2020年の産業ロボット向けセンサー世界市場規模を880億円と推計
~2022年以降は産業用ロボット世界市場の回復が進み、産業用ロボット向けセンサー世界市場も連動して拡大する見通し~
1.市場概況
近年、産業用ロボット市場は大きく変動しており、注目度が高い。産業用ロボットの世界市場は、「Industry4.0」を起点とする第4次産業革命、即ちスマート工場化や5G(第5世代移動体通信システム)スマートフォンや5Gデバイス用生産設備の導入、EVやADASの普及に備えた自動車産業の新たな自動化などの設備投資の影響で2010年代中頃から高成長期に入っている。ところが、近年は米中貿易摩擦と新型コロナウイルス感染拡大という異常事態が発生し、その影響を受けている。
一方、産業用ロボットメーカー各社が注力度を強めている協働ロボット(人間と協働作業が可能な産業ロボット)にも新たな動きが見られ、市場拡大が一段と加速される可能性が強まった。協働ロボットは数年前から通常の産業用ロボットを上回る成長力を見せてきたが、コロナ禍で出荷台数が一時減少したものの、その後、逆にコロナ禍の影響で協働ロボットによる自動化ニーズがさらに強まるという状況がもたらされる結果となった。
本調査では、ロボット本体の内側で使用される内界センサー、本体外部の周辺で使用される外界センサーなどを対象としているが、それぞれさまざまなセンサーが使われている。産業用ロボットへのセンサー搭載数はロボットの種類で違うが、通常はロボット1台当たり20~25個程度使われることが多い。
2020年の産業用ロボット向けセンサー世界市場を、メーカー出荷金額ベースで880億円と推計した。内訳を種類別にみると、内界センサー市場が全体の約53.4%を占め、外界センサー市場は約46.6%となった。
2.注目トピック
エンドエフェクター(グリッパー)の動向
エンドエフェクターとは、産業用ロボットや協働ロボットがハンドリング作業を行うときに、ロボットアーム本体の手先に装着する装置である。エンドエフェクターは「ロボットハンド」とも呼ばれ、さまざまな種類がある。
その内、グリッパーは対象物を把持する(grip)ための装置で、2~3本かそれ以上の指(爪)を備え、それを開閉して把持・解放動作を行う。ピック&プレース作業のための基本装置で、2本の指を平行に配したタイプが多用され、精密作業にも使われる。
駆動方法は①空気圧式、②電動式、③油圧式などがあるが、現状では空気圧式が非常に多く、各種グリッパー全体の70%以上を占める。空気圧グリッパーはサイズが多様でパワーも大きい上、低コストで制御しやすいのが利点だが、微調整が難しい上、クリーンルームを使う製造現場では空気汚染のリスクがあるため使用できないという弱点もある。
3.将来展望
産業用ロボット向けセンサー世界市場は基本的には産業用ロボットの出荷数と連動することになる。協働ロボットを含む産業用ロボット世界市場は米中貿易摩擦やコロナ禍などの不測の事態の影響を強く受けているが、足元では巨大な中国市場に不透明要素が残るものの回復基調に戻ると思われる。
産業用ロボット世界市場は今後再拡大する方向にあるため、産業用ロボット向けセンサー世界市場も連動して拡大する見通しだが、それに加えて1台当たりセンサー搭載数が通常の産業用ロボットより30~40%以上多い協働ロボットがさらに伸長するため、産業用ロボット向けセンサー世界市場の牽引役になることが確実な情勢である。そうしたことから、同市場は2020年から2025年までの年平均成長率(CAGR)が11.6%となり、2025年には1,520億円に達するものと予測する。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
産業用ロボット向け外界センサー市場
エンドエフェクター[吸着ハンド(サクションカップ)]の動向
エンドエフェクター(溶接トーチとそのシステム)の動向
エンドエフェクター(ツールチェンジャー)の動向
エンドエフェクターの外付用センサー
調査要綱
2.調査対象: 産業用ロボット向けセンサー関連の技術研究機関、生産販売または取扱企業等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<産業用ロボット向けセンサーとは>
本調査における産業用ロボット向けセンサーとは、協働ロボットを含む産業用ロボット向けのセンサーを指す。
<市場に含まれる商品・サービス>
産業用ロボット向け内界センサー[回転変位センサー(ロータリーエンコーダ、他)、慣性センサー(加速度センサー、他)、力/トルクセンサー、電流/電圧センサー他]、 産業用ロボット向け外界センサー[ビジョンセンサー、光学系センサー(レーザー式、赤外線式、光電式)、力/力覚/触覚センサー、近接/距離センサー他]
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