化学産業のカーボンニュートラルに向けた動向と展望

2050年のカーボンニュートラル達成を各国政府が発表しているなか、素材分野でも脱炭素に向けた動きが活発化している。化学産業は鉄鋼、セメント業界に続き多くのCO2を排出していることから、カーボンニュートラル達成における重要産業の1つとみなされている。国内石油化学メーカーは、カーボンニュートラルと資源循環の2つの観点から取り組みを進めており、多くの企業は「CO2原料化は化学産業の使命」という認識を持つ。
国内石油化学メーカーによる脱炭素への取り組みとしては、Scope 1, 2における燃料転換と原料転換、CCUSなどの脱炭素化、Scope 3におけるバイオ原料の提供、資源循環が挙げられる。
Scope 1, 2では各社のナフサ分解炉の特性などによってバイオマス燃料、または水素・アンモニアを使用しエネルギーの低炭素化に取り組むケースが主流である。排出されるCO2はCCUSにより、原料化・貯留する技術が国の支援を基に開発されている状況にある。Scope 3の資源循環においてはまだ課題は多いもの、使用済み製品のケミカルリサイクル(油化、ガス化)ならびにカーボンリサイクルによるメタンの製造なども複線的に進められている。
本レポートでは、国内企業にヒアリングを実施し、日本国内における化学産業のカーボンニュートラルに向けた燃料転換や原料転換の動向、業界における認証制度・環境イニシアチブの導入状況、参入各社の取り組みや今後の事業展開の方向性などを明らかにするとともに、化学産業のカーボンニュートラルを取り巻く環境や見通しについて分析を行っている。

発刊日
2023/07/27
体裁
A4 / 165頁
資料コード
C65110300
PDFサイズ
10.9MB
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調査資料詳細データ

調査概要
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調査目的:国内化学産業のカーボンニュートラルに向けた動向及び戦略、サプライチェーンの川上に位置する企業の事業施策を調査するとともに、カーボンニュートラルに向けた取り組み及び戦略を明らかにする
調査対象:石油精製会社、石油化学メーカー、総合化学メーカー、原料転換、燃料転換、資源循環、ケミカルリサイクル、ナフサ分解炉、水素・アンモニア燃料、CCUS、石油化学コンビナート
調査方法:弊社専門調査員による直接面接取材をベースに、文献調査を併用。
調査期間:2023年5月~2023年7月

調査結果サマリー
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化学産業のカーボンニュートラルに向けた動向調査を実施(2023年)
国内化学産業川上における2030年度のGHG排出量(Scope 1+2)は5,969万t-CO2eを予測

資料ポイント
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  • 各コンビナートによるカーボンニュートラル戦略の具現化が進む
  • 焦点はCO2の原料化

リサーチ内容

調査結果のポイント

第1章 化学産業のカーボンニュートラルに向けた動向と展望

トリクルダウン方式により再構築するサステナブル化学
スピード感のある投資とScope 3への早期着手が求められる
脱炭素技術の選択肢の多さがカーボンニュートラルの推進を鈍らせる
  (図)国内化学産業上流のGHG排出量(Scope 1+2)推移予測
川上企業のScope 3 削減による波及効果が川下企業のカーボンニュートラルの一助に
海外で顕著なサプライチェーンの連携が日本の化学産業でも求められる
スピード感を持った投資判断が生み出す化学産業の牽引力
「市場原理」×「環境対応」が導く新しい競争軸
ケミカルリサイクルの補完的な位置づけからマテリアルリサイクルとのシナジーへ
資源循環を最重要課題と位置づけ早期投資によるCR率4%からのジャンプを
  (図)プラスチックリサイクル量

第2章 国内外の石油業界動向

2023年にはエチレン供給能力が2017年比で米国1.5倍、中国2倍まで拡大
シェールブーム終息、脱炭素化政策等が絡み、原油価格は上昇の方向へ
  (表)日本のペトロケミカル生産量推移
  (表)西欧州におけるペトロケミカル生産量推移
  (表)米国におけるエタン・エチレン、プロピレン生産量推移
欧米ではCNエチレンプラントも計画、脱炭素投資はより一層活発に
日本には見られない欧米の規制側面、政治側面が石油メジャーを後押し
  (表)大手石油メーカーにおけるカーボンニュートラル目標の一例
複数の合併・買収・再編を経て世界の石油メジャーが100年以上の歴史を乗り越え今に至る
  (表)石油ガス開発業界の世界市場シェア(売上高ベース、2021年)
世界各地で地域特性を生かしたカーボンニュートラルへの方向性が明らかに
CCUSは欧州がリード、北海で巨大貯蔵地を確保しメガトン級のCO2を回収予定
  (表)石油業界カーボンニュートラルに向けた方向性
 
