2023年度の鞄・袋物小売総市場規模は前年度比11.2%増の見込
~2022年度はインポートブランドが国内富裕層を中心に好調、2023年度は旅行需要が復活~
1.市場概況
2022年度の国内鞄・袋物小売市場規模は前年度比24.6%増の1兆3,255億円となった。高級ブランドの輸入品を主とするインポートブランドバッグが国内富裕層を中心に好調な売れ行きをみせたこと、鞄の原材料や燃料の高騰などにより全体的に商品単価が上昇したこと、結婚式など特定の機会におけるオケージョン需要が戻ってきたこと、マルシェバッグやエコバックといった買い物袋など、繰り返し使えて環境に配慮したサステナブルな商品の購入需要が高まってきていること、ビジネスシーンでの服装や持ち物のオフィスカジュアル化によりビジネスリュックが引き続き堅調となったことなどにより同市場規模はプラスで推移した。
2.注目トピック
旅行鞄小売市場
2022年度の旅行鞄国内小売市場規模は前年度比27.5%増の1,390億円となった。「Go To トラベルキャンペーン」により国内旅行の需要は一時的に盛り上がりをみせ、旅行鞄においては小型スーツケースなどの売れ行きが好調となった。ただし、キャンペーンの停止などもあり需要は不安定であったため、コロナ前の2019年度の市場規模と比較すると、2022年度の同市場規模はその9 割程度である。
2023年度は、政府による全国旅行支援を背景に、コロナ禍で外出制限されていた状況からの反動で、リベンジ旅行として国内外への旅行需要が回復すると見込む。訪日外国人観光客によるインバウンド需要の増加に伴って、旅行鞄市場も右肩上がりに推移するとみる。訪日外国人観光客が旅行先で購入した土産物を入れるため、日本で新たに高品質なスーツケースを買い求めるなど、特に一人旅用の小型スーツケースや、抗菌・抗ウイルス機能を搭載したキャリーケースの需要が大きくなっている。また、円安がこうした購買行動を後押ししている。
2024年度以降は、環境に配慮した商品の開発や使用といった、関連事業者及び消費者のサステナブルな意識に対してリサイクル可能な商品の開発が加速するなど、特に環境への取り組みが進むものと予測する。
3.将来展望
2023年度の国内鞄・袋物小売市場規模は前年度比11.2%増の1兆4,741億円を見込み、2024年度は同2.1%増の1兆5,057億円と予測する。2023年度は新型コロナウイルス感染症法上の位置づけが5類に移行し、行動制限がなくなるなど、2022年度以上に人流が活性化した。コロナ前と同等の規模でのイベントが復活し、観光庁の旅行・観光消費動向調査によると日本人の国内旅行者数はコロナ禍と比べて回復傾向にあるとみられる。また、今後の焦点はインバウンド需要の取り込みだと考える。2024年に本格化する可能性が高い中国人の団体旅行客によるインバウンドや、円安の継続を考えるとプラス要素が多いが、日本人の国内客層においては物価上昇で節約志向になり買い控えをするなどの懸念もある。
また、今後は、フェーズフリーと環境に配慮した製品開発への対応が重要になると考える。フェーズフリーとは、身の回りのモノやサービスを、日常生活だけでなく非常時にも役立つようにデザインするという考え方である。近年、防災を意識してフェーズフリーを謳った商品を発売するメーカーが相次いでおり、今後もこの流れは続くものと考える。環境に配慮した製品開発はブランディングの面でも重要となっており、環境負荷の小さい原材料の選択に繋がっている。フェーズフリーや環境に配慮した商品を作り、付加価値を高めて高単価で製造・販売することが、業界の一施策として必要となっていくとみる。
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流通チャネル別の鞄・袋物小売市場
調査要綱
2.調査対象: 鞄・袋物及び服装用ベルト業界に携わるメーカー、卸、小売業ならびに、周辺関連事業者(皮革・布帛・合皮等素材供給メーカー、卸ならびに副資材事業者等)、輸出入事業者、関連団体等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査、ならびに文献調査併用
<鞄・袋物小売市場とは>
本調査における鞄・袋物とは、鞄は主に男性仕様の大型のもの、袋物は主に女性仕様のハンドバッグや小物入れをさし、ビジネス鞄や旅行用鞄、ハンドバッグなどに加え、財布・革小物類やベルトを含む。なお、旅行鞄の市場規模は、国内メーカー・卸、海外ブランドの「旅行鞄」の推定売上割合から算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
ショルダーバッグ、トートバッグ、リュックサック、ナップサック、バックパック、ボストンバッグ、ボディバッグ、ウェストバッグ、セカンドバッグ、クラッチバッグ、手提げバッグ、アタッシュケース、ハンドバッグ、ポシェットなど
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