
“課徴金減免制度”の活用を申し出た大林組が、清水、大成、鹿島との受注調整を公取委に認めた。これによりJR東海のリニア建設における不正受注問題は大手ゼネコン4社による「談合事件」へと様相を転じた。
2005年、大手ゼネコン各社は談合への決別を申し合わせたうえで、2006年に透明性のある入札・契約制度に向けての業界提言を発表した。所謂“談合決別宣言”である。しかし、問題は解決しない。これ以降、一般競争入札への大幅なダンピング応札が繰り返される一方で、名古屋市下水道、名古屋高速道路公社の工事に対する強制捜査も相次いだ。
有力政治家の威光を借りた“大物仕切り屋”はもはやいない。しかし、その「事前調整」的な体質は脈々と引き継がれている。2014年の北陸新幹線の入札談合事件、2016年の東日本大震災の被災高速道路の復旧工事談合が記憶に新しい。
談合による不正入札は市場原理を歪め、そのしわ寄せは利用者である国民が負う。共謀して費用を嵩上げし、不当な利益を業者が得ることに道理はない。受注額の“仲良し配分”などましてや論外である。ただ、高度な技術を持つスーパーゼネコンが4社に限られる現状にあって、工事規模が大きく、特殊な技術が求められ、かつ、納期に制約がある事案については仕様設計から業者選定に至る制度全体のあり方を再検討すべきかもしれない。
アイデア、技術、役務などの貢献は準備段階にあっても公正に評価されるべきで、例えば、一定水準以上の提案に対しては特定条件のもとで対価を支払っても良いだろう。発注者はすべての工程で最高水準を目指すべきであり、そのためのコストはきちんと負担すべきである。そうであってはじめて事業者のモチベーション、透明・公正な競争、高度な品質、そして、高い安全性が担保できる。

エルサレムをイスラエルの首都と認定したトランプ氏に世界が困惑する。
1993年8月、PLOのアラファト議長とイスラエル・ラビン首相はビル・クリントン米大統領の仲介のもと「PLOを自治政府として、イスラエルを国家として相互に承認する」ことに合意した。以来、“2国家共存”が問題の最終解決に向けて国際社会の前提となった。つまり、トランプ氏による今回の宣言は積み上げられてきた関係者の努力を言わば白紙に戻すものであり、同時に中東和平における仲介者としての役割を米国が放棄したことを意味する。
ブエノスアイレスで開催中のWTO閣僚会合で米国は、欧州、日本とともに中国を念頭に“市場を歪める不公正な貿易慣行”に懸念を発表した。しかし、米国は11日の演説で多角的貿易の理念を否定し、反WTOの立場を鮮明にしている。そして、閉会を待たずして帰国、結果、WTOは全会一致による閣僚宣言の採択を諦めざるを得ない事態となった。
そうした中、「多国間貿易とWTOルールの有効性を強く支持する」と表明したのはまさにその中国であり、一方で、「世界の平和を破壊するのは誰か、誰が国際社会のならず者か」と北朝鮮が声をあげる。
インターネット安全法、技術移転の強制、資金規制、国内産業に対する巨額補助金、、、貿易における中国の“不公正”は周知の事実であり、ましてや北朝鮮については“何をか言わんや”である。とは言え、米国の国際的な信任が揺らぐ中、世界から共通の大義が失われてゆく、未来が抱えるリスクはここにある。

スーパーコンピュータ開発のベンチャー「PEZY Computing」社を率いる齊藤元章氏がNEDOからの助成金4億3千万円を不正受給した容疑で逮捕された。
虚偽報告は事実であろう。また、不正流用の有無、総額35億円にのぼる助成金と政界周辺へ通じる人脈との関係なども取り沙汰される。不明な点も多く、解明が待たれる。
一方、NEDOを舞台にした助成金不正はこれまでも繰り返されてきた。助成金の使途はNEDOが認定した特定の研究開発テーマに限定される。しかし、そもそも運転資金に余裕がなく、経営基盤が脆弱なスタートアップ期の研究開発型ベンチャーにとって、資金使途の“境目”がグレーになりがちなことも事実である。もちろん、経営者の倫理意識の欠如や管理能力の低さを容認することは出来ない。ただ、そうであれば助成する側からの経営参画や監査体制の強化など、もう一歩踏み込んだ支援が必要であったろう。
先端技術開発、ベンチャー育成、産業振興等において公的資金が一定の役割を果たすことに異論はない。とは言え、乱立した官民ファンドも多くが所期の目的を達することが出来ていない。経産省の海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)は2013年度から2016年度で1510億円の投資を計画した。しかし、実行されたのは310億円、執行率は20.5%にとどまる。文科省の官民イノベーションプログラム(国立4大学発ベンチャーキャピタル)は1000億円の国費が予算化されたが投資額は54億円、執行率は5%という有様である(2017年7月時点)。
PEZY Computingが開発したスーパーコンピュータ“暁光”の計算速度は毎秒1京9千兆回を越える。世界のスパコンランキングの計算速度部門で4位、消費電力性能で1位に輝いている。国は本件を反面教師として将来性のある研究プロジェクトや有望ベンチャーに対する公的支援の公正、透明、効果的な在り方について、省益を越えた次元において根本から見直す必要がある。

