2020年度のデジタル印刷市場はコロナ禍でもほぼ横ばいで規模をキープ、2021年度は前年度比約4%増の見込
~BPOが市場を下支え、フォトブック、オフィスコンビニも2021年度は回復基調へ~
1.市場概況
2020年度の国内デジタル印刷市場は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外出自粛の影響により、フォトブック市場やオフィスコンビニ市場が大幅減少、それらを除くPOD(プリントオンデマンド)市場も販促需要が減少したことで市場規模が減少している。一方、コロナ禍で実施された様々な経済対策やワクチン接種券などに関するアウトソーシング需要を取り込んだDPS(データプリントサービス)市場が拡大、その結果、2020年度のデジタル印刷市場(事業者売上高ベース)は3,097億3,100万円(前年度比0.3%減)とほぼ横ばいで推移し、コロナ禍でも市場規模を維持することが出来ている。
2021年度は経済活動が再開される中で、POD市場が回復基調となっており、またDPS市場も拡大が見込まれるため、2021年度のデジタル印刷市場は3,214億6,000万円(前年度比3.8%増)と増加する見込みとなっている。
2.注目トピック
出版印刷分野は新たな提案により一部の企業で実績拡大、企業間で格差が広がる
出版印刷におけるデジタル印刷市場では、重版時において少部数生産(=ショートラン)による在庫管理コストの削減を実現する提案と、重版未定タイトルや絶版本、電子書籍との同時刊行本(新刊)を中心に注文に応じて1部から印刷、発送するBOD(ブックオンデマンド)の提案の2つの方向性で、デジタル印刷の活用が推進されている。
出版業界では、大手出版社を中心にデジタル印刷の活用に取り組む出版社が増えており、また、ネット書店におけるストア型PODも確立されつつある。その中で、印刷企業も提案を推進しているが、いくつかの課題が障壁となり、長年、市場は黎明期を脱していない。
その障壁の1つである印刷コストについては、コスト引き下げに進展が見られない現状の中で、印刷企業ではオフセット印刷による従来のビジネスモデルとの比較シミュレーションを行うことで、在庫管理コストを含めたトータルコストの削減という考え方を提示してきたが、在庫データを開示してもらえないため、その効果を担保にするのが難しく、これまで思うように提案が進んでいなかった。
しかしここ1~2年、一部の印刷企業では取次・書店への過剰発注を防ぎ、返品率を下げることを目的とした出版社とのEDI(Electronic Data Interchange)連携を進める中で、在庫データを把握できるようになってきており、コストダウン効果の提示が以前より容易となってきている。そのため、こうした一部の印刷企業においてショートランの実績が拡大しており、提案が進まない印刷企業との間で実績の差が広がり始めている。
3.将来展望
本格的な経済回復が見込まれる2022年度は、POD市場が再び回復基調で推移し、またDPS市場もワクチン接種券や消費喚起施策などのアウトソーシング需要を取り込み、更に拡大する見込みであることから、デジタル印刷市場は再び増加すると予測する。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
2-2.フォトブック
2-3.軟包装
調査要綱
2.調査対象: 印刷企業、印刷関連サービス企業、及びその他関連企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング調査、ならびに郵送アンケート調査併用
<デジタル印刷市場とは>
本調査におけるデジタル印刷市場とは、商業用デジタル印刷機で印刷された印刷物、及び付帯サービスで構成された市場を指し、印刷業を主な事業として展開している事業者を対象とする。但し、有版の印刷機による印刷物、及び付帯サービスは含まない。
※DPS市場、POD市場は、デジタル印刷市場の内数。
<DPS市場、POD市場とは>
●DPS(データプリントサービス)市場
DPSとは、高セキュアな環境下で顧客から預かった各種データを加工し、請求書や明細書などの通知物に関する印刷・印字、加工、封入封緘、発送までのプロセスを一貫して請け負うサービスを指す。本調査のDPS市場は、DPS事業者が提供しているBPOサービスも含む。
●POD(プリントオンデマンド)市場
PODとは、必要な時に必要な部数を印刷する小ロットデジタル印刷サービス(=オンデマンド印刷、ショートラン印刷)を指す。本調査ではDPS/BPO以外の一般印刷分野(出版印刷、商業印刷など)におけるデジタル印刷サービス市場の総称としている。
<市場に含まれる商品・サービス>
デジタル印刷サービス[DPS、BPO、出版印刷、商業印刷、ビジネスフォーム印刷、事務用印刷(名刺など)、軟包装印刷、紙器印刷]
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