企業物価が上昇を続けている。日本銀行の企業物価指数(7月速報)によると国内企業物価指数は前月比+0.4%、前年比+8.6%、前月比プラスは2020年12月以降、20カ月連続だ。とりわけ、円安とウクライナ情勢を背景に輸入物価の上昇が顕著だ。輸入物価指数は円ベースで前月比+2.4%、前年比では+48.0%に達する。品目別では、石油・石炭・天然ガスの前年同月比+127.9%を筆頭に、木材関連が同+49.4%、飲食料品・食料用農水産物が同+30.4%、電気・電子機器が同+21.5%と続く。これら以外の品目もすべて二桁以上の上昇となっており、影響は実態経済に広範に及びつつある。
新型コロナウイルス感染拡大は経済活動の様相を一変させた。しかし、緊急経済対策として導入された実質無利子・無担保の制度融資が多くの中小企業を救った。残高41兆円を越える返済猶予付きの所謂 “ゼロゼロ融資” によって、コロナ禍のこの2年、倒産件数はこの数十年で最低レベルに抑えられた。しかし、依然として収束の見通しが立たない中、多くの企業で業績の回復が遅れる。全国信用保証協会連合会によると代位弁済の件数も昨年8月以降、対前年比増に転じている。据え置かれてきたコロナ融資の返済がはじまる中、中小企業の倒産増が懸念される。そこにこの物価高である。
企業物価高は日本の産業構造上の問題点を浮き彫りにする。資源高と材料費の高騰による原価上昇を誰が負担するのか。総務省が発表した6月の消費者物価指数は前年同月比+2.4%、6月の企業物価指数は同+9.4%である。この差はどこにいったのか。もちろん、時間軸のズレもあるし、サプライチェーン各取引段階における経費吸収努力もあるだろう。しかし、コストの上昇分を価格に転嫁できないまま取引を継続せざるを得ない中小企業が少なくないことも事実だ。
6月22日、中小企業庁は3月に実施した “価格交渉促進月間” のフォローアップ調査の結果を公表した。これによると直近6ヶ月間のコスト上昇分を価格に転嫁出来なかった下請企業は22.6%に達する。そればかりか取引の縮小・停止を恐れて協議の申し入れを躊躇した企業や価格協議そのものを拒否された企業など、交渉すら出来ていない中小企業が9.9%も存在する。サプライチェーンのもっとも弱い立場の者にコストを負担させ、サプライチェーン全体の競争力を維持する、といったビジネスモデルが長続きするはずがない。価格形成に最大の影響力を有する大手企業は適正な価格転嫁とともにサプライチェーン全体の付加価値向上の実現にリーダーシップを発揮していただきたい。