プレスリリース
No.3394
2023/11/20
カーボンニュートラル実現に向けた国内のエネルギー・フロー変革状況調査を実施(2023年)

国内の最終エネルギー消費の市場規模は、2023年度の13,010PJ、51.6兆円から2050年度には9,010PJ、48.0兆円と省エネ対策が進展して減少を予測
~エネルギー平均単価は2023年度の3.97円/MJから、2050年度には5.33円/MJと高価格化が避けられない見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、2030年度(中間目標)、2050年度(最終目標)に国内のエネルギー・バランス・フローが大きく変革する状況について調査・分析した。ここでは、国内のエネルギー供給事業の市場規模予測(エネルギー量、金額)について、公表する。

エネルギー供給事業の市場規模予測(エネルギー量ベース)
エネルギー供給事業の市場規模予測(エネルギー量ベース)
エネルギー供給事業の市場規模予測(金額ベース)
エネルギー供給事業の市場規模予測(金額ベース)

1.市場概況

2050年カーボンニュートラル実現のために、我が国ではエネルギーの脱炭素化が要求されている。現状、CO2を排出しない一次エネルギー(天然の状態で採取されたエネルギー源)は、原子力発電と再生可能エネルギーであり、カーボンニュートラルのためにはこれらの導入拡大が必要である。

これに対して、CO2を排出する化石燃料を使う場合には、製造時や使用・転換時に排出されるCO2を回収して、地中貯留する(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)か、再利用(CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization)して脱炭素化する必要がある(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)。
一方で、再生可能エネルギーを利用して製造するグリーン水素・グリーンアンモニアや、CCUSで化石燃料を脱炭素化して製造するブルー水素・ブルーアンモニアは、新たな脱炭素エネルギーとなる。また、グリーン水素やブルー水素を使用して、脱炭素の合成燃料や合成原料を製造できる。
カーボンニュートラルのためには、今後、上記のカーボンニュートラル燃料(脱炭素燃料)と、それらをエネルギー源とする発電電力が使用されていくことになる。特に、脱炭素化された電力を最終エネルギー消費に多く適用出来れば、より多くの需要分野を脱炭素化できる。

カーボンニュートラルに伴って、国内のエネルギー・バランス・フロー(一次エネルギー、二次エネルギー、最終エネルギー消費)は、既存のエネルギー源に対して、新たに水素やアンモニア、合成燃料等が組み込まれて大きく変革されることになる。

2.将来展望

今後、2050年カーボンニュートラル実現のために、省エネ対策が進むとともに、カーボンニュートラル燃料(脱炭素燃料)と、それらをエネルギー源とする発電電力が使用されていくことから、国内の一次エネルギー供給の市場規模(エネルギー量ベース)は、2023年度の19,630PJ※から2030年度に17,020PJ、2050年度には16,000 PJになると予測する。また、金額ベースの市場は、2023年度の35.3兆円から2030年度は30.2兆円、2050年度には21.8兆円になると予測する。カーボンニュートラルに向けて国内の省エネ対策が着実に進むことで、一次エネルギー供給量は大きく減少する見通しである。

一方、最終エネルギー消費の市場規模(エネルギー量ベース)は、2023年度の13,010 PJから2030年度に10,550PJ、2050年度には9,010PJになると予測する。また、金額ベースの市場は、2023年度の51.6兆円から2030年度は44.0兆円、2050年度には48.0兆円になると予測する。最終エネルギー消費量は、先ず2023年度から2030年度まで省エネ効果が大きく、その後2050年度に向けても、省エネ効果により減少する見通しである。

この間に、水素やアンモニア、その他各種カーボンニュートラル燃料の市場導入量が拡大することにより、エネルギー・バランス・フローにおいて相対的に多くのエネルギー転換プロセスが導入される見込みである。これにより、最終エネルギー消費時点におけるエネルギー平均単価は、2023年度の3.97円/MJ※から、2030年度に4.17円/MJ、2050年度には5.33円/MJに増大する見通しとなる。平均単価の上昇を抑制するためには、一次エネルギー供給時点のエネルギー平均単価を下げていかなければならない。

