2023年の生化学向け研究用試薬市場は、前年比101.7%の1,226億1,000万円と予測
~国内市場は飽和状態、試薬メーカー各社とも新しい研究領域での展開を模索~
1.市場概況
生化学向け研究用試薬は、生化学や免疫学、分子生物学などさまざまな基礎研究から医薬品や診断薬、化学品、農水産品などの産業領域における応用研究などまで、きわめて広い領域で使用される試薬であり、アミノ酸やペプチド、タンパク質、糖、脂質、核酸などの生体成分そのものから、免疫化学研究用、細胞生物研究用、培養研究用などまで、様々な試薬が存在する。近年、特に遺伝子工学や免疫細胞研究の発展は著しく、新規技術に伴う新しい研究用試薬も数多く生まれてきている。
国内の生化学向け研究用試薬市場は、政府(文部科学省、厚生労働省、農林水産省など)の予算規模に左右されるところがあり、試薬ユーザーの約7割を占めるといわれる大学、国公立研究所はその影響を大いに受けるところがある。政府のバイオ関連の研究開発予算は一部領域を除き大幅な伸長が見られず、また、民間企業の研究開発費も堅調なものの抑制傾向にある。
2.注目トピック
がん免疫療法に関する研究開発
がんに対する新たな治療法として「免疫療法」が注目されており、研究開発が活発化している。免疫療法は、従来行われてきた手術、化学療法(抗がん剤)、放射線に次ぐ “第4の治療法” として期待されており、2018年にはがん細胞が免疫細胞に作用する “ブレーキ” を外すことに着目した免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)の開発に携わった研究者がノーベル医学・生理学賞を受賞するなど、近年大きな関心が集まっている。
こうした背景もあり、アカデミア(公的研究機関)、民間の研究機関ともに免疫療法に関する研究が活発になっている。当該研究に使用される試薬に対する需要も高く、試薬取り扱い企業も今後の伸長領域として、品揃えの充実等に注力している。免疫療法に対する研究は今後も活発に行われると見られており、医薬品の広がりも含め、試薬関連の市場動向も注目される。
3.将来展望
国内の生化学向け研究用試薬市場は、政府による大型プロジェクトの終了や、昨今の経済状況による民間企業の研究開発投資縮小などが影響し、微増から横ばい傾向で推移する見込みである。2023年の生化学向け研究用試薬市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年比101.7%増の1,226億1,000万円になると予測する。
国内市場が飽和状態であることから、試薬メーカー各社とも新しい研究領域を探すことに注力している。特に最近では研究開発のスピードもアップしており、ニーズも目まぐるしく変化していることから、研究者の動向を把握しながら、それを新製品開発に結びつけていく必要があると考える。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
細胞・組織培養関連試薬市場
調査要綱
2.調査対象: 生化学向け研究用試薬を製造・販売している国内企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<生化学向け研究用試薬とは>
本調査における生化学向け研究用試薬とは、生化学、免疫学、分子生物学などさまざまな基礎研究から医薬品、診断薬、化学品、農水産品などの産業領域における応用研究などに利用されている試薬全般を対象とした。
<市場に含まれる商品・サービス>
遺伝子工学関連試薬、電気泳動用試薬、プロテオーム関連試薬、細胞・組織培養用試薬、免疫・細胞研究用試薬、その他生化学研究用試薬
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