2022年の国内インポートブランド小売市場は前年比29.9%増と大幅な伸び、円安を背景にした商品価格値上げが市場規模の押し上げに寄与
~2023年は「モノ」「コト」消費が活発に、インバウンド需要の拡大にも大きな期待~
1.市場概況
2022年の国内インポートブランド(主要15アイテム分野)の小売市場規模は、前年比29.9%増の2兆8,894億円と推計した。近年で好調だったコロナ禍前の2019年比でも12.1%増となり、コロナ禍から完全に回復した。
2022年の市場拡大要因としては、主に2つの理由が挙げられる。一つは、急激な円安による商品価格の値上げの影響である。2022年は、ブランド各社が商品価格の度重なる値上げを行っても需要が落ちることが無く、なかでも人気ブランドになると価格改定前の駆け込み需要まで発生している状況であった。本調査対象の主なブランド群に関しても、平均的に20%程度の商品価格の値上げを行っていた様子だが、その値上げ金額分がそのまま売上増に繋がっているブランドが大半であった。またもう一つは、ウィズコロナ社会における需要回復が挙げられる。2022年は、コロナ禍の行動制限が大幅に緩んだこともあり、外出機会の増加やコロナ禍前の生活スタイルに戻ることで、それに伴う買い替えや新調需要が発生した年でもあった。
2.注目トピック
商品価格値上げの継続とアイテムラインナップの拡大
2023年になっても円安基調は続いていることから、夏までに既に2回程度の商品価格の値上げを行うブランドが多く、秋以降も同様の状況が続くことが想定されている。
ここまで値上げが繰り返された結果、今までのようにブランド品を購入できなくなる顧客層が出てきている。富裕層には全く影響がでていないとされる値上げではあるものの、特にブランドの勢いを支えていた若年層の消費行動が止まってしまうことはマイナス影響でもある。
このような状況を想定し、人気ブランドほど主力商品については値上げを行い、希少性と憧れを演出しながら、次世代の顧客層に向けては、購入可能な価格帯の商品アイテムのラインナップを広げる戦略をとるブランドが増加している。この動きは高級ブランドで顕著だが、今後は中価格帯のブランドにも広がっていくとみる。
3.将来展望
2023年は社会全体がコロナ禍前に急速に戻っており、コト消費(体験型消費)に合わせてモノ消費(商品やサービスへの消費)も発生している。現下、インポートブランド市場を支える国内富裕層については、依然として旺盛な消費が継続しているが、加えてインバウンド(訪日外国人客)需要が戻ってきたことで、同市場は前年を上回る好調さがみられる。主に懸念されるのは、一般の国内消費の低調さだが、2023年はインバウンド需要も活発化していることから、同年の国内インポートブランドの小売市場規模は前年比16.3%増の3兆3,594億円を予測する。
また、円安の影響によるインバウンド需要の拡大は好要因であるが、一方で店舗内混雑などによる国内客への接客やサービスに悪影響が出ることも懸念されている。富裕層をはじめとする国内客層が離反しないよう、顧客維持のための対策や配慮が求められるものと考える。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
インポートウォッチマーケット
インポートジュエリーマーケット
インポートウェア類マーケット
調査要綱
2.調査対象: 欧州、米国の衣料品・服飾雑貨、ウォッチ、ジュエリー、クリスタル製品・陶磁器、アイウェア、筆記具ブランドを輸入販売する商社、メーカー、小売事業者、また各インポートブランドの日本法人等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング調査、ならびに文献調査併用
<インポートブランド市場とは>
本調査におけるインポートブランド市場とは、従来から算出していたインポートブランド市場規模(主要10アイテム分野)に5アイテムを追加し、主要15アイテム分野とした。
主要15アイテム分野とは、①「レディスウェア」、②「メンズウェア」、③「ベビーウェア」、④「バッグ・革小物」、⑤「シューズ」、⑥「ネクタイ」、⑦「スカーフ・ショール・ハンカチ類」、⑧「レザーウェア」、⑨「ベルト」、⑩「手袋」、⑪「ウォッチ」、⑫「ジュエリー」、⑬「クリスタル製品・陶磁器類」、⑭「アイウェア」、⑮「筆記具」である。尚、いずれも欧州、及び米国からの輸入品に限られる。
<市場に含まれる商品・サービス>
レディスウェア、メンズウェア、ベビーウェア、バッグ・革小物、シューズ、ネクタイ、スカーフ・ショール・ハンカチ類、レザーウェア、ベルト、手袋、ウォッチ、ジュエリー、クリスタル製品・陶磁器類、アイウェア、筆記具
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