2021年度の国内健診・人間ドック市場規模は前年度比5.4%増の8,940億円と予測
~新型コロナウイルス感染拡大による影響からの回復の兆しがみられる~
1.市場概況
法定健診には、地方自治体が実施する住民健診や企業・団体等が従業員向けに実施する定期健診、結核・肺がん検診、母子健康法・学校保健法などに基づく健康診断、後期高齢者向けの高齢者健診などが 含まれる。そのうち、40 歳以上 74 歳以下の公的医療保険加入者全員が受診する特定健康診査(以下、 特定健診)が 2008年から実施されている。その他に、利用者が任意で受診する人間ドック等の任意健診 も実施されており、本調査における健診・人間ドック市場はそのいずれも対象として算出した。
厚生労働省の統計によると特定健診・特定保険指導の2019年度の受診率は特定健診55.6%、特定保健指導23.2%と年々向上しているものの、国が掲げた特定健診70%以上、保健指導45%以上の目標とは引き続き乖離がみられる。2018年度には第三期特定健康診査等実施計画の策定に際して、各保険者別の実施率の公表や特定保健指導の運用ルールなどの見直しが実施された。第三期の中間年にあたる2020年度には、特定健診・保健指導にかかる加算・減算制度について議論が進められた。
2020年度には新型コロナウイルス感染症の感染拡大がみられ、社会・経済に大きな影響を与えた。健診・人間ドック市場では、2020年4~5月の緊急事態宣言下では、多くの健診機関で職域健診、学校健診などの法定健診の実施が延期・休止されることとなった。その後も受診控えや健診延期分を残りの期間で実施するためのオペレーションの変更、感染対策による受診件数の減少がみられるなど厳しい年となった。
2.注目トピック
ニーズに合わせたオプション検査の実施
本調査に関連し、健診施設に対してアンケート調査を実施し、139件の健診機関から回答を得た。標準検査以外のオプション検査として、実施件数の多い検査項目(複数回答)について尋ねたところ、PSA検査※の回答が最も多く85 件(構成比61.2%)であった。次いで上部消化管内視鏡検査が63件(同 45.3%) 、腫瘍マーカーであるCEAが56件(同40.3%)と続いている。健診施設では、受診者のニーズに対応したオプション検査を導入することで、他施設との差別化を図っていることが見受けられる。
また、今後注力していきたい健診分野の回答として、人間ドックが多く挙げられるなど、人間ドックが注目される分野・市場であることが示唆されている。コロナ禍において健康・予防に対する意識が高まりつつあることも、健診・人間ドック市場への今後の追い風になるとみる。
※PSA(Prostate Specific Antigen=前立腺特異抗原)検査とは前立腺がんを発見するための検査
3.将来展望
2020年度の国内の健診・人間ドック市場(受診金額ベース)は、前年度比91.4%の8,480億円の見込みである。これまでは、生産年齢人口の減少、特定健診の受診率向上などの要因から市場は横ばいまたは微増傾向で推移してきた。しかし、2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う受診控えや、健診業務の一時休止・延期による受診者数の減少から市場は縮小を見込む。
今後は、健診施設において受診者数の回復がみられていることに加え、健康・予防に対する意識の高まりも市場回復の追い風になるものとみられる。一方では、受診控えの傾向は一定程度残り続けると考えられ、2021年度の健診・人間ドック市場は同5.4%増の8,940億円になると予測する。市場は回復基調で推移するものの、コロナ禍以前の水準に戻るまで数年程度はかかると予測する。
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調査要綱
2.調査対象: 全国の健康診断を実施している施設、関連ビジネス企業、保険者、地方自治体等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、健診実施施設向け郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用
<健診・人間ドック市場とは>
本調査における健診・人間ドック市場とは、自治体が実施する住民健診や労働安全衛生法に基づき企業・団体などが従業員向けに行う定期健診、母子保健法・学校保健法などに基づく健康診断、40歳以上74歳以下の公的医療保険加入者全員が受診する特定健康診査(特定健診)等の法定健診と、利用者が任意で受診する人間ドック等の任意健診を対象とする。
<市場に含まれる商品・サービス>
法定健診(定期健診、特定健康診査、特定保健指導など)、任意健診(人間ドック、専門ドックなど)
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