2021年の機械系CAE国内市場規模は847億円、2022年も引き続き回復傾向と予測
~コロナ禍の影響は軽微にとどまり、2022年は円安傾向により輸出型製造業の大幅な回復が追い風の見通し~
1.市場概況
2020年の機械系CAE国内市場規模(事業者売上高ベース)は前年比1.7%減の822億5,500万円となった。2021年の同市場は同2.9%増の846億5,400万円となり、回復傾向にある。
2020年から2021年は新型コロナウイルス感染拡大防止のための行動制限により、経済活動は大きく落ち込んだ。しかし、日本の製造業各社は在宅勤務に伴うクラウド化への対応を含めたICT投資を継続しており、ソフトウェアライセンス収入やサポート・保守・サービス収入は減少しておらず、2020年の機械系CAE国内市場への影響はマイナス2%程度に留まった。
2.注目トピック
エネルギー価格高騰における機械系CAEへの影響
ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、エネルギー価格の高騰が日本経済を直撃している。事態の長期化に伴い、原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギーの活用も対策検討の1つとなると考えられる。
まず原子力発電所の再稼働については、原子力規制委員会が決めた新規制基準の審査をクリアしなければならず、CAEの解析結果を含めて膨大な技術文書を提出する必要がある。そのため、設計や開発に係る解析需要が高まるとみる。次に太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーへの転換については、欧州を中心に洋上風力発電に注目が集まっている。日本においても、2019年には「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」が施行され、洋上風力発電設備を設置しやすくなった。そのようなことから、設計・開発に係る解析需要が今後高まる可能性がある。加えて、波力発電や地熱発電などの発電設備設計・開発に係る解析需要の高まりも期待される。
さらに石油精製および石油化学系プラントの建設が活発化している。ここでの設計に関わる解析需要として、熱流体解析や構造解析のほか、1DCAE、計算化学なども含まれる。
以上のようなことから、エネルギー価格の高騰は、機械系CAE市場にとってはビジネスチャンスとなる可能性がある。
3.将来展望
2022年の機械系CAE国内市場規模は、前年比5.4%増の891億8,500万円と予測する。2022年に入り、円安傾向が続いており、自動車や電機など輸出型製造業の業績は大きく回復する傾向にある。それは、機械系CAEにもプラスに働くものと考える。
また、建設分野においては、建築物の3次元モデルで調査や設計、施行から維持管理まで管理するBIM(Building Information Modeling)の普及により、CAEが活用される機会が増えている。今後、建設業向けのCAE需要は、大きく拡大する見通しである。
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調査要綱
2.調査対象: 機械系CAEメーカー等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用
<機械系CAE市場とは>
CAE(Computer Aided Engineering)とは、コンピュータにより製品の設計や開発工程を支援するという概念であり、それを実現するためのツールとして、機械系システムの強度や流体における抵抗などの特性を解析対象とする機械系CAEや、1DCAEなどのモデルベース開発ツール、数値計算を支援する数値解析などその他のCAEがある。
本調査における機械系CAE市場とは、構造解析や熱流体解析、樹脂成形解析、鋳造解析など、前者の機械系CAEを対象とし、事業者売上高ベースで算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
機械系CAE(構造解析や熱流体解析、樹脂成形解析、鋳造解析など)
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