パワー半導体世界市場は2021年から一部の需要分野で回復基調となり、2025年には243億5,100万ドルまで拡大すると予測
~新型コロナウイルスの影響により、2020年の市場規模は前年比9.0%減となる169億4,500万ドルに縮小見込~
1.市場概況
2019年におけるパワー半導体の世界市場規模(メーカ出荷金額ベース)は、前年比0.3%減となる186億1,600万ドルである。2017年は177億4,500万ドル(同12.2%増)、2018年が186億6,500万ドル(同5.2%増)となり、堅調に市場は拡大していたが、2019年下期より産業機器向け、自動車向けの需要が低迷したことで2019年の世界市場はマイナス成長となった。
2020年のパワー半導体世界市場は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、前年比9.0%減となる169億4,500万ドルに縮小する見込みである。今回のコロナ禍で2020年の市場は16億7,100万ドルの減額と、リーマンショック時の減少額の約半分ほどにとどまる見通しである。
パワー半導体の需要分野は「情報通信」「民生」「産業」「自動車」の4分野に大きく分けられるが、最も大きく落ち込むのが自動車向けパワー半導体である。2018年~2019年にかけて世界の新車販売台数は前年割れとなり、さらに新型コロナウイルスの影響で自動車メーカが3~4月に工場の稼働を停止しているために、2020年の自動車向けパワー半導体世界市場(メーカ出荷金額ベース)は前年比18.4%減の35億2,600万ドルまで落ち込む見込みである。
一方、「情報通信」「民生」分野向けパワー半導体の減少幅は「産業」「自動車」分野よりは小さく、データセンターや5G(第5世代移動通信システム)基地局向けの設備投資も旺盛であることから、パワー半導体の需要についても堅調に推移する見通しである。
2.注目トピック
2019年のSiCパワー半導体世界市場はxEV向け需要が伸長して5億4,600万ドル
2019年のSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体の世界市場規模(メーカ出荷金額ベース)は前年比23.5%増の5億4,600万ドルである。
SiCパワー半導体は、データセンター向けサーバーや太陽光発電用PCS(パワーコンディショナー)、産業機器用電源、EV用充電ステーションやオンボードチャージャー(以下、OBC)等で使われており、SiC-SBDだけでなくSiC-MOSFETの採用も進んでいる。但し、2019年下期より「情報通信」「産業」分野は調整局面にあるために、SiCパワー半導体の増加率も小幅にとどまった。
一方で2018年から大きく伸長しているのが、自動車向けSiCパワー半導体である。これまではコスト面からEV用OBCに採用が限定されていたが、一部のEVでモータ駆動用インバータでの採用が始まり、2019年の市場規模は前年比2倍以上に伸長している。今後、高容量バッテリー、800V給電システムを採用するEV高級車へのインバータでの搭載が見込まれるために、2025年のSiCパワー半導体の世界市場規模はEV用インバータ向けが市場をけん引し、18億2,000万ドルに達すると予測する。
3.将来展望
新型コロナウイルスの影響を受けて、2020年は成長が鈍化するパワー半導体世界市場であるが、2021年は一部の需要分野から回復基調に転じ、2022年には2019年の市場規模を超える見通しである。2019年から2025年までの年平均成長率(CAGR)は4.6%となり、2025年のパワー半導体世界市場規模(メーカ出荷金額ベース)は243億5,100万ドルに成長を予測する。
特に「情報通信」分野は、データセンター、5G基地局への設備投資が活発化するために、2021年から増加基調になる見込みである。5G基地局はMOSFETやダイオードの搭載金額が4G基地局搭載金額の数倍であり、5Gの普及拡大がパワー半導体市場を押し上げると考える。「民生」「産業」分野についても2022年に市場は回復し、2023年からは成長推移する見通しである。一方で、最も回復時期が遅れるのが「自動車」分野である。日本や中国における新車販売台数の回復は早いが、その他地域での成長が低迷するために、2023年頃までパワー半導体の需要は小幅な増加にとどまると予測する。
オリジナル情報が掲載された ショートレポート を1,000円でご利用いただけます!
【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
調査要綱
2.調査対象: パワー半導体メーカ、ウエハーメーカ、システムメーカ
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用
<パワー半導体とは>
パワー半導体とは、主にインバータ / コンバータ回路で使われており、電力のスイッチングや変換、モータ制御等で必要となる半導体素子である。
本調査では、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)/IPD(Intelligent Power Device)やダイオード、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーモジュール、バイポーラトランジスタ、SiC(シリコンカーバイド)を使ったパワー半導体等を対象とした。
<市場に含まれる商品・サービス>
MOSFET、IPD、ダイオード、IGBT、パワーモジュール、バイポーラトランジスタ、SiC / GaNパワー半導体
出典資料について
お問い合わせ先
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。