【日本のコンビナートのカーボンニュートラルに向けた戦略・取り組み】
太平洋ベルトに位置する日本ならではのカーボンニュートラルコンビナート構想が活発化
港湾分野にて水素や燃料NH3の大量・安定・安価な輸入を可能とする受入環境の整備が進む
  (図)全国の石油化学コンビナート
  (表)各コンビナートにおけるカーボンニュートラル取り組み概要
  (図)カーボンニュートラルコンビナート構想図
  (表)カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けた技術メニューと
  産業間連携ポテンシャル

第3章 化学産業のカーボンニュートラルにおける政策動向

日化協、製品のライフサイクルを通したGHG排出削減を重要視しCFP算出ガイドを公開
自国の地域ブロック経済圏のバリューチェーン維持しつつ国際競争力も向上
  (図)化学産業におけるサプライチェーン
  (図)ナフサ分解による基礎化学品製造およびCO2排出量
  (図)Scope 1, 2のCO2排出量削減イメージ図
化学産業のカーボンニュートラルには約7.4兆円の投資規模が必要と算定
様々な基礎化学品の原料となるナフサ分解を強みとしCO2の資源循環にも着目
  (表)化学産業における排出源・脱炭素手法
  (図)化学産業のトランジションファイナンスロードマップ
  (図)化学産業のトランジションファイナンスロードマップ(2)
全産業排出量の15%を占める多排出産業と位置付けられる化学産業は日本CNのカギになる
サーマルリサイクル率60%超、廃プラの資源循環の答えはケミカルリサイクル
  (図)化学産業エネルギー由来の排出内訳
新水素戦略では水素とCO2を原料としたオレフィンの製造を化学産業用途の焦点とする
水素価格は2050年までに200円台/kg H2を目指し各産業への大量供給へ

第4章 化学産業におけるカーボンニュートラル技術動向

2030年に向けた市場の変化に対応すべく脱炭素技術には柔軟性を重視
日本の特長と強みを把握・生かした取り組みが化学産業を含めた素材産業の課題
 
【石油精製・石油化学・総合化学メーカーのCN戦略】
Scope 1, 2の削減を着実に実行しScope 3へ取り組みの裾野を拡大する方向性
(表)化学サプライチェーンに携わる主要プレーヤーのCN目標の一例
 
【燃料転換、CO2の資源循環・回収、ケミカルリサイクル、原料転換】
4-1. 燃料転換
  グレーアンモニアで混焼率を向上しグリーン水素・アンモニアへの移行を見込む
  バイオ燃料では木質バイオマスに着目、2030年までにブラックペレットを商用化
    (図)化学産業におけるカーボンニュートラル構想図(①燃料転換)
    (表)燃料多量消費型設備の違い
    (表)化学産業川上における燃料転換予測
    (表)化学産業川上における使用燃料候補比較
    (表)石油精製メーカー・化学メーカーにおける燃料転換への取り組み
4-2. CO2 の資源循環・回収
  CCS の適地ではないと言われていた日本、2050 年には1.2~2.4 億t 貯留
  石油化学メーカーもCCU/CCS に参画、吸着剤・アミンなどの触媒開発も活発
    (図)化学産業におけるカーボンニュートラル構想図(②CO2資源循環・回収(CCU/CCS))
    (表)CO2回収技術概要
    (表)化学メーカーのCCUを用いたCO2原料化の取り組み
    (表)JOGMEC選定の先進的CCS事業(化学産業企業参画のみ)
    (表)石油精製メーカー・化学メーカーのCCSの取り組み
    (表)石油精製メーカー・化学メーカーにおけるCO2の資源循環・回収の取り組み(その1)
    (表)石油精製メーカー・化学メーカーにおけるCO2の資源循環・回収の取り組み(その2)
4-3. ケミカルリサイクル
  化学業界ではモノマー化・油化技術が先行、2023年度中にも油化プラント稼働
  他業種との連携も進め廃プラスチックの安定調達・回収スキームの構築が重視
    (図)化学産業におけるカーボンニュートラル構想図(③ケミカルリサイクル)
    (表)ケミカルリサイクル技術概要
    (表)各ケミカルリサイクル手法の強みと課題
    (表)石油精製メーカー・化学メーカーにおけるケミカルリサイクルへの取り組み
4-4. 原料転換
  エンドユーザーへのニーズ拡大と価格が最重要課題と位置づけられる
  コスト競争力のあるバイオナフサ市場の構築に向けSAF の国内製造体制を計画
    (図)化学産業におけるカーボンニュートラル構想図(④原料転換)
    (表)ナフサ生産量・輸入量(国内)
    (表)石油精製メーカーのSAF供給目標
4-5. まとめ
    (表)化学産業の企業別CN動向
    (表)出光興産 CN動向
    (表)ENEOS CN動向
    (表)コスモエネルギー(丸善石油化学) CN動向
    (表)東ソー CN動向
    (表)レゾナック CN動向
    (表)三井化学 CN動向
    (表)住友化学 CN動向
    (表)三菱ケミカル CN動向
    (表)旭化成 CN動向
    (表)三菱ガス化学 CN動向
    (表)トクヤマ CN動向

