ZEBの市場規模は一貫して成長、2030年度には12兆300億円まで拡大すると予測
~足元では計画段階からZEB設計のプロジェクトが目立つ~
1.市場概況
政府による「2050年カーボンニュートラル宣言」とそれを受けた脱炭素経営への進展や、2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」において、「2030年度以降の新築建築物へのZEB(ZEH)水準の省エネルギー性能確保」、「省エネルギー基準の段階的な引き上げの実施」が明記されるなどの動きがあったことで、近年は建築主の環境意識が一層向上している。
一方、オフィスビル等を供給するデベロッパー各社においても、大手では自社の開発物件について2030年度までにすべてをZEB化する方針を打ち出しており、今後はZEB設計が基本との認識が広がりつつある。また、ZEB Ready(注1)、ZEB Oriented(注2)については、非ZEB仕様の建築物と比較してイニシャルコストの増加分が低く抑えられるようになってきている。
(注1)ZEB Ready:再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上のエネルギー消費量削減を実現した建築物。
(注2)ZEB Oriented:再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から30%(ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等)または40%(事務所等、学校等、工場等)以上のエネルギー消費量削減を実現するとともに、さらなる省エネルギーの実現に向けた措置として未評価技術が導入された、延床面積1万㎡以上の建築物。
2.注目トピック
省エネ面で有利な個別分散方式空調が注目される
建物で消費されるエネルギーは空調・換気・照明・給湯・昇降機等があり、建物用途による違いはあるものの、主に空調のための温熱・冷熱をつくり出す熱源が概ね2~4割を占める。空調には主に2つの方式があり、1つはセントラル空調方式(中央熱源方式)で、もう1つは個別分散方式(個別熱源方式)である。
近年、特にZEBを目指す建築物件においては個別分散方式空調を選択する傾向が見られる。個別分散方式はセントラル空調方式と異なり、フロアや部屋ごとに稼働状況をコントロールできることから、無駄な電力消費を抑えられる。従来、個別分散方式は配管の長さの制約から小~中規模の建築物件を中心に施工される方式であったが、現在では改良が進んで対応可能な配管長が延び、より大規模な物件にも適用できるようになっている。
3.将来展望
2030年までに新築建築物の平均でZEBを実現するとした政府目標などを踏まえ、2030年度のZEB市場規模は12兆300億円まで拡大すると予測する。現在計画中の新規建築プロジェクトについても、設計の初期段階からZEBとなっているものが目立つことから、市場は右肩上がりでの推移が続く見通しである。
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病院は機能維持の観点からエネルギーの削りしろが少なく、ZEB化手法の確立が課題
調査要綱
2.調査対象: ZEBの設計・施工実績を有するゼネコン、設計事務所、空調機器メーカー、空調衛生設備工事事業者等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<ZEBとは>
経済産業省資源エネルギー庁「ZEBロードマップ検討委員会」によると、ZEB(Net Zero Energy Building)は、「先進的な建築設計によるエネルギー負荷の抑制や、パッシブ技術の採用による自然エネルギーの積極的な活用、高効率な設備システムの導入等により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物」とされている。
なお一次エネルギー消費量削減率に応じて、『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedの4段階のZEBが定義されており、本調査におけるZEB市場規模(建築物の工事費ベース)は4段階すべてのZEB建築物を対象として算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)
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