プレスリリース
No.3366
2023/10/20
フェムテック(女性関連ヘルスケア・医療)市場に関する調査を実施(2023年)

2022年度のフェムテック(女性関連ヘルスケア・医療)市場規模は約47億円

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のフェムテック(女性関連ヘルスケア・医療)市場を調査し、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

フェムテック(女性関連ヘルスケア・医療)市場規模
フェムテック(女性関連ヘルスケア・医療)市場規模

1.市場概況

女性の健康やライフスタイルの悩みに応えるサービスや製品のことをフェムテック(FemTech:femaleとtechnologyを掛け合わせた造語)としてキーワード化されており、関連市場は活況になってきている。

日本においても女性の社会進出や晩婚化を背景に、女性の健康に関連する事柄がタブー視される状況や女性にとって快くない状態を変え、QOL(Quality of life)の向上をサポートする製品・サービスがベンチャー企業を中心に展開されていた。2021年に入り、日本でも大手企業の参入や、政府の女性活躍推進の後押し、SDGsへの関心の高まりなどを背景にフェムテックというキーワードは認知拡大し、女性従業員関連の福利厚生制度を以前より手厚くするなどの企業の取り組みも散見されるようになってきており、日本における市場の活性化が進みつつある。

フェムテックが関連する分野は多岐にわたるが、大分類としては月経・月経前症候群(PMS:Premenstrual syndrome)関連、不妊・妊孕(にんよう)性関連、妊娠・出産、更年期障害など、ライフステージにかかわるものから、セクシャルウェルネス※、女性特有の疾患(乳がん・子宮がん)関連など、ライフステージにかかわらず課題とされる分野が含まれる。​

2022年度のフェムテック(女性関連ヘルスケア・医療)市場規模は46億7,200万円と推計した。同市場は、主な利用対象年齢(10代~40代)の女性人口推移にあわせて市場が推移するため、利用人口減少により市場規模は縮小していくことが予想される。対象分野により特性は様々であり、月経管理アプリなど女性関連PHR(Personal Health Record)は、基本機能は無料が中心で、各社では有料サービスとして健康医療相談サービスや利用者のパートナーとの共有機能などの他サービスの充実を図る。女性関連オンライン健康医療相談サービスや女性関連の簡易検査サービスは新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけにサービスへの認知や関心が高まり、利用が促進されたものとみる。また、自治体や企業などの法人事業は活性化しており、市場拡大が推察される。

​※セクシャルウェルネスとは「性の健康」のこと。性に関して精神的、身体的、社会的にも健康である状態を指す。

2.注目トピック

東京都で社会的卵子凍結への助成開始へ、助成効果や他の自治体の動向などに注目

卵子凍結とは受精前の卵子を凍結することで、近年注目が集まっている。

以前より、国内では卵子凍結は抗がん剤治療や生殖器のがんなどによる卵巣機能低下前に行われてきた(医学的卵子凍結)。しかしながら、近年は、将来の妊娠や出産に備えて若い時から自分自身の健康や生活習慣に向き合う「プレコンセプションケア」の重要性への認識が高まっており、適齢期までにパートナーがいなかったり、子どもをもつ準備が整わなかったりする場合に備えた卵子凍結(社会的卵子凍結、ノンメディカルな卵子凍結)をプレコンセプションケアの一環ととらえ、増加しつつある。

​​通常、卵子凍結を行うには個人が採卵から保管費まで自己負担するか、企業が福利厚生の一環として費用の一部を負担するケースが多く見受けられていた。そのような中、東京都では2023年9月15日に、健康な女性が将来の妊娠に備えるための卵子凍結(社会的卵子凍結)に助成金を出す方針について発表した。対象者は東京都に住む18歳から39歳までの女性で、助成額は最大で一人当たり合計30万円となった。2023年度予算案に関連経費を含め1億円を計上しており、2023年度は200~300人の利用を想定し、本格実施は2024年度を予定している。東京都の方針をうけ、今後は大阪や神奈川県など他の自治体、さらには国としてこのような助成を行う可能性も考えられ、利用拡大が想定される。

3.将来展望

フェムテック(女性関連ヘルスケア・医療)市場では、引き続きさまざまな製品・サービスが開発・展開される見込みで、今後の市場拡大が期待される。女性が不便・不快に感じる状況を改善する女性向けのヘルスケアや医療関連製品・サービス(フェムテック)の普及は女性だけでなく社会全般に大きなメリットがあると考える。

政府は、「女性版骨太の方針2023(女性活躍・男女共同参画の重点方針)」を決定した。その中で女性の健康に関わる取り組みとして、女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現に向けて、事業主健診における問診時に月経困難症や更年期症状などの女性の健康に関する項目を追加、産業保健体制の充実、生理の貧困への対応(経済的な理由などから、生理用品を入手することが困難な状態にあること)、フェムテックの利活用、生理休暇制度の普及促進、女性の健康に関するナショナルセンターとして国立成育医療研究センターに研究の司令塔機能をもたせることによる最新エビデンスの収集・情報提供、女性アスリートの健康課題の解決などを盛り込んだ。

​また、企業では女性が働きやすい環境づくりを行うための支援を実施しており、フェムテックを活用した女性関連の健康経営・福利厚生を強化する状況は広がりつつある。妊娠・不妊治療や更年期障害など女性関連のヘルスケア課題に対しての企業制度の改善が求められており、法人向けサービス需要は今後も高まることが推察される。

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Aパターン
  • セグメント別の動向
  •  自治体や法人向けに女性関連のオンライン健康医療相談サービス利用は拡大傾向。効率的かつ精度の高いサービス提供に向けてAI活用について研究が進められる
  • 注目トピックの追加情報
  •  エクオール検査は40~50代の女性から60代以降の女性まで利用層拡大へ
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    調査要綱

    1.調査期間: 2023年7月~9月
    2.調査対象: フェムテック(女性関連ヘルスケア・医療)に関する機器・サービス提供企業、不妊治療を行う医療機関等
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、郵送調査、ならびに文献調査併用

    <フェムテック(女性関連ヘルスケア・医療)市場とは>

    Femtech(フェムテック)とは、Female とTechnologyを合わせた造語で、女性の健康課題をテクノロジーの技術で解決しようとする製品やサービスのことで、月経・月経前症候群(PMS:Premenstrual syndrome)や妊娠・不妊治療、女性特有疾患(がん、更年期障害、妊産婦うつなど)、セクシャルウェルネスなどのテーマについて、女性のQOL(Quality of life)の向上をサポートし、女性の一生に寄り添う新たな分野として世界的に期待されている。

    ​本調査におけるフェムテック(女性関連ヘルスケア・医療)市場規模では、女性関連PHR(Personal Health Record)、​女性向けオンライン健康医療相談サービス、女性関連の簡易検査サービスを対象として、事業者売上高ベースで算出した。なお、PHRアプリの市場規模は、個人ユーザーへの課金金額のみで、医療機関や法人向けの利用料、広告収入は含まない。なお、本調査より市場を再定義したため、過去公表値とは異なる。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    女性関連PHR、​女性向けオンライン健康医療相談サービス、女性関連の簡易検査サービス

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2023年09月29日
    体裁
    A4 267ページ
    価格(税込)
    165,000円 (本体価格 150,000円)

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    マーケティング本部 広報チーム
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