第5章 化学産業関連企業の展望と戦略

出光興産株式会社
  2030年を見据え、多様な脱炭素メニューを段階的にスクリーニング
  走りながら目指すカーボンニュートラル
  新規事業創出関連投資は2025年度までに2,900億円、2030年度までに累計1兆円 へ
  「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」等の事業領域に注力
  基礎化学品事業のCN実現に向けた取り組みの柱はバイオと資源循環
  バイオナフサは2026年度をめどに「ユーザー」から「メーカー」に
  2030年度には国内でSAFの生産規模を500,000kL/年に
  G7広島サミットではジェット燃料サプライチェーンの脱炭素化にも取り組む
  2025年度に処理能力20,000t/年の使用済みプラ油化ケミカルリサイクルプラントを商用化予定
  耐水性、粉砕性に優れた、石炭と同等品質のブラックペレットの開発に注力
  国内森林資源にも注目、国産間伐材や製材端材等の利用も見据える
  各拠点のポテンシャルと強みをベースに、コンビナート全体のCNXセンター化を推進
 
ENEOS株式会社
  2040年のScope 1, 2でのカーボンニュートラル達成
  2050年でScope 3を含んだネットゼロの実現を目指す
  「カーボンニュートラル目線」で自社戦略を見直し2023年5月に新基本計画を発表
  第3次中期経営計画における投資額は1.6兆円を想定、この内9,600億円は戦略投資
  エネルギートランジションやサーキュラーエコノミーを推進しCNの実現を図る
  2023年6月の国の施策発表を受け、CCSは2030年度までの実装を目指す
  国内での森林吸収に向けた連携体制の構築と並行し、海外でのクレジット創出も推進
  Scope3の絶対量削減を目標にせず、エネルギートランジションの推進によるCI削減を図る
  国内市場シェア50%に向けたSAFの製造体制も本格化
  排出量の可視化を重要視、CFP算定に向けた協働検討も開始
 
丸善石油化学株式会社
  燃料の燃焼に伴い排出しているCO2の低減を優先し
  アンモニアへの燃料転換に集中
  2030年にコスモエネルギーグループの石油事業で2013年比30万tのCO2削減を目指す
  自社の2021年度のエネルギー起源CO2排出量221万t、ナフサ分解炉が80%近くを占める
  既存のインフラ設備活用等の観点から、カーボンフリー燃料のアンモニアを有望視
  中長期的には燃料転換後のメタン用途開拓も課題、原料化やLNG代替としての利用を見据える
  廃プラスチックの直接分解で得たオレフィンはナフサクラッカーでの分離精製を検討中
  2023年度からベンチスケール試験装置稼働、2029年度に数千~数万t/年スケールの実証を計画
 
