2023年度の個人クリエイターエコノミー市場は主要5分野で大幅に成長
~市場参入する個人クリエイターの増加、販路となるプラットフォームの拡充に期待~
1.市場概況
従来、個人がクリエイターとして収益を得るには出版社やその他企業に所属し、その企業・団体の経済活動の一環として作品を制作することが主流であった。このため、創作活動を行う個人のうちほんの一握りのプロのみがクリエイターとして活動することができ、それ以外は愛好者(アマチュア)とされ、その創作活動は単なる趣味とみなされていた。
しかし、現在では個人クリエイターが作品をSNSなどインターネット上のプラットフォームで発信することで、ファンを獲得して収益につなげる動きがみられるようになった。このような経済活動は「クリエイターエコノミー」と呼ばれており、市場にも大きな影響を与えている。
本調査では個人クリエイターによる経済活動(クリエイターエコノミー)として、①同人誌市場(マンガ・文章)、②個人イラスト市場、③インディーゲーム市場、④インディーミュージック市場、⑤個人クリエイターファンクラブの5分野を対象としている。2023年度はいずれの5分野も好調で、前年度比で高い成長率となった。このような市場の興隆によって様々な分野の個人クリエイターが参入している。
2.注目トピック
個人イラスト市場
本調査における個人イラスト市場は、主に自身の画風でイラストを描いて公開し、ファンからの収益で創作活動する「絵師」と呼ばれるイラストレーターをはじめとする個人イラストレーターによるイラスト制作、またはイラストに関連するサービスを対象としている。
2023年度の個人イラスト市場規模は246億6,600万円(プラットフォーム流通総額ベース)と推計した。その内訳は、コミッションプラットフォームが166億6,600万円、ファンクラブプラットフォームが80億円である。
個人イラスト市場では、イラスト制作を行うツールが紙とペンからタブレットと画像編集ソフトウェアに移行したことから、作成されたデジタルイラストはSNSとの親和性が高く、作品がSNSに投稿されることで大きな反響を獲得するようになった。
その結果、一部の個人イラストレーターは可視化されたフォロワーを擁するインフルエンサーとなり、インフルエンサー化した個人イラストレーターの作品に対するニーズは高まった。これに伴い、依頼の仲介を行う有償サービス(コミッションプラットフォーム)を提供する事業者や、ファンが創作を支援するファンクラブを開設し、サブスクリプションサービスを提供する(ファンクラブプラットフォーム)事業者が出現し、収益化が行われている。また、近年は日本のアニメ、マンガ、ゲームなど、二次元として描かれたキャラクターやストーリーに関連する文化である2次元カルチャーの普及の影響で、海外からの依頼も増加している。
個人イラスト市場はさらに成長が見込まれ、2024年度には前年度比13.5%増の280億円に達すると予測する。
3.将来展望
個人クリエイターエコノミー市場は、SNSなどのプラットフォームの普及、サブカルチャーの流行や特定の人物や事象を推す活動(推し活)などの影響で、近年急速に市場が拡大している。一方で、市場に参入し、創作活動を行う個人クリエイターはほんの一部に過ぎないとみる。こうしたなか、今後も個人クリエイターエコノミー市場に参入するクリエイターは増加するとみており、これに伴い、販路となるプラットフォームの更なる拡充が期待される。
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調査要綱
2.調査対象: クリエイターエコノミー関連プラットフォーム事業者等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用
<個人クリエイターエコノミーとは>
オンラインプラットフォームやSNSの興隆により、個人がクリエイターとして作品を発表し、収益を得ることが可能となってきた。本調査ではこのような個人として活動するクリエイターによる経済活動を「クリエイターエコノミー」と定義し、①同人誌市場(マンガ・文章)、②個人イラスト市場、③インディーゲーム市場、④インディーミュージック市場、⑤個人クリエイターファンクラブの主要5分野を対象とする。ここでは個人イラスト市場について取り上げる。
<市場に含まれる商品・サービス>
同人誌市場(マンガ・文章)、個人イラスト市場、インディーゲーム市場、インディーミュージック市場、個人クリエイターファンクラブ
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