病院は山積する経営課題をいかにして乗り越えるのか
病院グループの動向
■病院グループの動き
わが国の病院グループの歴史を振り返ると、急性期医療を主体に成長を遂げたグループと療養病床や精神病床を主体に成長を遂げたグループに大別される。
急性期医療を主体にしたグループで事業収益上位に挙げられるのは、一般社団法人徳洲会、医療法人社団明理会、医療法人社団明芳会、医療法人社団愛友会、医療法人鉄蕉会、医療法人社団誠馨会、医療法人社団協友会、社会医療法人財団池友会などがある。それに対して療養病床や精神病床を主体にしたグループで事業収益上位に挙げられるのは、医療法人社団葵会、医療法人錦秀会、医療法人和同会、医療法人社団浅ノ川、医療法人相生会などである。
現在、わが国では2025年の医療提供体制を新たに構築するため全国の都道府県において地域医療構想の作成が行われている。そのため、病院グループもグループ病院のあり方を再検討することが求められている。これまで急性期医療を主体にしてきた病院グループの病院は、高度急性期あるいは急性期病床を主体に今後も展開していく傾向が強い。それに対して療養病床や精神病床を主体にしてきた病院グループは、存続のあり方を見直す必要に迫られることになる。療養病床に関しては通常であれば介護医療院への転換が充当である。問題は精神病床である。このまま精神病床を存続させるのか、あるいは別の病床に転換させるのか決断を迫られることになると考える。
このような状況にあって、新たな病院グループも形成されつつある。それは回復期リハビリテーション病床を主体にした病院グループだ。最大規模の回復期リハビリテーション病床を有する一般社団法人巨樹の会は、病院グループとしてはカマチグループに属することから単独の病院グループではない。それ以外では、療養病床から介護医療院への転換を図り、介護医療院でグループを展開しようとするところが登場する可能性もありうる。これは、当該地域の医療事情が大きく変化し、その状況下で経営を持続するためには自分たちの思いだけで病床を維持することができなくなってきているからだ。
某病院グループの経営幹部は、「病院間競争の大勢は2025年ではなく2020年には決まる。だから我々は常に先頭グループを走ることを心掛けている」と述べている。このことを裏付けるように、閣議決定後2017年6月9日に公表された「経済財政運営と改革の基本方針2017~人材への投資を通じた生産性向上~」(骨太方針)の「地域医療構想の実現、医療計画・介護保険事業計画の整合的な策定等」の項では、「病床の役割分担を進めるためデータを国から提供し、個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針の速やかな策定に向けて、2年間程度で集中的な検討を促進する」と明記された。
■病院は新たな医療提供体制への対応が急務
わが国では超高齢社会を乗り切るために、そのことに対応できる医療提供体制の構築が不可欠になっている。硬直化している介護老人保健施設に代わって、2018年4月から看取り機能や療養病床機能を有した介護医療院を稼働させるのもこのためである。東京都など都市部において急増することが予想される独居老人患者や老老介護患者を介護難民にしないためにも、廃止される医療・介護療養病床に代わる施設の必要性が急務となっている。いくら在宅医療の推進といっても基盤整備が十分に進展していない状況下では、新たな施設の存在が不可欠だ。
同様に医療機関にとっても、人口減少が進む超高齢社会において、当該地域患者数の減少を想定するならば従来のやり方では病院経営を持続することが困難になることが予想される。そのため新たな医療提供体制や地域医療のあり方の下で、そのような病院が経営を持続することができる選択肢を用意する必要が生じている。一方で病院グループは、経営持続のためにさまざまな投資や対応を行っているおり、老朽化し存続のための手段を何ら講じられない病院とでは、その差が開く一方である。大勢が判明した後では、そのような病院の再生が困難になりかねないことが懸念される。
「民間中小病院の経営状況に関する法人アンケート調査を実施(2017年)」2018年1月25日発表