2030年度の国内バイオマス発電量を45,988GWhと予測
~大規模木質バイオマス発電所の新設ペースは鈍化するも、食品廃棄物を原料とした小型のバイオガス化設備のニーズが増加する見通し~
1.市場概況
バイオマスエネルギーは生物由来の有機性資源による再生可能エネルギーであり、原燃料(未利用木材、一般木材、建設資材廃棄物、パーム椰子殻、輸入材、下水汚泥、食品廃棄物、家畜排泄物等)、発電電力、熱(蒸気)、バイオ燃料(バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェット燃料等)として市場に供給される。本調査では、未利用木材や一般木材、輸入材等を燃料とする木質バイオマス発電や、下水汚泥、食品廃棄物、家畜排せつ物等の有機廃棄物を原料とするメタン発酵バイオガス発電などバイオマス発電事業における発電電力量を推計した。
2022年度の国内バイオマス発電量を40,581GWhと推計する。2021年度末から2022年度にかけて、設備容量が10MWを超える大規模な木質バイオマス発電所が複数稼働を開始したことで、2022年度はバイオマス発電量が大幅に増加した。
2023年度のバイオマス発電量は前年度比107.4%の43,583GWhの見込みである。対象区分の認定時に入札制度が導入されるなどFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の見直しにより、大規模な木質バイオマス発電所の新規建設の動きが鈍化していることに加えて、燃料の調達競争の激化により一部の発電所では稼働率が低下している。2023年度のバイオマス発電量の増加幅は前年度と比べて小さくなる見通しである。
2.注目トピック
Non-FIT型バイオマス発電の市場動向
木質バイオマス発電では、市場価格に一定の補助額が上乗せされるFIP(Feed-in Premium)制度による発電事業を検討する発電事業者が複数出てきている。このような発電事業者は、これまでバイオマス発電事業や電力小売事業などのノウハウを蓄積してきた事業者が多い。
2022年度に新たに導入されたFIP制度は、発電事業者が卸売市場などで売電する際にその価格に一定の補助額を上乗せする制度である。FIP制度を活用する発電事業者は、自身で売電のタイミングや売り先を選定する形となるが、例えば電力の市場価格が高いときに売電することで、収益を拡大できるメリットがある。
発電事業者によっては、燃料価格の変動に応じた売電価格の設定や再生可能エネルギーのニーズがある企業との直接取引を視野に入れた上で、FIT制度だけでなくFIP制度にも依存しないバイオマス発電事業を検討している。これらの動きが広がると、2020年代中頃から2030年にかけて、FIT制度を活用しない木質バイオマス発電所の建設が進む可能性がある。
3.将来展望
2030年度のバイオマス発電量を45,988GWhになると予測する。大規模な木質バイオマス発電所の新規計画の件数が減っていることから、2024年度以降、バイオマス発電量は微増基調にて推移する見通しである。
今後、導入の増加が見込まれるのは、食品廃棄物を原料としたメタン発酵バイオガス発電である。従来、食品廃棄物のバイオガス発電では1日あたりの食品廃棄物処理量が50~100tの大型のバイオガス化設備を中心に導入されてきた。
近年、食品廃棄物の発生量が数十t/日とまでいかなくても、メタン発酵バイオガス発電を実施したいという顧客の要望があり、商業施設などで小型のバイオガス化設備の導入が検討されるケースが増えている。メタン発酵バイオガス発電は、小型設備を中心に2030年にかけて徐々に導入件数を伸ばしていくと予測する。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
バイオ燃料市場
調査要綱
2.調査対象: バイオマス原燃料供給事業者、バイオ燃料供給事業者、バイオマス発電事業者、バイオマス設備システムメーカーなど
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話調査、ならびに文献調査併用
<バイオマスエネルギー市場とは>
バイオマスエネルギーは生物由来の有機性資源による再生可能エネルギーであり、原燃料(未利用木材、一般木材、建設資材廃棄物、パーム椰子殻、輸入材、下水汚泥、食品廃棄物、家畜排泄物等)、発電電力、熱(蒸気)、バイオ燃料(バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェット燃料等)として市場に供給される。
<バイオマス発電市場とは>
資源エネルギー庁の令和3年度エネルギー需給実績(確報)の2021年度発電電力量を基に、矢野経済研究所が2022年度から2030年度(予測)までの発電電力量を推計した。
<市場に含まれる商品・サービス>
木質バイオマス発電、メタン発酵バイオガス発電
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