​※PJ(ペタジュール)=10の15乗J(ジュール)、MJ(メガジュール)=10の6乗J(ジュール)

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    調査要綱

    1.調査期間: 2023年4月~10月
    2.調査対象: エネルギー供給事業者(電力、ガス、石油)、設備・システムメーカー、エンジニアリング会社、商社、需要家[鉄鋼会社、化学会社、自動車会社、運輸会社(陸運、鉄道、航空、船舶)他]、関係省庁、業界団体等
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用

    <エネルギー・フローとは>

    国内のエネルギー供給市場におけるエネルギー・バランス・フローでは、一次エネルギー(天然の状態で採取されたエネルギー源)※1から、必要に応じて使いやすい二次エネルギー(元のエネルギーとは異なる形態のエネルギー源)※2に転換された後に、各種の需要分野で最終エネルギー※4として消費される。

    ※1.一次エネルギーの種類:原子力、水力、再生可能エネルギー(太陽光・風力・地熱・バイオマス)、未利用・未活用エネルギー、天然ガス、石油、石炭、輸入水素、輸入アンモニア、輸入合成メタン(本調査では、新たに輸入水素、輸入アンモニア、輸入合成メタンも一次エネルギーに含める)
    ※2.二次エネルギーの種類:電力(事業用発電、自家発電)、都市ガス(一般ガス、簡易ガス)、石油精製・石油化学、自家用蒸気・地域熱供給、石炭製品、カーボンニュートラル燃料※3
    ※3.カーボンニュートラル燃料(脱炭素燃料)の種類:水素、アンモニア、合成燃料、リニューアブル燃料、バイオ燃料
    水素:再生可能エネルギー由来のグリーン水素、および化石燃料由来水素でCCUS(Carbon Capture, Usage and Storage)等でCO2を回収したブルー水素
    燃料アンモニア:再生可能エネルギーネ由来のグリーンアンモニア、およびメタン改質工程でCO2を回収したアンモニア
    合成燃料:グリーン水素等と工場等から排出されたCO2を合成した燃料で、合成メタン(メタネーション)、合成プロパン・ブタン(グリーンLPG)等の気体合成燃料と、石油代替の液体合成燃料がある。
    リニューアブル燃料:廃食油等の非可食油を原料として製造される燃料で、リニューアブルディーゼル燃料やバイオジェット燃料がある。
    バイオ燃料:発電・燃焼用の発酵メタン、木質バイオマスや、自動車用のバイオエタノール等
    ※4.最終エネルギー消費の需要分野:家庭、運輸旅客、運輸貨物、企業・事業所他(農林水産鉱建設業、製造業、業務他)

    <エネルギー供給事業の市場規模とは>

    本調査におけるエネルギー供給事業の市場規模は、一次エネルギー(石油、天然ガス、石炭、原子力、再生可能エネルギー、輸入水素、輸入アンモニア、輸入合成メタン等)の供給時点と、一次エネルギー供給事業者から二次エネルギー(電力、都市ガス、石油精製・石油化学、自家用蒸気・地域熱供給、石炭製品、カーボンニュートラル燃料)供給事業者や需要家へ供給された時点、エネルギー供給事業者から需要家(運輸業、製造業他)や家庭へ供給された時点(最終エネルギー消費)でのエネルギー量(ペタジュール)や金額(兆円)ベースで算出した。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    一次エネルギー、二次エネルギーおよびエネルギー供給事業

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2023年10月30日
    体裁
    A4 254ページ
    価格(税込)
    198,000円 (本体価格 180,000円)

    お問い合わせ先

    部署
    マーケティング本部 広報チーム
    住所
    〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
    電話番号
    03-5371-6912
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