国内外の消費低迷などにより貨物輸送量も低調に推移し、2023年度の物流15業種総市場規模は前年度比4.0%減の23.4兆円の見込
1.市場概況
2022年度の物流15業種総市場規模(15業種各市場の積み上げ、一部重複含む、事業者売上高ベース)は、前年度比106.2%の24兆3,665億円と推計した。
業種別にみると、海運では2022年9月頃までの海上運賃の好市況と円安の影響による外航海運の収益拡大により、市場規模が拡大した。また、3PLでは海外も含めた積極的なM&Aによる事業拡大により、市場規模が大幅に拡大した。総市場に占める比率が高い海運市場や3PL市場の規模拡大が物流15業種総市場を押し上げ、2021年度ほどの伸び(同114.4%)ではないものの2022年度も拡大する結果となった。
ただし、国土交通省の統計によると国内、国際ともに2022年度(年)の貨物輸送量は、コロナ禍以前の2019年度(年)水準には戻らず、前年度同様に伸長要因は物量ではなく価格の上昇が要因となっている。
2.注目トピック
物流市場の潮流~市場規模は拡大するも、貨物輸送量は伸び悩み~
2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類感染症に移行され、コロナ禍による経済停滞により減少していた貨物輸送量や倉庫の入出庫量、3PL事業のロジ作業などは徐々に回復傾向がみられる。ただし、貨物輸送量についてはコロナ禍以前の2019年度水準には戻っていない。
元来、人口減少や少子高齢化、産業の空洞化などが進み、国内の貨物輸送量は減少傾向となっていた。コロナ禍の影響が弱まったとしても、日本国内の貨物輸送量が大幅に伸長する局面は見込めない。加えて、2022年度頃からの物価上昇に伴う消費低迷の影響があり、貨物輸送量の回復は力強さに欠ける結果となった。
一方、海外事業を展開する物流事業者にとっては、ドル建て運賃・料金が円安効果によって売上拡大につながるという側面もあった。特に海上運賃はドル建ての場合が多いため、外航海運事業者は円安効果によって売上高を大幅に伸ばした。また、燃料費や人件費などのコスト増加に伴い、運賃等の値上げも進んでいる。
昨今の物流市場の規模拡大は、物量ではなく価格の上昇が要因となっており、その傾向は今後も続くものと考える。
3.将来展望
2023年度の物流15業種総市場規模は、前年度比96.0%の23兆4,015億円を見込む。
インフレによる欧州の消費低迷や中国の景気低迷により世界的に物流需要は減少し、国内でも物価上昇に伴う消費低迷により、貨物輸送量は低調に推移する見込みである。
業種別にみると、3PLや普通倉庫、引越、軽貨物輸送といった業種で市場規模は前年度より拡大するものの、海運やフォワーディング、一般港湾運送など比較的構成比率の高い業種において減少傾向となり、2023年度の物流15業種総市場規模は縮小する見込みである。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
海運(外航+内航)の市場規模(2022年度)
調査要綱
2.調査対象: 国内有力物流事業者等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話アンケート調査、ならびに文献調査併用
<物流15業種とは>
本調査で対象とする物流業種は、特別積合せ貨物運送事業、宅配便事業(国内)、国際宅配便事業、3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業(納品代行含む)、海運(外航+内航)事業、一般港湾運送事業、航空貨物輸送事業、フォワーディング事業、鉄道貨物輸送事業、鉄道利用貨物運送事業、軽貨物輸送事業(バイク便含む)、普通倉庫事業、冷蔵倉庫事業(冷凍倉庫含む)、引越事業、その他事業の15業種とする。本年の調査から、納品代行を3PL事業、バイク便を軽貨物輸送事業に統合し、15業種に分類した。
<物流15業種総市場とは>
本調査における物流15業種総市場とは、15業種各市場の積み上げで算出したため、市場規模に一部重複を含む。なお、運賃及び保管料、荷役料、関連サービス料等を含む事業者売上高ベースで算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
特別積合せ貨物運送事業、宅配便事業(国内)、国際宅配便事業、3PL事業、海運事業、一般港湾運送事業、航空貨物輸送事業、フォワーディング事業、鉄道貨物輸送事業、鉄道利用貨物運送事業、軽貨物輸送事業、普通倉庫事業、冷蔵倉庫事業、引越事業、その他事業
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