プレスリリース
No.2009
2018/11/08
iPhone用リチウムイオン二次電池の解体調査を実施(2018年)

iPhone用LiBの高エネルギー密度化は進む
~正極の高密度化と負極余裕度の圧縮~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、東洋システム株式会社(代表取締役社長:庄司秀樹)と共同で iPhone用リチウムイオン二次電池(LiB)を解体、分析し、同電池の技術動向変化(エネルギー密度の推移、定格容量・使用部材・設計思想の変化等) を明らかにした。

iPhone用リチウムイオン二次電池(LiB) エネルギー密度の推移
iPhone用リチウムイオン二次電池(LiB) エネルギー密度の推移

1.調査結果概要

東洋システム株式会社におけるLiBの解体・分析結果によると、iPhone6用LiB比で単位重量当たりのエネルギー密度を比較するとiPhone7用で105.2%、iPhone8用で107.4%と増加、単位体積当たりでも113.5%、115.7%と増加が確認された。Galaxy Note 7の発火事故後でもLiB高エネルギー密度化の傾向継続が確認された。

ほぼ同時期に発売されたiPhone8用LiBとGalaxy S8用LiBのエネルギー密度を比較すると単位重量当たりで273Wh/kg対269Wh/kg、単位体積当たりで703Wh/L対659Wh/LといずれもiPhone8用LiBの方が高い。後述の通りとなるが、iPhone8用LiBの高エネルギー密度化は高充電電圧化ではなく、正極の高密度化とLiB中の正極と負極の容量比であるA/C比の圧縮により達成されていることが分かった。

2.注目トピック

iPhone用LiBの高エネルギー密度化:正極の高密度化とA/C比圧縮

東洋システム株式会社におけるLiBの解体・分析の結果、iPhone6、iPhone7、iPhone8用LiB間で使用されている正極、負極、電解液、セパレータについて材料自体に違いは見られなかった。

一方で正極合材密度はiPhone7用LiBで3.89g・cm-3、iPhone8用LiBで3.96g・cm-3であり電極の高密度化が確認された。

LiBの正極容量と負極容量の比率であるA/C比を、それぞれの電極目付及びその寸法から計算すると、iPhone7用LiBで1.20、iPhone8用LiBで1.15となり、iPhone8用LiBでA/C比の圧縮が確認された。A/C比の圧縮は余分な負極材を削減することであり、その削減分だけLiBの高エネルギー密度化になる。

A/C比を安全に圧縮し、高エネルギー密度化を図るためには、目付バラツキがなく、均一な電極塗工(電極内、ロット間両方で目付が均一)が必要であり、塗工機精度によるところが大きい。A/C比は1.20でも低い値であり、A/C比1.15は注目すべき数値である。該当期間内に、高精度な塗工機の導入等、電極作製プロセスについて技術革新があったものと推測される。

オリジナル情報が掲載された ショートレポート を1,000円でご利用いただけます!

【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】
BCパターン
  • 注目トピックの追加情報 ※1
  • 調査結果詳細の追加情報
  •  正極材 : バイモルダルのLCO材
     負極材 : 活物質内に空隙がある黒鉛
     iPhone用LiBの安全性について
    以下の 利用方法を確認する ボタン↓から詳細をご確認ください

    調査要綱

    1.調査期間: 2018年2月~9月
    2.調査対象: iPhone用リチウムイオン二次電池
    3.調査方法: 東洋システム株式会社にてリチウムイオン二次電池(LiB)の解体、材料の分析を実施し、株式会社矢野経済研究所にてまとめ・編集を行った。

    <iPhone用リチウムイオン二次電池の解体調査とは>

    本iPhone用リチウムイオン二次電池(LiB)の解体調査とは、一般正規ルートで流通しているiPhone用LiBを購入の上、東洋システム株式会社において解体、分析し、同電池の技術動向変化(エネルギー密度の推移、定格容量・使用部材・設計思想の変化等)を調査したものである。なお、本調査対象LiBは、iPhone 6(2014年9月発売)用LiB、iPhone 7(2016年9月発売)用LiB、iPhone 8(2017年9月発売)用LiBとする。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    iPhone用リチウムイオン二次電池

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2018年9月27日
    体裁
    A4判 173頁
    価格(税込)
    198,000円 (本体価格 180,000円)

    お問い合わせ先

    部署
    マーケティング本部 広報チーム
    住所
    〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
    電話番号
    03-5371-6912
    メールアドレス
    press@yano.co.jp
    ©2018 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
      本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
      報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
      利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。