7月26日、日産自動車とルノーは資本関係の見直しに関する最終契約を締結したと発表した。ルノーは日産の持分を43%から15%へ引き下げ、ルノー、日産それぞれが相手方の株式を15%ずつ保有することとなる。これにより日産は長期におよんだ経営再建フェイズに資本レベルにおいても完全決着、ようやく “ルノー傘下” という経営上の制約から脱する。一方、協業体制は維持、日産はルノーが設立するEVの新会社に出資、EV市場における世界戦略においてルノーとの戦略的連携をはかる。
さて、そのEVであるが、世界のEV市場の6割を占める中国自動車市場の構造変化が急激だ。11日、中国自動車工業協会(CAAM)は6月の自動車販売台数は262万2千台、前年同月比+4.8%となったと発表した。これに対して報道では「前月に比較すると伸び率が大幅に鈍化、2023年の目標販売数2667万台の達成は難しい」と中国の景気動向を見通す視点からの論調が目立った。しかし、注目すべきはガソリン車の退潮と新エネルギー車の急速な伸長である。自動車販売市場全体における後者のシェアは30.7%に達し、伸び率は前年同月比+35.2%を記録した。
新エネルギー車の急速な市場拡大に伴い比亜迪(BYD)、蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(シャオペン)をはじめとする中国ローカルEVメーカーが急伸、シェアは自動車市場全体における5割に迫る。結果、ガソリン車における技術力とブランド力で存在感を示してきた日本勢は苦戦を強いられる。今年に入って日産、ホンダなど日本メーカーは急速にシェアを落としており、トヨタも前年を割り込んだ。各社は中国国内における生産体制の見直しとEV開発拠点の現地化を急ぐ。
一方、輸出市場の勢力図も変わりつつある。今年1-3月期、中国の輸出台数は107万台、日本の95万台を上回った。もちろん、数字には外資メーカーの中国生産車の台数も含まれる。しかし、元気なのはやはり中国EVメーカーだ。成長市場である東南アジアはこれまで日本勢の牙城だった。しかし、中国EV勢にとっても恰好のターゲットだ。加えて、やはり中国市場で競争力を失った韓国メーカーもアジア戦略を強化する。もちろんEVだけが次世代自動車の選択肢ではない。しかし、現実の市場で競争力を維持することがブランド力の強化と投資原資の確保につながることは言うまでもない。日本勢にはリアルな市場で戦うための大胆な戦略とスピードに期待したい。