GAIA-Xへの新規加入企業数は195社(2020年12月~2021年3月計)
~産業界における成功モデルの確立とデータ取引に係る法整備が普及拡大の鍵を握る~
1.調査結果概要
世界の主要国・地域において、各国が主導してデータ・プラットフォームを構築しようとする動きがある。とくに欧州では世界に先駆けてGAIA-Xというデータインフラの構築に向けて動きだしている。
GAIA-Xは、欧州域内外の様々なクラウドサービスを独自の方式で相互に接続し、運用するクラウドフェデレーションによる分散型データインフラである。また、このデータインフラ構築には、”プライバシー保護に対する意識の高さ” という欧州独自の価値観がベースとなっており、データセキュリティやデータ主権という機能を、データインフラ上に具現化した先進事例とも言える。
GAIA-Xは、IDSA(International Data Spaces Association)という機関を通じて普及活動が積極的に行われており、2020年11月時点で約350社の企業が参加している。その中には、米国のアマゾン、マイクロソフト、グーグル、中国のアリババなどのハイパースケールクラウドも名を連ねている。
また、2020年12月から2021年3月までの新規加入企業は合計で195社で、累計で約550社ほどに拡大している。新規加入の内訳をみると、ドイツ企業が61社(構成比31%)と最も多く、次いでフランス、イタリアがそれぞれ37社、ベルギー13社、スペイン10社となっている。また、EU圏外からは、米国から7社、英国が2社、中国やシンガポールからもそれぞれ1社の企業が参加している。今後、他国や他国企業に遅れを取らないよう、日本や日系企業はデータ流通の規格や実装に向けて、官民一体となった取り組みが求められていくと考える。
2.注目トピック
現時点でのGAIA-Xに関する動向、展望、課題
■動向~GAIA-Xから読み取る欧州データ戦略の狙い
基本コンセプトは、”既存の異なるクラウドサービスを連結し運用するクラウドフェデレーションによる分散型のデータインフラの構築を目指す” である。すなわち、GAIA-Xは既存の大手クラウドベンダと競合する位置づけではなく、むしろ補完且つ活用するポジションを担っていると推測される。これには、“欧州のプライバシー保護に対する意識の高さ” という欧州独自の価値観が大きく関係していると考えられる。
■展望と課題
GAIA-Xは、ドイツの「インダストリ4.0」の進化形とも言える、自動車産業のサプライチェーン・ネットワークであるCatena-Xを取り込み、パイロットプロジェクトを始動させている。GAIA-Xは既にドイツ工業規格は取得済みであり、欧州規格から国際規格への進展を図るとともに、今後はモビリティや金融をはじめとした他の産業へと横展開できるか否かが普及のカギとなる。
一方で、欧州においても、民間企業はまだまだ様子見という見解も少なくなく、GAIA-Xプロジェクトに参加する企業や団体の所属する国単位の主要窓口であるGAIA-X Hubsの参加拡大をベースに、まずは欧州内の大企業からいかに賛同を得ていくかが第一のハードルとなる。
また、実装において技術的に確立されていない点も課題であるが、こうした技術的な課題は遠からず解決されていくと考えられる。しかし、グローバルでの展開となれば、米国クラウド法とEUのGDPR(一般データ保護規則)とのギャップを乗り越えていく必要があり、既にデータインフラ構築は国家戦略にも関わる重要課題となっていることから、法制度レベルで意見をすり合わせするのは意外と時間がかかるかもしれない。
調査要綱
2.調査対象: 欧州を中心とした、米国、中国、インド、日本のデータ・プラットフォーム関連機関・団体・企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含)、ならびに文献調査併用
<GAIA-Xとは>
本調査における欧州GAIA-Xとは、欧州で進められている、新しいデータインフラ構想のことである。特徴的なのは、データ主権の確保とデータの自由な流通という、本来ならばトレードオフの関係にある両者を実現させようとしている点にある。つまり、データのセキュリティを強固にしながら、取扱いの自由度も低下させない、とする思想の実現を目指したデータ・プラットフォームといえる。
<市場に含まれる商品・サービス>
データ・プラットフォーム戦略
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