iPhone用LiBの高エネルギー密度化は進む
~正極の高密度化と負極余裕度の圧縮~
1.調査結果概要
東洋システム株式会社におけるLiBの解体・分析結果によると、iPhone6用LiB比で単位重量当たりのエネルギー密度を比較するとiPhone7用で105.2%、iPhone8用で107.4%と増加、単位体積当たりでも113.5%、115.7%と増加が確認された。Galaxy Note 7の発火事故後でもLiB高エネルギー密度化の傾向継続が確認された。
ほぼ同時期に発売されたiPhone8用LiBとGalaxy S8用LiBのエネルギー密度を比較すると単位重量当たりで273Wh/kg対269Wh/kg、単位体積当たりで703Wh/L対659Wh/LといずれもiPhone8用LiBの方が高い。後述の通りとなるが、iPhone8用LiBの高エネルギー密度化は高充電電圧化ではなく、正極の高密度化とLiB中の正極と負極の容量比であるA/C比の圧縮により達成されていることが分かった。
2.注目トピック
iPhone用LiBの高エネルギー密度化:正極の高密度化とA/C比圧縮
東洋システム株式会社におけるLiBの解体・分析の結果、iPhone6、iPhone7、iPhone8用LiB間で使用されている正極、負極、電解液、セパレータについて材料自体に違いは見られなかった。
一方で正極合材密度はiPhone7用LiBで3.89g・cm-3、iPhone8用LiBで3.96g・cm-3であり電極の高密度化が確認された。
LiBの正極容量と負極容量の比率であるA/C比を、それぞれの電極目付及びその寸法から計算すると、iPhone7用LiBで1.20、iPhone8用LiBで1.15となり、iPhone8用LiBでA/C比の圧縮が確認された。A/C比の圧縮は余分な負極材を削減することであり、その削減分だけLiBの高エネルギー密度化になる。
A/C比を安全に圧縮し、高エネルギー密度化を図るためには、目付バラツキがなく、均一な電極塗工(電極内、ロット間両方で目付が均一)が必要であり、塗工機精度によるところが大きい。A/C比は1.20でも低い値であり、A/C比1.15は注目すべき数値である。該当期間内に、高精度な塗工機の導入等、電極作製プロセスについて技術革新があったものと推測される。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】BCパターン
負極材 : 活物質内に空隙がある黒鉛
iPhone用LiBの安全性について
調査要綱
2.調査対象: iPhone用リチウムイオン二次電池
3.調査方法: 東洋システム株式会社にてリチウムイオン二次電池(LiB)の解体、材料の分析を実施し、株式会社矢野経済研究所にてまとめ・編集を行った。
<iPhone用リチウムイオン二次電池の解体調査とは>
本iPhone用リチウムイオン二次電池(LiB)の解体調査とは、一般正規ルートで流通しているiPhone用LiBを購入の上、東洋システム株式会社において解体、分析し、同電池の技術動向変化(エネルギー密度の推移、定格容量・使用部材・設計思想の変化等)を調査したものである。なお、本調査対象LiBは、iPhone 6(2014年9月発売)用LiB、iPhone 7(2016年9月発売)用LiB、iPhone 8(2017年9月発売)用LiBとする。
<市場に含まれる商品・サービス>
iPhone用リチウムイオン二次電池
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