5日、上海で第2回中国国際輸入博覧会が始まった。昨年、米中貿易摩擦が深刻化する中、国家の威信を賭けて開催された第1回は世界151カ国・地域から3,617社が出展、来場したバイヤーは40万人を越え、成約見込み額は578億3,000万ドルに達した。1年後、米との対立が続く中での第2回であるが、主催者発表では参加国・地域は昨年を上回り、展示面積も30万平米から36万平米へと拡大、国内外から事前登録したバイヤーは50万人を超えたという。
第2回もきっと成功裏に幕を閉じるのであろう。しかしながら、足元の購買力はやや不透明感が増しつつある。この1-9月期の輸入額は前年を5%下回る。7-9月期のGDP成長率も前年同期比+6%にとどまった。これは1990年代前半以降でもっとも低い水準であり、とりわけ、固定資産投資が低調だった。党指導部としては構造改革を一挙に進め、先端分野への集中投資をはかりたいところだ。しかし、巨大な格差を内包したままの中国において “荒療治” は党への不満を誘発しかねない。不良債権問題とバブル懸念が限界に達しつつある中、施策は中途半端にならざるを得ない。
米国との対立が深まる中、2019年上期の中国からの対米輸出は25%減となった。金額ベースで3兆8千億円規模に達する。そして、その6割が中米、欧州、台湾の対米輸出増に振り代わる。外資はもちろん中国勢も続々と国外へ生産拠点を移す。グローバルサプライチェーンの構造変化はもはや後戻り出来ない段階まで進む。
4日、ASEAN10カ国に日中韓、印、豪、ニュージーランドを加えた16カ国によるRCEP交渉がインドを巡り紛糾、目指してきた年内合意が見送られた。巨額の対中貿易赤字を抱えるインドが最終局面で離脱を表明、インド抜きでの先行合意を主張したASEANとあくまでもインドを加えた自由貿易圏を目指したい日本などが対立した。
世界人口の半分、貿易総額の3割を占めるRCEPは、高度なルールへの適応が求められるTPPと比較すると新興国にも受け入れやすい “自由貿易圏” だった。ゆえに、合意の先送りは中国にとって景気反転に向けての政策オプションが一つ失われたことを意味する。残された突破口は11月中の決着を目指して協議が続く米国との「部分合意」である。ここが対米関係も含めた中国にとっての正念場であり、それはすなわち2020年の世界経済の行方そのものである。