富士フイルムは傘下の富士ゼロックスの海外販社における純利益の水増しが最終的に375億円となった、と発表した。
粉飾はニュージーランドとオーストラリアの販社で6年間にわたって繰り返された。外部専門家による第3者委員会は、業績連動型の報酬体系と「業績達成に対する本社からの強烈な圧力」が直接的な要因であったと結論づけた。つまり、行き過ぎた売上至上主義が不正を誘発したということである。しかし、より深刻な問題は経営の“最高レベル”によって隠蔽工作が続けられてきた、という事実である。
最初の内部告発が2015年7月、ニュージーランドのメディアが粉飾の可能性を報道したのが2016年9月、当局の捜査が終了したのが同年12月、こうした経緯を鑑みると対応の遅さは歴然である。
12日、富士フイルムホールディングスの助野社長は、2兆3千億円の連結売上のうち1兆円を占める富士ゼロックスに対して“遠慮があった”と会見で語ったが、遠慮があった、とのトップの言葉に隠蔽と先送りに対する未必の加担が潜む。
富士ゼロックスは会長を含む役員5人の引責辞任を決めた。ホールディングスの会長、社長も役員報酬の10%を3ヶ月返上するという。問題となった社員は既に退職している。不正を実行した個人の責任は言うまでもない。しかし、それは“通常”の手続きの中で行われてきたものだ。個人を不正へ追い込み、通常のルールにもとづく手続きの中でそれを承認し、更にその隠蔽をはかってきたこの組織に深く巣くった問題の本質は未だ曖昧なままである。