2024年度の非住宅木造市場規模は前年度比100.1%の8,800億円の見込、2030年度には1兆1,400億円に拡大する見通し
~市場はコロナ禍やウッドショックから回復し、今後、環境負荷軽減に寄与する非住宅木造建築物の取組事例は増加傾向で推移する見込み~
1.市場概況
2023年度の国内非住宅木造市場規模(新築+増改築)は、コロナ禍による建築計画の中断・見送り、着工延期やウッドショック※からの回復に加えて、建築コストの上昇が追い風となり、工事費予定額ベースでは前年度比133.7%の8,788億円と大幅に増加した。結果として、コロナ禍前の2019年度市場規模を2割ほど上回ることとなった。
一方、床面積ベースの2023年度非住宅木造市場規模は前年度比95.5%の3,342千㎡と微減となった。2020年度以降、床面積ベースでは減少傾向で推移しているが、その理由としては1棟当たりの延べ床面積や階数の減少が挙げられる。近年、原材料価格や工事費の高騰により、建築コストが上昇傾向で推移しており、建築コストを抑制しようとする施主の動きが非住宅木造建築物の小規模化、低層化に繋がっていることが考えられる。
※ ウッドショック:コロナ禍以降の中国・アメリカを中心とした新築着工ラッシュによる木材需要の急拡大等により、木材需要が増加し木材価格が急騰したこと。
2.注目トピック
非住宅木造は、SDGsやカーボンニュートラルといった社会的潮流と高い親和性
現在、社会全体として、SDGsやカーボンニュートラルの実現に向けて環境意識が高まっており、施主(企業や自治体・団体等)や設計・施工者もそれらへの貢献が期待されている。そのような背景の中、木はCO2を貯蔵するといった特徴があることから、従来、非住宅建築物に多かったS/RC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)ではなく、積極的に木造を選択する事例が増加している。さらに、S/RC造などと木造を組み合わせた混構造(ハイブリッド構造)の建築事例も拡大している。
例えば、2022年度の国土交通省「建築着工統計」によると、オフィスビルに該当する「事務所」(木造)は床面積ベースで前年度比105.0%、金額ベースで同115.5%と底堅く推移していることは注目に値する。
3.将来展望
2024年度の非住宅木造市場規模は、床面積ベースで前年度比101.7%の3,400千㎡、工事費予定額ベースで同100.1%の8,800億円を見込む。
2024年度に入り、非住宅建築物で多く採用されているS/RC造に使われる鉄などの原材料価格の高騰を背景に、建築コストを相対的に低減できる木造に対するニーズが増加している。特に、S/RC造と比較してコスト競争力の高い低層の非住宅木造市場を筆頭に市場は堅調に推移する見込みである。
今後もより一層、SDGsやカーボンニュートラルへの対応が求められ、CO2を貯蔵することが出来る木の活用ニーズは拡大すると考えられる。環境や社会に配慮して持続可能な発展を目指すESG経営に注力する企業は、現在、主に上場しているような大企業であるが、今後、中小企業など多くの企業にも広まることが期待され、市場拡大の後押しになると考える。2030年度の非住宅木造市場規模は、床面積ベースで4,100千㎡(2023年度比122.7%)、工事費予定額ベースで1兆1,400億円(同129.7%)に拡大すると予測する。
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2022年度の建築主別_床面積別構成比
調査要綱
2.調査対象: 非住宅分野の木造構造建築物に取り組む事業者(ゼネコン、ハウスメーカー、構工法メーカー、建材メーカー、プレカットメーカー、木質構造材・集成材メーカー等)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用 ※独立行政法人統計センターによる国土交通省「建築着工統計」のオーダーメード集計データを基に矢野経済研究所推計。(なお、2017年度~2023年度の実績データは統計法に基づいて、独立行政法人統計センターから「建築着工統計」(国土交通省)のオーダーメード集計により提供を受けた統計成果物を基にしており、国土交通省が作成・公表している統計等とは異なります。)
<国内非住宅木造市場とは>
本調査における非住宅木造市場とは、国土交通省「建築着工統計調査」の分類における「産業用建築物(事務所、店舗、工場及び作業場、倉庫、学校の校舎、病院・診療所、その他の合計)」で「木造」構造の建築物を対象とし、市場規模は建築着工ベースにおける床面積および工事費予定額にて算出している。また、新築に加え増改築着工実績も対象とした。
非住宅木造と類似する「中大規模(中高層)木造建築」には集合住宅などの住宅が含まれるが、非住宅木造の定義からは住宅は除外して算出している。
<市場に含まれる商品・サービス>
非住宅木造建築物
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