プレスリリース
No.3532
2024/05/13
中古車流通市場に関する調査を実施(2024年)

2023年の中古車小売台数は約260万1,000台と推計
​~新車の供給・販売回復により中古車在庫が増加、堅調な需要も追い風に~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の中古車流通市場を調査し、主要領域別に中古車小売販売、中古車買取、オートオークション(入札会含む)、中古車輸出の動向、参入企業動向を分析し、将来展望を明らかにした。

推計中古車小売台数の推移
推計中古車小売台数の推移

1.市場概況

2023年の国内中古車小売台数は約260万1,000台と推計した。

2023年は半導体をはじめとする各種部品サプライチェーンの混乱が解消に向かったことで新車生産・販売環境が大きく改善し、新車への買い替え時に発生する下取車両も増加した。これによってオートオークションの平均成約価格も低下し、国内消費者が中古車を購入しやすい環境へと回復した。なお、本調査に関連して実施した国内自動車ユーザーアンケート調査から2023年の平均中古車購入総額は162万8,000円であったため、同年の金額ベースの国内中古車小売市場規模(小売台数×平均購入総額)は約4兆2,342億6,000万円と試算される。

新車市場と共に回復基調にある中古車市場であるが、2023年には大手中古車専業における不祥事が大きな波紋を生じさせ、中古車業界全体に少なからず不信感を漂わせた。競合事業者や消費者は当該事業者の個別の問題として冷静な受け止めをしている様子であるが、業界全体のイメージ改善に向けては事業者一丸での取り組みが期待される。

2.注目トピック

インボイス制度の導入や支払総額表示の義務化による変化

2023年はインボイス制度の導入、中古車販売時における支払総額表示の義務化などが開始され、中古車事業者の仕入れや販売環境が変わることとなった。

いずれも事業者において大きな影響は見られないものの、支払総額表示の義務化に関しては、本調査に関連して実施した中古車販売店アンケート調査から「プライスボードの更新に手間がかかる」といったマイナス面の声や、「消費者にとって分かり易くなった」というプラスの意見など、様々な反応が窺えた。

​こうしたなか、従来問題視されてきた慣習の改善に繋がる変化も見られており、今後の市場環境が注目される。​

3.将来展望

国内新車販売の主流は所有車両の代替需要であるが、近年は代替スパンが長期化傾向にある。さらに今後は脱炭素化といった地球規模での課題解決や個々人の自由なモビリティ(移動手段・方法)の多様化に向けて、販売車両の機能の高度化や電動化が進んでいく。これに伴い、短期的には新車価格の上昇が続くことが予想される。

これに対し、新車よりも価格が比較的安価である中古車の需要は拡大していく可能性が高く、しばらくは追い風を受け続けることが想定される。

メーカー系ディーラーにおいては将来の新車市場縮小を見据えて対策を強化する目的から、企業間の統廃合や新車・中古車併売拠点の拡充などを進めている。併せて新車販売における残価設定型商品(主に残価設定型クレジット:契約期間満了時の価値(=残価)を設定し、それを車両価格から差し引いた残り額を契約期間で分割払いする方法)の活用を高めることで、顧客の囲い込みや契約満了に伴って返却される中古車の販売による利益の拡大、新規顧客の取り込みを図っている。一方、自動車メーカー側もディーラーの事業支援を強化しており、メーカー・ディーラー陣営による中古車事業はその重要性を改めて認識することで、事業拡大のスピードが加速する可能性がある。

これに対して中古車販売・買取店の動きを見ると、大手中古車事業者においてはエンドユーザーからの直接仕入(買取)を強化し続けており、仕入原価の低減と小売販売利益の拡大を図りながら収益基盤の安定性を高め、事業全体へのさらなる投資と顧客の獲得を継続して行っている。買取専門店は反対に、車両販売利益の拡大を見据えて買取車両のエンドユーザーへの小売販売に主眼を置くようになってきている。

中古車販売について見ると、エンドユーザーが中古車を購入しやすい環境に戻りつつあり、上述のような事情も相まって、需要は底堅い状況が続いている。加えて、支払総額表示の義務化は、中古車小売事業者に対する統一ルールとして確立された。また、影響度合いとしては小規模であろうが、大手中古車専業における不祥事を受けて、一時的には大手事業者から顧客が流失する傾向にあり、競合事業者にとっては顧客の流入などもあるようである。

これは、エンドユーザー側にとっての選択肢の増加とも言い換えられる。支払総額表示によって価格の透明性が担保されたため、これからは、販売価格以外の車両の品揃えの豊富さや購入時や購入後のサービスの充実さといった選択肢がエンドユーザーにとっていかに多様で利便性が高いかという点において、今まで以上に重要性を増していくものとみる。

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    調査要綱

    1.調査期間: 2023年11月~2024年3月
    2.調査対象: 自動車メーカー、自動車ディーラー、オートオークション・入札会運営事業者、中古車販売・買取事業者、中古車流通関連事業者、関連団体、自動車ユーザー等
    3.調査方法: 当社研究員による直接面談(オンライン含む)、アンケート調査ならびに文献調査併用

    <中古車流通市場とは>

    本調査における中古車流通市場とは中古車小売販売市場、中古車買取市場、オートオークション市場(入札会含む)、中古車輸出市場の4市場で構成される。

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2024年03月28日
    体裁
    A4 382ページ
    価格(税込)
    198,000円 (本体価格 180,000円)

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    マーケティング本部 広報チーム
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