カーボンニュートラル燃料の市場規模は、2030年度の2兆9,950億円から、2050年度には14兆7,500億円に拡大すると予測
1.市場概況
2050年のカーボンニュートラルを実現するために、需要側で燃焼させてもCO2を排出しないとみなされるカーボンニュートラル燃料(脱炭素燃料)の研究開発、社会実装が進められている。カーボンニュートラル燃料が普及すれば、既存のエネルギーインフラや設備・機器を大きく変更することなく脱炭素を実現できる分野も多い。
日本においては、従来からの化石燃料調達の大部分は海外に依存してきていることから、多様なカーボンニュートラル燃料の普及は脱炭素の観点だけでなく、エネルギー安全保障の観点からも重要である。
カーボンニュートラル燃料は国内でも生産できるが、大量、安価な生産は海外が有利となるため、日本企業がカーボンニュートラル燃料技術を開発して、技術、設備、ノウハウ、知見等をもとに海外で事業展開することにより、ワールドワイドのカーボンニュートラル燃料市場における主導権を獲得できる。
2.注目トピック
発電事業者・電力会社の動向
2022年12月に政府が開催したGX実行会議では、これまでの再生可能エネルギーの主力電源化や、水素・(燃料)アンモニアの導入促進、CCS /CCUSの適用に加えて、原子力政策が大きく転換することになった。これによりエネルギー自給率を高め、安定した電力供給が行えるようになる。
ただし、再エネ電力(太陽光発電、風力発電等)の拡大のためには、調整力としての火力発電が必要であり、発電事業者・電力会社では、再エネ発電と原子力発電を推進するとともに、火力発電用の燃料として水素、(燃料)アンモニアを導入して、脱炭素化を図っていくことになる。また、調整力としては、蓄電池事業やVPP(Virtual Power Plant)事業も強化していく。
JERA、九州電力、中国電力、四国電力、東北電力の5社は、発電用燃料としての水素および(燃料)アンモニアの導入、原料調達から製造・流通までのサプライチェーンの早期構築・拡大に向けて協業を検討している。
3.将来展望
国内供給向け事業者の調達金額ベースでカーボンニュートラル燃料(脱炭素燃料)の市場規模を算出すると、2030年度が2兆9,950億円、2050年度には14兆7,500億円に拡大すると予測する。
2050年度の市場を7種類(分類)別にみると、最も調達規模が大きくなるのは水素であり、グリーン水素(1,000万t/年、2兆5,000億円)およびブルー水素(1,000万t/年、2兆5,000億円)の合計で2,000万t/年、5兆円の市場規模の予測となる。次いで、気体合成燃料であり、合成メタン(2,500万t/年、1兆8,000億円)およびグリーンLPG(500万t/年、1兆5,000億円)の合計で3,000万t/年、3兆3,000億円の市場規模の予測となる。
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(燃料)アンモニア
気体合成燃料
液体合成燃料
石油・LPG会社の動向
調査要綱
2.調査対象: 設備・システムメーカー、エンジニアリング会社、エネルギー事業者、鉄鋼会社、自動車会社、運輸会社、関係省庁、業界団体
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用
<カーボンニュートラル燃料(脱炭素燃料)市場とは>
生成工程および需要側での燃焼工程においても、CO2を排出しないとみなされる燃料をカーボンニュートラル燃料(脱炭素燃料)と称する。
本調査におけるカーボンニュートラル燃料市場は、以下の7種類(分類)の燃料を対象とし、国内供給向け事業者の調達金額ベースで算出した。
水素:再生可能エネルギーネ由来のグリーン水素、および化石燃料由来水素でCCUS(Carbon Capture, Usage and Storage)等でCO2を回収したブルー水素
(燃料)アンモニア:再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニア、およびメタン改質工程でCO2を回収したアンモニア
CO2/カーボンリサイクル:CO2を資源として位置付け、これを分離・回収し素材や燃料として再利用する。
気体合成燃料、液体合成燃料:グリーン水素等と工場等から排出されたCO2を合成した燃料で、合成メタン(メタネーション)や合成プロパン・ブタン(グリーンLPG)等の気体合成燃料と、石油代替の液体合成燃料がある。
リニューアブル燃料:廃食油等の非可食油を原料として製造される燃料で、リニューアブルディーゼル燃料やバイオジェット燃料がある。
バイオ燃料:発電・燃焼用の発酵メタン、木質バイオマスや、自動車用のバイオエタノール等
<市場に含まれる商品・サービス>
カーボンニュートラル燃料(脱炭素燃料)
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