2021年度のCAD/CAM/CAEシステム市場規模は4,097億円 前年度比5.6%増
~輸出型産業の業績が回復、2022年度は前年度比6.1%増で成長が続く見通し~
1.市場概況
日本国内のCAD/CAM/CAEシステム市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、2021年度に4,097億1,200万円で前年度比5.6%増となった。
2020年度については、新型コロナウイルス感染症の影響を受け落ち込むことを予測していたものの、その落ち込み幅は、想定よりも小さかった。この要因としては、DXという言葉が流行語になったように、日本のユーザーは新型コロナウイルスという未曽有の危機に対して、ITの力で乗り切るという前向きの努力をしたことが大きい。民間企業設備の落ち込みから、CAD/CAM/CAEシステム市場で最大の市場である機械系は落ち込んだものの、電子・電機、建設業界が好調であったことから、EDA、土木・建築系CADが伸びたことも、落ち込み幅が少なかったことに影響している。
2.注目トピック
ものづくりのキーワード デジタルツイン
デジタルツイン※1という言葉を聞く機会が、急速に増えている。近年は、機械系CAD/CAM/CAEメーカーのみならず、EDA・土木・建築系のメーカーまでがデジタルツインを打ち出している。
デジタルツインが脚光を浴びるようになったのは、IoTの普及による。IoTにより、現実世界のデータを自動的にリアルタイムで取得し続けることが可能になり、その結果として、限定的ではあるものの、現実世界を仮想世界に再現することが可能になった。また、IoTからのデータを処理・分析する技術として、ビッグデータ解析があり、さらにはAIがある。つまり、IoT・ビッグデータ解析・AIが登場し、はじめてデジタルツインが実用的なものになった。
現在、デジタルツインは、ものづくりのキーワードになりつつある。いまどきのものづくりは、3次元CADの普及と、そのデータ管理としてのPLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)があって、成立している。しかし、それだけでは限界もある。
製品情報を互いに関連づけ、製品ライフサイクルをいつでも遡れる状態や、それにより、製品開発の要件定義をはじめ、システム設計、意思決定の意図や経緯、製品構成(設計、製造、サービス等)、その製品を構成するすべての情報へのアクセスを可能にすることまでが、現在のものづくりにおいて要求されている。これを実現するには、3次元CADまたはPLMだけでは難しく、実機と仮想を結びつけるデジタルツインが必要になる。また、それが可能になりつつあるからこそ、デジタルツインがキーワードとして注目されるようになった。
※1 高度な計測・観測により収集されたデータを基に、大規模データ処理と現象のモデリングを通じて、フィジカル空間内の現象や人工物をサイバー空間内で仮想的に再現・複製するシミュレーション技術
3.将来展望
2022年度のCAD/CAM/CAEシステム市場は、前年度比6.1%増の4,346億8,900万円になると見込む。
2022年度の先行きは不透明である。依然として猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症、エネルギー価格の高騰、半導体サプライチェーンの混乱は、世界経済に大きな影響を与えている。
しかしながら、米国市場の回復と円安により、日本国内の製造業は輸出型産業を中心に業績が回復しているため、日本国内のCAD/CAM/CAEシステムに対する投資は拡大していくと見通す。
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調査要綱
2.調査対象: 機械系CAD/CAM/CAEシステムメーカー、EDAシステムメーカー、土木・建築系CADシステムメーカー
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<CAD/CAM/CAEシステム市場とは>
本調査におけるCAD/CAM/CAEシステム市場とは、機械系CAD/CAM/CAE(2次元CAD、3次元CAD、金型設計用CAD/CAM、機械系CAE、PDM等)や、電子機器や半導体の設計作業を支援するソフトウェアであるEDA(Electronic Design Automation)、建築や設備、土木、プラントなどの設計を支援するソフトウェアである土木・建築系CADを対象として、システムメーカー出荷金額ベースで算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
機械系CAD/CAM/CAEシステム、EDAシステム、土木・建築系CADシステム
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