プレスリリース
No.3693
2025/03/06
自動運転システムの世界市場に関する調査を実施(2024年)

ADAS/自動運転システムの世界搭載台数は日米欧中で標準搭載が進み、2035年に8,399万8,000台に成長すると予測
~レベル2/レベル2+が市場をけん引し、2035年には同レベル計で5,000万台超に達する~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、ADAS/自動運転システムの世界市場の調査を実施し、市場概況や採用動向、個別メーカーの事業戦略を明らかにし、2035年までの新車におけるADAS/自動運転システムの世界搭載台数を予測した。

ADAS/自動運転システムの世界市場規模予測
ADAS/自動運転システムの世界市場規模予測

1.市場概況

2023年のADAS(先進運転支援システム)/自動運転システムの世界搭載台数は5,355万5,000台であった。自動運転のSAEレベル別の内訳は、レベル1(L1:運転支援)が2,327万7,000台、次いでレベル2(L2:運転支援)が2,846万台、レベル2+(高速道路限定の手放し運転・一般道レベル2運転支援機能を含む L2+:運転支援)は181万台、レベル3(L3:条件付自動運転)は8,000台である。

2023年のADAS/自動運転システムの世界搭載台数全体の53.1%を占めるレベル2(L2:運転支援)は、高速道路において「ACC(車間距離制御装置)」「LKS/LKA(車線維持補助装置)」を同時に作動させる運転支援機能の標準設定が進んでいる。ADAS用フロントカメラ/レーダの高性能化も進み、クルマの前側方・後側方を検知するためにコーナーレーダの適用が増えているため、これまでより車両の運転支援機能の性能が向上している。

さらに、レベル2+(L2+:運転支援)については、「高速道路限定の手放し運転(高速道路ハンズオフ)」だけでなく、一般道にレベル2運転支援を適用した機能(L2+)の実用化が始まっている。中国においてNOA(Navigation On Autopilot)と総称されている一般道L2+運転支援機能は、中国の新興自動車メーカの高級BEV(電気自動車)で採用が進み、2023年から中国で市場が本格的に立ち上がっている。

レベル3(L3:条件付自動運転)については、欧州高級車メーカーがドイツ、米国でオプション設定しているが、2023年の世界搭載台数は8,000台にとどまる。

2.注目トピック

2025年にレベル2がADAS/自動運転システム世界搭載台数の53.6%を占める

日米欧中ではADASの標準搭載が進み、2024年にレベル2(L2:運転支援)の世界搭載台数は3,025万5,000台に達し、レベル1(L1:運転支援)の2,276万台を超えると見込む。

​2025年もレベル2が世界市場をけん引し、ADAS/自動運転システムの世界搭載台数は6,002万6,000台に成長すると予測する。レベル別にみると、レベル2(L2:運転支援)が世界搭載台数全体の53.6%を占めて3,218万台である。次いでレベル1(L1:運転支援)が2,006万2,000台(同33.4%)、レベル2+(L2+:運転支援)が745万9,000台(同12.4%)、レベル3(L3:条件付自動運転)が32万5,000台(同0.5%)と予測する。レベル4(L4:高度自動運転)についてはMaaS(Mobility as a Service)向け商用車の研究開発が進んでいるが、公道実験用車両が中心であるために2025年時点の量産台数は僅少である。

3.将来展望

2035年のADAS/自動運転システムの世界搭載台数は8,399万8,000台に成長すると予測する。最も市場規模が大きいのがレベル2+(L2+:運転支援)の3,181万台、ADAS/自動運転システムの世界搭載台数に占める割合は37.9%である。2020年代後半からレベル2+(L2+:運転支援)の搭載台数が日米欧中で増加し、2030年はレベル1(L1:運転支援)の世界搭載台数(1,469万2,000台)を超えて2,255万4,000台の拡大を予測する。

レベル1(L1:運転支援)とレベル2(L2:運転支援)は日米欧中の乗用車で搭載が一段落するため、2020年代後半からはASEANが需要の中心になる。2026年からASEAN-NCAP(新車アセスメントプログラム)において、運転支援系のレーティング(評価)が変わる計画がある。このため、2030年以降はASEANがL1、L2の市場をけん引し、2035年の世界市場規模はL1が1,396万8,000台、L2が2,563万5,000台になると予測する。

レベル3(L3:条件付自動運転)は欧州・中国において市場が立ち上がり、2030年の世界搭載台数は336万9,000台、2035年には652万台を予測する。2030年以降は、高速道路で時速120㎞以上に対応したL3の自動運転システムの採用が高級車の一部で進み、ドライバーがシステムからのテイクオーバー(自動運転システムからドライバーへの運転権限を委譲)に応じる場合は「L3」から「L2+(運転支援)」に自動で切り替わるシステムの導入が予想される。

レベル4(L4:高度自動運転)は、V2V(Vehicle to Vehicle:車車間通信)やV2I(Vehicle to Infrastructure:路車間通信)が整備され、自動運転用ソフトウエアの開発が進展する2031年以降に市場が立ち上がる。2030年のL4の世界搭載台数は80万台、2035年は606万5,000台に増加すると予測する。なお、L4以上の商用車(ロボタクシー、シャトルバス、無人配送車)を含んでいない。

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    調査要綱

    1.調査期間: 2024年4月~9月
    2.調査対象: 自動車メーカー、カーエレクトロニクスメーカー、半導体メーカー、センサメーカー等
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用

    <自動運転システムとは>

    自動運転システムはSAE(米国自動車技術協会)が自動化のレベルを0~5までの6段階で分類しており、ドライバーの周辺監視責任の違いからレベル1、2を「運転支援」、レベル3以上を「自動運転」と定義している。レベル1は車両の周辺の状況をセンサが検知し、衝突事故を軽減・回避する自動ブレーキ(AEB)、前走車両に追従するオートクルーズコントロール(ACC)などの単機能、レベル2は操舵や加減速のうち複数の運転支援をシステムが実行し、他の動的運転作業はドライバーが担う。レベル2のハンズオフ機能(高速道路限定の手放し運転)はシステムコストやセンサの搭載個数が異なるために、SAEの定義にはないがレベル2+と称されることが多い。レベル3(条件付自動運転)はシステムが全ての動的運転作業を実施し、緊急時においてはドライバーが介入する。レベル4(高度自動運転)はシステムが全ての動的運転作業を実施し、ドライバーはいかなる状況においても運転作業に関与しないが、自動運転システムが作動する運行設計領域は決められる。レベル5は完全自動運転であり、自動運転システムが全ての動的運転作業を実施し、自動運転の場所、走行条件についての制約もない。

    ​本調査における世界市場規模は乗用車および車両重量3.5t以下の商用車の新車に搭載される自動運転システムの搭載台数ベースで算出している。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    先進運転支援システム(レベル1、レベル2/2+)、自動運転システム(レベル3、レベル4、レベル5)

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2024年09月30日
    体裁
    A4 200ページ
    価格(税込)
    198,000円 (本体価格 180,000円)

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