東ソー株式会社
  CN達成の最重要テーマとして自家火力発電の燃料転換に本格着手
  2030年度に向けて約1,200億円のGHG排出量削減投資を計画
  「使用エネルギーの脱炭素化」、「CO2の回収・有効利用」等を重要施策と位置付ける
  2026年4月よりバイオマスを主燃料とした発電所が南陽事業所で稼働予定
  使用バイオマス燃料は含有アルカリ成分と調達量を基準に選定を進める
  NOx等による性能劣化を解決した高耐久性CO2回収アミン液を独自開発
  2024年秋頃稼働予定の南陽事業所新設備で年間約4万tのCO2回収を目指す
  ナフサ分解炉では稼働効率化に加え、オイルコークスとバイオマスの混焼も検討
  相溶化剤メルセン®-Sによる多層フィルムのマテリアルリサイクル、水平リサイクルを促進 
 
株式会社レゾナック
  20年にわたりガス化手法による廃プラの有効利用を実施
  資源循環をエンドゴールとし、プラスチックのClosed Loop構築を目指す
  Scope 1, 2では川崎事業所と大分石油コンビナートの自家火力発電設備を中心とした施策を展開
  エネルギー総合効率化とLNGへの燃料切り替えに加え、アンモニア混焼とCCUも検討
  2003年事業開始のKPRではプラスチック処理量が2022年1月に累計100万t到達
  低炭素アンモニアは化石燃料由来のアンモニアと比べてGHG排出量の80%強の削減を実現
  低圧・低濃度のCO2分離回収を目的とする構造柔軟型PCPの開発を推進
  2027年以降、実ガスでの化学品製造検証と経済性評価を計画
 
三井化学株式会社
  自社製品の製造工程からユーザーのエンドにまで携わるCE実現に向け
  カーボンニュートラル、バイオマス、リサイクルの3つの戦略を推進
  化学業界ではトップレベルの内部炭素価格を15,000円/t CO2に増加
  グリーンケミカル事業推進室の独立によりサーキュラーエコノミーへの対応を加速化
  大阪工場をモデルに「カーボンニュートラル構想」を具現化へ
  パッケージとしては他社を巻き込んだコンビナート全体でのCCUSと原燃料転換を想定
  バイオマス製品の拡大はマスバランス方式の普及が鍵
  マイクロ波と油化を筆頭に幅広い樹脂とプラント規模に対応できるCRを推進
 
三菱ガス化学株式会社
  カーボンニュートラルに向け、特徴ある化学企業として
  環境循環型メタノール構想をはじめとしたCCUS事業を全方位へ
  CCUSの実装化によるScope 1, 2の削減へ
  外部への供給に向けては地熱発電とバイオマス発電も活発化
  2021年にはCO2と水素を原料とした国際規格を満たすメタノールを製造
  企業間での連携を強化し、排ガス由来などの環境循環型の早期実装化を目指す
  世界第3位のPC生産能力の競争力維持強化として長年「CO2 to PC」に着目
  中間剤を用いた化学反応によりCO2の原料化を実現
 
株式会社トクヤマ
  自家発電所のバイオマス・アンモニアへの燃料転換を計画
  これまでの食塩電解技術を活かし「グリーン水素供給」にも挑戦
  2022年4月にスピード感を持った新規事業立ち上げを目的にニュービジネスセンターを設置
  燃料・原料起源GHG削減と技術開発に着目したアクションプラン実施体制強化へ
  2022年2月にトレーサビリティや環境への配慮、合法性の担保が不可欠と考えGGLを取得
  不可避のGHG排出に対して、CCUS等や製品によるオフセットの可能性を模索
  2025年にゼロギャップ技術を適用したアルカリ水電解装置の事業化を目指す
  食塩電解で苛性ソーダと同時に製造する水素の活用に向けて取り組みを進める 
 
アルケマ株式会社
  スペシャルティケミカル材料に特化して化学業界のCNの一端を担う
  2023年5月、SBTi認証を取得した新たなGHG排出量削減目標を設定
  本拠地フランスではエネルギー会社とバイオメタン300GWhの長期契約を締結
  メカニカルリサイクルVirtucycle®を通じたサプライチェーン全体での取り組みに着手
  ひまし油由来のバイオPAを自社のカーボンニュートラル達成には不可欠と位置付ける
  シンガポール拠点でPA11およびオレオケミカル製品の生産能力を50%増強
  2016年より持続可能なひまし油の栽培プロジェクト「Pragati」を継続的に実施 

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