アパレル産業の新たな動き
~デジタルファッション~
1.調査結果概要
近年、実店舗のアパレル製品だけでなく、仮想空間でのファッションは世界的に認知され、拡大している。メタバース(オンライン上での仮想空間)におけるデジタルファッション※1と呼ばれるファッションは新しい自己表現の手段として若年層を中心に広がっている。
メタバースが拡大しはじめている背景には新型コロナウイルス禍で対面でのコミュニケーションが制限され、仮想空間でのコミュニケーションが求められるようになったことが挙げられる。オンライン会議システムの利用が一気に拡大、普及し、在宅勤務やテレワークといった新しい生活習慣の浸透により、仮想空間でのコミュニケーションが身近なものになったことも一因である。
一方で現在、メタバースといえば、国内では主にオンラインゲームをさすことが多く、メタバース内におけるNFT(Non-Fungible Token)※2販売や、広告事業、イベント事業などで成功しているファッション企業はまだみられない。国内のファッション企業にとってはメタバースへの参入は黎明期、あるいは揺籃期であるものとみる。
※1. デジタルファッションとはメタバース上でアバターに着用させる仮想衣類等をさし、実際に着用するフィジカルファッションの対義語である。
※2. NFTとはNon-Fungible Tokenの略語で、ブロックチェーン上に記録された代替不可能なデジタル資産の所有権をさす。現在はゲームのキャラクターやスポーツ選手などのデジタルトレーディングカード、デジタルアートなど、コンテンツ分野での活用が目立つ。
2.注目トピック
国内のデジタルファッション参入における課題
デジタルファッションに参入するにはいくつかの課題がある。欧米の先行事例のようにデジタルとフィジカルに係る知的財産権などの法整備もあるが、国内のデジタルファッションは進捗状況からその前段階であるとみる。
デジタルファッションを制作する上での課題としては、デザイナーが3Dデジタルデータを駆使し、コンテンツ(デジタルファッション)の充実化を図ること、また制作したデジタルファッションをどのような顧客層にプロモーションし、収益化していくのかといったマーケティング戦略の構築にある。
また、現在はファッション企業による仮想空間におけるイベント型の出店が主流であり、実店舗への送客を図るプロモーションの一環に留まる。こうした非定期的なイベントへの出店では本格的なビジネス(商取引)により収益化を図ることは難しいものとみる。
加えてユーザー自体もまだ少ないことも課題である。国内ではオンラインゲームを中心に潜在的なユーザー層は存在するものとみるが、こうした層を開拓するためにはハードウェアの進化やVR(Virtual Reality)機器の低価格化などの普及に向けての取り組みなど、ファッション企業や業界を超えて、メタバースのプラットフォーマー、ハードウェアサプライヤー、コンテンツを表現する技術やクリエイターなど、メタバースの環境整備が必要であるものと考える。
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調査要綱
2.調査対象: 国内の繊維産業・アパレル企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、郵送アンケート調査ならびに文献調査併用
<繊維産業・アパレル市場とは>
本調査における繊維産業・アパレル市場とは、繊維全般(織物、編物、染色整理、紡績、合繊繊維、不織布、産業資材)および衣料全般(紳士服、婦人服、ベビー子供服、学生服・作業服、スポーツウェア)、小売業(百貨店、量販店、専門店、無店舗販売など)、問屋(生地問屋、製品問屋)、アパレルメーカー、商社、貿易、その他(寝装寝具、インテリア)などを対象とする。ここでは アパレル産業の新たな動きとしてデジタルファッション(メタバース上でアバターに着用させる仮想衣類等)を取り上げる。
<市場に含まれる商品・サービス>
紳士服・洋品(紳士服、下着類、シャツ、ネクタイ、靴下など)、婦人・子供服・洋品(婦人服、子供服、下着類、ブラウス、靴下など)、その他衣料品(スポーツウェア、作業服、 呉服、反物、寝装具類、インテリア、和装小物など)、身の回り品(靴、履物、和・洋傘、 かばん、トランク、ハンドバッグ、裁縫用品、装身具(宝石・貴金属製除く)など
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