格高騰対策として、経済DRが注目されていること等が背景として挙げられる。

※1. 太陽光発電設備・蓄電池・自家発電機・生産設備・ヒートポンプ給湯機・EV等、需要家の受電点以下に接続されている発電設備・蓄電設備・負荷設備や、電力系統に直接接続される発電設備・蓄電設備を指す。
​※2. 需要家のエネルギーリソース(DSR)を制御し、電力需要パターンを変化させること。電力の需要を抑える(節電する)ことを「下げDR」、反対に上げることを「上げDR」という。

2.注目トピック

低圧リソースのDR活用拡大に向けて、「DRready制度」の具体化に向けた検討が進む

DR(Demand Response:デマンドレスポンス)のさらなる拡大に向けて、一般家庭等の低圧需要家が保有するエネルギーリソースの活用が期待される。
しかし、一方では1件あたりのDR可能量の少なさが課題となっている。加えて、節電要請のような行動誘因型のDRは一般消費者の行動変容に依存するところがあり、DRの拡大という観点では限界がある。
そこで、アグリゲーターによって複数の低圧需要家のリソースを遠隔または自動で制御し、発動指令電源や三次調整力②等の電力市場での供給力・調整力として有効活用していくことが重要となる。そのためには、低圧需要家が活用する様々なリソースについては、遠隔制御機能が標準装備されている必要がある。これについては近年、「DRready(DRレディ)制度」として提唱されている。

DRready制度全体の方向性としては、達成すべきエネルギー消費効率と目標年度を定めたトップランナー制度を参考に、要件を満たす製品の導入を促す仕組みを創設する案が示されている。経済産業省 資源エネルギー庁が立ち上げた「DRready勉強会」で取りまとめるDRready要件を判断基準とし、達成すべき出荷割合(対象機器の出荷台数に占める、DRready要件を満たす機器の割合)と目標年度を定める。先行して議論されているヒートポンプ給湯機については、同要件の早期普及と機器の開発サイクルを勘案し、目標年度は2030年度となる見込みである。

3.将来展望

2023年の改正省エネ法の施行に伴い、1年間で原油1,500kl以上相当のエネルギーを使用する特定事業者等によるDR(Demand Response)実施日数の報告制度がスタートしている。また、今後は蓄電池(系統用・定置用)の導入量の増加が見込まれることから、蓄電池のエネルギーリソースを活用したDR参入の拡大が期待される。
加えて、2026年度には需給調整市場への低圧需要家リソースの参入解禁が予定されているほか、DRready制度の導入により、市場の参入障壁も払拭が進む見込みである。
2025年度のエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス市場を255億円、2030年度は430億円、2035年度には735億円に拡大を予測する。

オリジナル情報が掲載された ショートレポート を1,000円でご利用いただけます!

【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】
Aパターン
  • セグメント別の動向
  •  容量市場におけるERABの市場規模(2023年度)は141.2億円と推計
     需給調整市場におけるERABの市場規模(2023年度)は60.0億円と推計
     経済DRにおけるERABの市場規模(2023年度)は13.2億円と推計
  • 注目トピックの追加情報
  • 将来展望の追加情報

  • 以下の 利用方法を確認する ボタン↓から詳細をご確認ください

    調査要綱

    1.調査期間: 2024年10月~12月
    2.調査対象: 大手電力会社、新電力会社、再エネ発電・蓄電システムエンジニアリング会社、エネルギーマネジメントサービス会社
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

    <エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスとは>

    国内の電力市場では、太陽光発電等の再生可能エネルギーの急速な導入拡大と、卸電力価格高騰時や需給逼迫時等における電力の安定供給を両立させるために、需要家エネルギーリソース(DSR:Demand Side Resources)を活用するデマンドレスポンス(DR:Demand Response)と、分散型エネルギーリソース(DER:Distributed Energy Resources)を活用するバーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)の準備が進められている。

    ​従来のDR・VPPによる電力需要抑制では、小売電気事業者が大口需要家と需給調整契約を締結して対応していた。しかし、今後の拡大が期待されるDR・VPPでは、多数の需要家を束ねるERAB事業者(アグリゲーター)が介在することにより、DSRやDERのエネルギーリソースを有効に活用し、家庭も含めた多様な需要家が電力取引に参加できるようになる。

    エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB:Energy Resource Aggregation Business)とは、発電事業者や電力の需要家が保有するエネルギーリソースを束ね、将来の電力の供給力や、電力に不足または余剰が生じた際の調整力を活用するビジネスである。

    <エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス市場とは>

    本調査におけるエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)市場とは、DR・VPPに係るビジネスを展開するERAB事業者(アグリゲーター)が容量市場や需給調整市場での取引により得る収入、および需要家が電力の需要を抑える(節電する、下げDR)ことで得るインセンティブ(経済DR)を合算して、金額(市場)規模を算出した。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2024年12月25日
    体裁
    A4 132ページ
    価格(税込)
    198,000円 (本体価格 180,000円)

    お問い合わせ先

    部署
    マーケティング本部 広報チーム
    住所
    〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
    電話番号
    03-5371-6912
    メールアドレス
    press@yano.co.jp
    ©2025 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
      本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
      報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
      利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。