2022年度の外食市場は28兆8,940億円とプラス成長を予測
~営業制限が続くも出店モデルの再構築や業態転換により市場は活性化~
1.市場概況
2021年度の国内外食市場規模(持ち帰り弁当・惣菜専門店等の中食業態含む)は、末端売上高ベースで前年度比5.8%増の27兆412億円となった。前年度からの新型コロナウイルス感染拡大による店舗休業や営業時間短縮、外出制限などが緩和されたことで大きく回復した。
業態別に市場をみると、居酒屋・パブ・ビアレストランは回復が遅れているが、「回転すし」業態やうどん・そば店、カフェ、焼肉店などが、テイクアウトやデリバリー営業の好調に加え、店内飲食も増えたことでプラスに推移した。洋風ファストフードおよび和風ファストフードなどは企業によって明暗はあったものの、コロナ禍でも業容は底堅かったケースもあり、ダメージからの回復も早く緩やかに回復に向かった。ファミリーレストランは大量閉店や業態転換など大きな戦略転換の影響もあり、テイクアウトやデリバリー営業の立ち上がりが遅かったものの、徐々に回復に向かった。
2.注目トピック
健康を意識した商品開発が活発化。フードバリアフリーにも対応が進む
健康を意識するシニア層やダイエットに関心のある女性などに訴求するため、糖質オフ、カロリーオフ、低アレルゲン、合成添加物未使用など、健康に配慮したメニューを継続的に投入し「健康志向」を強く打ち出す外食企業が増えている。
例えば、低アレルゲン食材(卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生などを使わない)を使用した料理の提供や、血糖値の上昇を抑制するサラシノール配合商品、血圧低下をサポートするGABA配合商品などの導入が進んでいる。
この健康志向の高まりは、野菜や魚、肉などの原材料を生産・加工・出荷する過程にも反映されている。特に野菜については、国産にこだわると同時に、提携農家が育てた素材の生産履歴を把握できるトレーサビリティ・システム、農場を運営する関連会社が旬の有機野菜を生産・出荷する体制などを導入し、食の安全管理を徹底している。
また、ビーガンやベジタリアン、ムスリムなどに対応したメニューを開発するなどフードバリアフリー(食事に制限のある人々も楽しめる食の多様化)への対応に取り組むなど、商品開発の多様化が進んでいる。
3.将来展望
2022年度の外食市場規模は前年度比6.9%増の28兆8,940億円になると予測する。参入企業各社ともコロナ禍を背景とした施策を進めており、テイクアウトおよびデリバリー需要を取り込む洋風ファストフードや強化する和風ファストフードに加え、ファミリー層が低価格で気軽に利用できる回転すし業態など店内飲食も徐々に回復していくものとみられ、また、他業態では大幅減からの反動増も期待出来る見込みである。外食産業各社は抜本的な見直しを進め、売上高が減少しても収益を確保出来るようなビジネスモデルの構築に取り組んでいる。
今後はテイクアウト専門店やゴーストレストランの増加など、テイクアウトおよびデリバリーを新たな事業の柱として育成する動きがさらに活発化することに加え、M&Aなどを活用した業態転換など外食産業における企業の合従連衡が進むと想定する。人口減少やアルコール離れなどもあり、店舗数を増やして売上高を伸ばすという成長期のビジネスモデルも限界に近付いており、滞在時の快適性を高める店舗改修や、話題を喚起できる新商品・期間限定商品の販売、利便性を高める新サービスの導入など、既存店舗の売上高増をメインに取り組むことで、規模の拡大より質重視の戦略が採用されていくものと考えられる。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
2-2.和風ファストフード(牛丼店、他)
2-3.ファミリーレストラン
2-4.居酒屋、パブ、ビアレストラン
調査要綱
2.調査対象: 外食関連企業(主要チェーン、有力企業)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング調査、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用
<外食市場とは>
本調査における外食市場とは、ファストフードやカフェ、ファミレス、すし、中華・ラーメン、うどん・そば、焼肉、居酒屋、ディナーレストラン、料亭等の飲食店を対象に市場規模を算出した。飲食・テイクアウト主体で専門店舗を展開する業態のみに限っており、学校や病院、事業所などの給食、ホテルや旅館などの宿泊施設に付随する飲食などは含めていない。
また、ナイト市場(夜間をメインとして営業する業態)のうち、居酒屋・パブ・ビアレストランや料亭など、フード比率がある程度見込める業態は含むが、スナック・キャバレー・ナイトクラブなど、大半がアルコールの業態のほか、風俗営業などの業態は除外している。百貨店やスーパーのインストアでの販売分も併せ、持ち帰り弁当や惣菜専門店等の中食業態を含む。但し、食品スーパーやGMS、コンビニエンスストア等の店頭でセルフ販売している弁当や総菜は対象外としている。
<市場に含まれる商品・サービス>
洋風・和風ファストフード、ファミリーレストラン、すし・回転すし・宅配すし、居酒屋・パブ・ビアレストラン、ディナーレストラン、中華・ラーメン店、うどん・そば店、カフェ、焼肉店、その他専門業態・食堂、持ち帰り弁当・惣菜専門店など
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