2021年の電子契約サービス市場規模は前年比38.6%増の140億円
~200億円は目の前 2022年はDXの一環としての導入が増加~
1.市場概況
2021年の国内電子契約サービス市場規模は、事業者売上高ベースで前年比38.6%増の140億円と推計した。電子契約サービスに対する認知度の向上、テレワークへの対応の他、契約手続きの可視化、コンプライアンスの強化などから、市場は順調に成長している。
2.注目トピック
DXの一環としての導入が増加
新型コロナウイルス感染症の流行によるテレワークの拡大を契機に急速に成長した電子契約サービス市場は、2022年の今も順調に成長を続けている。以前までは、電子契約サービスは、コスト削減や業務の効率化を目的に導入するケースが多かったが、コロナ禍において発生した、“ハンコを押すために必要な出社”の負担を低減するため、導入が急拡大した。
新型コロナウイルス感染症の発生から2年が経過し、電子契約サービスの検討/導入目的は再び変わろうとしており、最近は、デジタル化の推進、DXの実現が増加基調にある。
もっとも、コロナ禍以前から、デジタル化、DX実現を目的に電子契約サービスの検討/導入をしていた企業もあり、ベンダ側は、導入/検討理由が新型コロナウイルス感染症流行以前に戻ってきた、という印象を持っているとみられる。電子契約サービスの導入は、効果を可視化しやすいため、取組みやすいDXのひとつと言える。
3.将来展望
新型コロナウイルス感染症の流行によるテレワークの拡大、ハンコを押すために必要な出社機会の低減は、本市場にとって非常に大きなインパクトを持ち、2020年の国内電子契約サービス市場規模は、事業者売上高ベースで前年比48.5%増であった。他方で、この2020年、2021年に導入/検討に至らなかった企業では、今しばらく導入を見合わせると推測する。
2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法への対応、2023年10月から始まるインボイス制度への対応、2018年に経済産業省から発表された『DXレポート』が言う ”2025年の崖*” への対応など、直近2~3年は企業が対応しなければならないことが多く、電子契約サービス導入の優先度は下がり、市場成長のスピードはやや鈍化すると予測する。
将来的にみても、紙の契約書がゼロになることはないと考えるが、電子化可能な範囲は広がっていくとみられ、企業には、否が応でも電子契約サービスを導入/利用しなければならない日が訪れると予測する。
2025年の国内電子契約サービス市場規模は、事業者売上高ベースで前年比25.4%増の395億円に達する見通しだが、現状、電子契約サービス未導入の企業は多く、2026年以降、改めて市場が大きく成長する機会があると期待される。
※2025年の崖...多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変するDXの必要性について理解しているが、既存システムが事業部門ごとに構築され、全社横断的なデータが活用できなかったり、過剰なカスタマイズがなされていたりすることなどで、複雑化・ブラックボックス化していること、また経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっていることが示され、この課題を解決できなければ、DXを実現できないだけでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)があることが指摘されている。
参考文献:「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開(サマリー)」(経済産業省)(平成30年9月7日)
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調査要綱
2.調査対象: 国内電子契約サービス、契約書管理サービス関連事業者等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話、e-mailによるヒアリング調査併用
<電子契約サービス市場とは>
本調査における電子契約サービス市場とは、Web上で電子ファイルに押印・署名するなどして契約を締結できる製品/サービスを指す。製品/サービスによっては、契約書以外の書類にも対応し、契約書の作成、管理や契約業務の管理なども可能になる。市場規模は、電子契約サービスベンダの事業者売上高ベースで算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
契約作成・締結・管理に関する、電子契約製品/サービス
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