2018年度税制改正の概要がみえてきた。公的年金控除と給与所得控除の見直しを骨子とする政府原案は「高額所得者に対して手厚い現行制度の見直しと多様化する働き方への対応が狙い」という。
年金収入だけで1千万円を越える、あるいは、年金収入以外の高額所得に対する控除の縮小は妥当だろう。そもそも対象となるのは年金受給者の上位0.5%の富裕高齢者である。一方、給与所得における高額所得の基準を年収800万円においた所得控除縮小のインパクトは小さくない。
平成27年分の民間給与実態統計調査(国税庁)によると年収800万円以上の給与所得者は426万人、全体の8.9%が対象となる。確かに平均値が420万円であることを鑑みると800万円は“高額”と言えなくもない。とは言え、最前線で活躍する現役ビジネスパーソンの“成果”を剥ぎ取るような増税は、何よりも社会全体から「真面目に努力する」ことへのモチベーションを低下させかねない。子育て世代には配慮するというが、「高所得」ゆえに既に様々な公的支援の対象外となっている彼らが感じる不公平感は大きい。
公正さという視点に立てば、給与外の高額所得者による5兆円を越える“合法的”な租税回避や毎年新規に発生する6千億円を越える滞納にも本気で切り込む必要があるだろう。9月末、突然の衆院解散の名目は「増税される2%の消費税の使い道の変更」であったはずだ。使途の変更を国民に問うのであれば、徴税制度の変更をこそ国民に問うべきである。

神戸製鋼の品質データの改ざん問題で、不正な製品の納入先525社のうち9割の470社で安全性が確認された。日本企業の品質管理体制に疑念を抱かせたこの問題の背景には、利益重視の経営姿勢、納期遵守を求める取引先の圧力、硬直した組織、経営と現場の乖離等を指摘できるが、いずれにせよ不正の常態化に弁解の余地は一切あるまい。
一方、JIS規格より高いレベルに自社の安全基準を設定し、更にそれを上回る品質を要求した発注者側の要求仕様はそもそも妥当であったのか、という問題もあわせて考えてみる必要がある。今回の事件では納入業者が神戸製鋼という“大企業”であり、したがって、契約段階において発注者側に“優越的地位の濫用”があったとは思えない。しかし、発注者である親事業者と下請としての納入業者の関係を鑑みれば、多くの取引において、例え必要以上に高い要求であっても受け入れざるを得ない現実があることも否めない。
公正取引委員会によると今年度上半期における下請法違反に関する勧告、指導件数は4098件に達する。内訳は「支払い遅延」55%、ついで「買い叩き」21.5%、「減額」8.8%が上位を占め、下請事業者が被った不利益の原状回復金額は24億円となったという。
ただし、ここで言う「減額」は“下請事業者側の責に帰すべき理由がない”場合の「不当な減額」であって、つまり、そもそも“適正とは言い難い契約条件を満たせなかった”場合の「正当な減額」は含まれない。公正、対等な取引の原点は両者が合意した「契約内容の適正さ」にある。その意味で品質への信頼回復は親事業者と下請事業者、両者のコンプライアンス(倫理・法令順守)そのものにかかっていると言えよう。

大手銀行7グループの中間決算が出揃った。長期化する日銀のマイナス金利を背景に資金貸出による資金利益は7社すべてでマイナス、業務純益のプラスは消費者ローンが好調だった新生銀行と特別配当を計上した三井住友FGの2社のみとなった。メガバンク各行は決算に前後して国内店舗網の縮小、事務作業の効率化による業務量の削減を骨子とした構造改革案を発表、とりわけ「1.9万人」と数値を明示しての人員削減案を打ち出したみずほFGの“覚悟”は既存金融の「稼ぐ力」の後退を象徴する。
フィンテックの波がマネーのサプライチェーンを大きく変えつつある中、既存業界の構造転換は避けられまい。しかし、より本質的な問題は投資の受け皿が世界規模でなくなりつつあるということだ。国内企業の内部留保はこの4年間で100兆円積み増され、400兆円を越えた。米運用会社の資産規模も20兆ドルを突破、過去最高になった。世界の通過供給量は1京円、この10年間で7割増え、世界のGDPを16%上回るという(日経)。こうした中での株高、そして、不動産や仮想通貨相場の高騰。日米欧の金融緩和の限界が見えつつある今、その反動は量的にも質的にもコントロールが難しくなりつつある。
11月3日、ウルグアイの中央銀行がブロックチェーン技術を活用した法定デジタル通貨“eペソ”の試験運用をスタートさせた。中央銀行による仮想通貨の発効は欧州、中国、ロシアなど主要国が計画を表明しているが、人口344万人の南米の小国が世界に先駆けた点が痛快だ。導入の狙いは紙幣の印刷、運搬、警備費用の削減と資金洗浄や脱税の防止など極めてリアル、まさに実体経済そのものとして実験が行われる。そう、フィンテックの効用と可能性はまさにこのようなシンプルな領域にこそあるのかもしれない。