2030年度の再生可能エネルギー設備向けO&M市場規模は1兆5,265億円と予測
~系統用蓄電池のO&M需要が大幅に拡大する見通し~

1.市場概況
2024年度の再生可能エネルギー(再エネ)設備向けO&M(Operation & Maintenance)の国内市場規模は1兆2,100億円を見込む。国内における再エネ発電設備の導入量拡大に伴い、日々の運転管理や保守点検(メンテナンス)業務といったO&Mの重要性は一層高まっている。また、太陽光発電や風力発電といった出力変動の大きい再エネ電力の安定供給に向けて導入が進む系統用蓄電池においても、O&Mへの需要が増加してきている。
2024年度の市場規模を設備別にみると、バイオマス発電所が最も大きく、太陽光発電所、水力発電所、風力発電所、系統用蓄電池と続く。バイオマス発電所は、他の再エネ発電設備に比べて運転維持コストが高いことから、市場全体に占める割合が大きくなっている。
2.注目トピック
系統用蓄電池O&M市場の動向
近年、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、変動抑制や需給調整のためのESS(Energy Storage System:蓄電池システム)の重要性が高まっている。系統用蓄電池は電力網の安定運用を目的としたESS の一つであり、電力の供給と需要のバランスを取るため、再生可能エネルギーの変動を吸収・調整する役割を持つ。特に太陽光発電や風力発電は、天候や時間帯によって発電量が大きく変動するため、系統用蓄電池によるエネルギーの蓄積と供給が、電力網の安定運用において不可欠となっている。こうした状況を背景に、系統用蓄電池の接続契約は急増しており、今後導入が進んでいく見込みである。
2024 年度の系統用蓄電池O&Mの市場規模は46億円を見込む。系統用蓄電池の導入増加を背景に、O&Mのニーズは急速に拡大しており、市場規模は前年度比で倍増する見通しである。
3.将来展望
2030年度の再生可能エネルギー(再エネ)設備向けO&M市場規模は1兆5,265億円に達すると予測する。2024年度時点と比べ、系統用蓄電池と風力発電所の市場拡大が顕著である。2030年度の系統用蓄電池O&Mの市場規模は272億円に達すると予測する。系統用蓄電池市場の大幅な拡大を背景に、2024年度と比べて5倍以上の成長を見込む。また、2030年度の風力発電所O&M市場のうち、特に洋上風力発電所向けO&Mの拡大は目覚ましく、2024年度時点では風力発電所O&M市場全体の約5%を占めていたが、2030年度には20%を超えるまでに成長すると見込まれる。このほか、太陽光発電所O&M市場においては、自家消費やPPAモデル※といったNon-FIT型の発電所においてO&Mサービスの需要が増加するとみる。
※PPA(Power Purchase Agreement)とは、PPA事業者が自己資金等によって再生可能エネルギー発電所を開設して所有・運営・維持し、発電所で発電した電気を需要家に対して長期・固定価格によって供給する仕組みを指す。需要家以外の第三者が発電設備を保有することから第三者保有モデルと呼ばれている。PPAの契約期間は20年などの長期にわたるケースが多く、需要家は契約期間中、電力と環境価値などに対して固定単価の料金を支払う。
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調査要綱
2.調査対象: 太陽光発電事業者、太陽光発電所O&Mサービスを提供する事業者、風力発電事業者、風力発電所O&Mサービスを提供する事業者、水力発電事業者、水力発電設備メーカー、バイオマス発電事業者、バイオマス設備システムメーカー、蓄電池メーカー、系統用蓄電池のO&Mサービスを提供する事業者、その他再生可能エネルギー設備のO&Mに関わる事業者・団体
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリングならびに文献調査併用
<再生可能エネルギー設備向けO&M市場とは>
本調査における再生可能エネルギー設備向けO&M(Operation & Maintenance)とは、太陽光発電所、風力発電所、水力発電所、バイオマス発電所および系統用蓄電池における運転管理業務や保守点検業務を対象とし、設備オーナーが自らO&M業務を手掛ける場合に加えて、設備オーナーからの委託を受けた事業者がO&Mをサービスとして提供する場合も含む。市場規模は運転維持コストベースで算出している。
<市場に含まれる商品・サービス>
再生可能エネルギー設備O&M市場
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