今週の"ひらめき"視点
10万円のこども給付で安心安全は担保されない。根本的かつ総合的な政策を立案し、実行を
10日、衆議院選挙での信任を背景に第2次岸田内閣がスタートした。その最初の仕事が「子供に対する現金給付に際しての所得制限」に関する公明党との合意だ。これに対する各層からの不評はご承知のとおりであるが、そもそもの違和感は “票” の対価として支持者に提示した約束に対する面子の “すり合わせ” にしか見えない点にある。加えて、マイナンバーカード保有者へのクーポン、学生への10万円給付、最大250万円の事業者向けの給付金だ。政策の焦点は曖昧であり、整合性は見えてこない。ゆえに効果は疑問だ。
首相官邸HPでは「まず、新型コロナ対応と経済対策に取り組む」ことが表明されている。そう、「まず、新型コロナ対応」であり、そこからの経済再生が優先されるのであれば、昨年1月以来、後手に回り続けた対応を総括したうえで、対策の全体像を示す必要があろう。
具体的には都道府県、自治体を越えた広域連携、病床および検査体制の拡充、潜在医療従事者の登録、定期訓練、それに対応した報酬、保健師助産師看護師法の見直し、宿泊療養施設の確保、医療機器の整備、オンライン診療の強化、ロジスティクスの再構築、専門家会議の在り方、司令塔の明確化などだ。課題は出尽くしており、時限を切っての総合対策が望まれる。
一方、経営難に直面している事業者も広範に及ぶ。実質的な強制にもとづく営業制限への一定の補償は当然だ。しかし、現行給付の在り方に問題はないか。倒産件数は30年ぶりの低水準だ。信用保証承諾残高は43兆円、コロナ禍前の2倍を越えた。代位弁済も低水準だ。つまり、お金は回っている。では、救済すべきは誰か。新たな借り入れを躊躇し、廃業を選択する経営者の多くが高齢者である。であれば、打ち手は給付ではなく事業承継支援であり、業態改革支援であろう。今を乗り切るための給付を否定するものではないが、問題の本質は一時金では解決しない。経済困窮者への支援も同じだ。セーフティネットの再構築、就業機会の拡充、実質賃金の持続的な上昇こそが政策主題である。
こと新型コロナウイルスに限定すれば与党内の派閥はもちろん、野党各派においても基本的な問題認識は一致しているはずだ。
国会はそれぞれの支持者への約束、すなわち、バラマキを一端棚上げしたうえで、医療、経済それぞれの施策を総合的に組み上げ、効果と予算を政治的に “すり合わせ”、第6波、そして、その先に来るであろう新たな医療災害に備えていただきたく思う。
今週の“ひらめき”視点 11.7 – 11.11
代表取締役社長 水越 孝