アナリストeyes
注目を集める美容医療市場の実態と将来展望
主席研究員 浅井 潤司
近年、美容医療(人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、または歯牙の漂白をするための医学的処置、手術及びその他の治療を行う医療のこと)が注目を集めている。
美容医療は二重まぶた切開法、鼻整形、フェイスリフト、脂肪吸引、豊胸などメスを使用する外科的施術とヒアルロン酸注入、脱毛、ボトックス注入、フォトトリートメントなどのメスを使用しない非外科的施術の2つに大別できる。
美容医療の市場規模推移
美容医療の市場規模は、2011年以降順調に成長しており、2017年は2014年比114.8%の325,200百万円となった。
施術別に見ると、外科施術は一貫して減少傾向にある一方で、メスを使わない非外科的施術が増加傾向にあり、2017年で見ると非外科的施術の比率が過半数を超え、非外科的施術が主流となっている。
市場トレンド
市場トレンドとして大きく3つがあげられる。
1つ目は「脱毛特化型医療施設の急成長」である。脱毛特化型医療施設は、大都市圏にドミナント戦略で一気に開院、あわせて積極的なマスメディア展開を仕掛けることによって患者を獲得して急成長している。代表的な医療施設としてはリゼクリニック、アリシアクリニック、レジーナクリニックなどがある。
2つ目は「人材確保に関する問題の顕在化」がある。多くの美容医療施設では、確かな技術を持った人材の確保が課題となっている。急拡大した需要に対応できるだけの人材が医学部や看護師養成施設から供給されないこと、需要が急拡大しているので人材を十分に訓練する時間がないことなどの理由から、美容医療施設では人材確保が困難になっている。
3つ目は「マーケティング面におけるリアルからネットへのシフト」である。医療施設におけるマーケティングはホームページ、ブログ、SNS、フリーペーパー、タウン誌、タウンページ、鉄道・道路広告など様々であるが、近年ではSNS、美容サービス検索サイト、インターネット検索連動型広告などインターネットを活用したマーケティングに注力する医療施設が増加している。
市場展望
市場は今後も拡大基調で推移すると見られるが、今後の市場展望として大きく3つがあげられる。
1つ目は「外科的施術から非外科的施術へのより一層のシフト」である。施術内容としては今後も外科的施術の割合は減っていく一方で、非外科的施術の比率が高まっていくと見られ、特にヒアルロン酸注入、脱毛、ボトックス注入などが有望であると思われる。
2つ目は「美容皮膚科を標榜する医療施設の増加」である。施術内容としては外科的施術の割合は減っていく一方で、非外科的施術比率が高まっていくと見られており、従来のような形成外科の派生としての外科的施術の需要は減少傾向にある。これらの状況をビジネスチャンスと捉え、外科的施術の能力を持たない一般の皮膚科、内科などの医療施設が美容皮膚科を掲げ、非外科的施術を強化する動きが加速すると見られる。
3つ目は「美容内科領域を拡大する医療施設の増加」である。美容内科は、外科的治療や皮膚科的治療とは異なり、予防医学的な考え方で身体の内側から健康・若さ・美しさを追求する新しい医療分野として、主に点滴や注射を使用した施術であるので手軽に受けられる。美容内科は他の治療と組み合わせることで内面と外面の双方から相乗効果を発揮できるメリットがあることから、今後、内外美容の観点から、点滴治療、ホルモン補充療法、血液バイタル療法、PRP療法、高濃度ビタミンC注射、レドックス療法、腸内フローラ移植療法など、美容内科領域を拡大する医療施設が増加すると見られる。
おわりに
今後も成長が予測される美容医療市場には、成長する市場を大きなビジネスチャンスと捉え、医薬品メーカー、化粧品メーカー、医療機器メーカーなどの様々な関連企業が新規に参入する可能性もあり、今後も注目して市場動向を継続的にウォッチしていく必要がある。