今週の"ひらめき"視点

航空、地方創生、コロナ後に向けて動き出す。今、優先すべきは社会の正常化、TOKYOは勇気ある決断を!

24日、新型コロナウイルスのワクチン接種が世界で10億回を越えた。英国やイスラエルでは集団免疫の獲得も視野に入ってきた。しかし、世界全体でみると1日あたりの新規感染者は71万人、死者も1万人を越える(26日)。変異株が猛威をふるうインドの状況は深刻だ。ブラジルの死者数はこの4月に月間最多記録を更新した。新興国だけではない。24日、独では州の裁量を越えた全国一律規制をはじめて導入した。仏、ベルギー、オランダでも夜間外出が制限される。米国も「前例のないリスク」との認識を示したうえで渡航中止勧告の対象国を世界の8割に拡大した。世界の “人の移動” 需要の回復は遠い。観光産業、航空業界は時間との戦いの様相を呈してきた。一方、逆境の中、未来への準備もはじまっている。

日本航空(JAL)は中国系LCC春秋航空の子会社「春秋航空日本」の連結子会社化を発表した。JALは昨年11月に実施した公募増資で約1,800億円を調達したが、この一部をコロナ後に向けた戦略投資に振り向ける。
全日本空輸(ANA)もピーチ・アビエーション(Peach)との路線分担など収益性に軸足を置いた航空事業の最適化とグループ全体の構造改革を急ぐ。目玉は非航空分野だ。ANAセールスを分割、旅行事業で蓄積された顧客データを活用したプラットフォーム事業(ANA X)と、航空セールス事業や国内33支店を拠点とした地域創生事業(ANAあきんど)に再編し、ビジネスの強化をはかる。

コロナ後に向けての動きは各方面で活発化しつつある。4月1日、2018年10月に発足した「地域創生インバウンド協議会」が一般社団法人として再スタートした。同協議会はANA総合研究所が主導、当社も設立時から参加、社団法人化に際しては監事の任を賜った。会員は、観光関連はもちろん、建設、金融、メディア、エンターテインメント、アートなど地方創生を支える幅広い企業58社と33の地方自治体、団体などで構成される。法人化初年度は専門知識の共有、会員交流に加え、オープンイノベーションによる事業創出に取り組む方針だ。ご関心のある企業は是非とも参加いただきたい。

さて、前述したとおり、世界全体でみれば新型コロナウイルスは依然として「前例のないリスク」であり、命にとっての脅威であり、かつ、経済活動における最大の障害である。3回目の緊急事態宣言が発出された日本も社会活動は制限され、医療現場は重大な危機に直面している。こうした現実を直視すれば東京2020オリンピック・パラリンピック大会の開催は世界と、世界の医療従事者たちに対する反社会的行為とも言える。TOKYOは世界の “リスクの最小化” にこそ貢献すべきだ。五輪の公益性とTOKYOのブランド価値を棄損させないためにも一刻も早く中止を決断し、社会を前へ進めていただきたい。

※一般社団法人地域創生インバウンド協議会ウェブサイト (inbound-council.com)


今週の“ひらめき”視点 4.25 – 4.29
代表取締役社長 水越 孝