放射線治療施設へのアンケート調査結果では、2020年調査で継続使用されていた治療装置の約7割がそのまま継続使用と回答
~2022年以降はがん患者数の増加も想定され、放射線治療の確立と普及が進む見通し~
1.市場概況
政府によるがん対策基本法、放射線治療機器緊急整備事業、がん対策推進基本計画などの施策により、放射線治療機器の普及と治療実績は、がん診療連携拠点病院や大学病院を中心に格段に成長してきている。
厚生労働省によると第三期がん対策推進基本計画の中間評価報告では、放射線治療に対して「がん診療連携拠点病院等のうち、外来放射線照射、直線加速器による定位放射線治療、IMRT(強度変調放射線治療)を行っている割合、放射線治療専門医が常勤で配置されている拠点病院等の割合は増加傾向であり、評価できる」とされ、第四期計画の策定に向かっている。
日本では2人に1人ががんに罹り、3人に1人ががんで死亡すると言われており、がんの放射線治療に関する認知は上昇しており、IMRT、IGRT(画像誘導放射線治療)、VMAT(回転型強度変調放射線治療)などの高度放射線治療や、粒子線・重粒子線治療などが幅広く選択されている。
2.注目トピック
放射線治療装置の更新(リプレース)状況について
本調査に関連して、全国の放射線治療を実施している179施設に対して、放射線治療の状況(患者数や治療件数、治療内容等)や治療装置の使用状況(更新、新設・増設、評価等)などの郵送アンケート調査を実施した。
前回(2020年1月~2月)調査で2016年から継続使用されていた放射線治療装置143台の更新(リプレース)状況を尋ねたところ、「更新した」との回答が17.5%(25台)、「増設で対応」は13.3%(19台)と、合算すると3割を占めた。一方で約7割の装置がそのまま「継続使用」(67.1%、96台)されており、コロナ禍での経営悪化の影響が大きいと想定されるものの、今後ますます更新が必要となることが明らかになった。
3.将来展望
国立がん研究センター資料によると、2020年のがん罹患数は101万2,100例(前年比0.5%減)、2021年が100万9,800例(同0.2%減)と微減傾向の見込みである。2019年までは増加傾向にあったが、新型コロナウイルス感染拡大によるがん検診などの受診者数減少や病院通院控えなどを背景に、2020年、2021年と連続で減少が見込まれる。
しかし、健康診断やがん検診の受診者数の回復、病院受診への回帰により、がん罹患数は再び増加に転じると想定される。
今後は政府の施策とからめて、①分子標的薬剤の影響と相互作用、②がんゲノム医療の影響と相互作用、③粒子線治療体制の充実、④緩和的放射線療法の普及、⑤放射線治療の均てん化、⑥都道府県を超えた連携体制の充実等、放射線治療の確立と普及が進む。さらに、放射線治療と温熱療法(ハイパーサーミア)や放射線増感剤などとの併用治療についても期待されている。
オリジナル情報が掲載された ショートレポート を1,000円でご利用いただけます!
【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
調査要綱
2.調査対象: 放射線治療機器メーカー、サービス展開企業及び放射線治療を行っている全国の病院、一般診療所
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング調査、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用
<放射線治療市場とは>
本調査では、厚生労働省地方厚生局の「施設基準の届出状況」をもとに、国内の二次医療圏別に放射線治療施設の整備、高精度放射線治療器の導入状況についての調査を実施した。
また、本調査に関連して、放射線治療を行っている病院、一般診療所に対して放射線治療に関する郵送アンケート調査、電話ヒアリング調査を実施し、放射線治療の診療市場について明らかにした。その他、治療機器メーカーやサービス展開企業を対象として調査を実施し、放射線治療機器や治療システムの市場についても明らかにしている。
<市場に含まれる商品・サービス>
放射線治療器(リニアック[直線加速器]、サイバーナイフ、ガンマナイフ、粒子線治療他)、放射線治療システム(計画システム、線量検証システム)、放射線治療固定具他
出典資料について
お問い合わせ先
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。