2019年度の来店型保険ショップ市場は前年度比13.9%減の1,819億円の見込
~コロナ禍で店舗の一時閉鎖や営業時間短縮、外出自粛による来店顧客数減少などの影響も、一定の対面ニーズが潜在的にある中、11%の企業がWeb相談を導入~
1.市場概況
2016年の改正保険業法施行以来、乗合保険代理店である来店型保険ショップ業界は大きな転換点を迎え、専業の大手来店型保険ショップ経営企業の多くで生命保険会社との協業や、地元有力地方銀行や有力証券会社との業務・資本提携が進んだ。2017年度は、標準利率の引下げを背景とした一部保険商品の販売停止や保険料の値上げなどの逆風にさらされる一面もあったが、資産形成タイプや生前給付タイプの販売拡大などにより、2017年度の来店型保険ショップの市場規模(新契約年換算保険料)は1,994億円と拡大し、また、新規契約件数は196万件となった。2018年度も依然、潜在余地は高く市場規模の増加が続いたものの、若干ながら来店顧客数の減少による店舗数減少が影響し、2018年度の市場規模を前年度比5.9%増の2,112億円、新規契約件数は208万件と推計した。
2019年度は店舗数減少などからの縮小に加え、2020年初頭からの新型コロナウイルス感染拡大で店舗の一時閉鎖、営業時間短縮、外出自粛による来店顧客数減少などの影響が起きている。一方で、Web相談の導入が奏功した企業もあるものの、全般的には顧客の戻りは厳しく、2019年度の来店型保険ショップの市場規模(新契約年換算保険料)は前年度比13.9%減の1,819億円と大幅な減少を見込む。
2.注目トピック
コロナ禍で、全体の11%の来店型保険ショップ経営企業がWeb相談を導入
来店型保険ショップにおいても、新型コロナウイルス感染拡大で店舗の一時閉鎖や営業時間短縮、外出自粛による来店顧客数減少などの影響が起きており、2020年4月~6月は来店顧客数がゼロという店舗や、半減したという店舗もあった。そんな中で始まった新たな試みが、オンラインによる「Web相談」である。
本調査において来店型保険ショップ261社を対象に2020年8月に調査を行ったところ、11.1%(29社)でWeb相談を実施していた。Web相談は激減した新規来店顧客を補えるポテンシャルがあったという声があり、一定の対面ニーズが潜在的にある中で、相談チャネルの多様化を図ることが出来たという評価であった。
なお、Web相談を導入している企業29社の展開店舗数を調査すると、地域を限定した地場小規模経営企業から全国展開する大規模な来店型保険ショップ経営企業まで、店舗の規模に関係なくWeb相談を採り入れているものの、10店舗以上展開する大規模企業の導入が多い。
3.将来展望
2020年度は、新型コロナウイルスの影響により、来店型保険ショップの業界も休店や時間短縮営業を余儀なくされ、顧客との対面機会を減らしつつも保険加入・見直しを促進できるWeb相談の導入など、新たな集客・接点強化戦略を模索している。
折しも2020年春から生命保険協会では乗合代理店評価を共通化し、販売手数料の業界共通基準を導入して「販売の適正化」を図るために動き出した。今後、手数料体系・基準の見直しによる、いわゆる「L字型」の手数料収入の平準化が図られるとした場合、店舗開設の初期投資・先行投資が難しくなる懸念があり、業界全体に再び出店スピードにブレーキがかかる恐れがある。また、2020年6月には、「金融商品の販売等に関する法律」の改正法案が成立し、「金融サービス仲介業」を創設することになり、インターネットの普及やペーパーレス化、キャッシュレス化の進展など、消費者が求める金融サービスも急速に大きく変わろうとしている。金融デジタライゼーションを実行した来店型保険ショップ経営企業では、新たな顧客ニーズに行動形態に合わせた店舗の出店地、規模、管理の仕方、人ぐりも変わるかもしれない。同業者間での経営統合、生命保険会社の傘下に入る来店型保険ショップは後を絶たず、業界再編は今なお続いており、今後、経営基盤の更なる増強やガバナンス体制の強化が求められていくと考える。
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調査要綱
2.調査対象: 来店型保険ショップ経営の乗合代理店、来店型保険ショップ向けを展開、あるいは商品開発をしている生命保険会社等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン取材含)、ならびに文献調査併用
<来店型保険ショップとは>
本調査における来店型保険ショップとは、複数の保険会社と提携した乗合代理店とし、市場規模は同店舗で販売される保険商品について、各事業者における会計(決算)年度の新契約年換算保険料ベースにて算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
個人向け生命保険及び損害保険、法人向け生命保険及び損害保険
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