今週の"ひらめき"視点

カジノ法案、本格始動。「規制」は誰を守るのか

4日、政府は昨年末に施工されたIR整備推進法を受けて第1回目の推進本部会議を開催、実施法案の策定を本格化させた。同会議の本部長である首相は、「世界最高水準の規制」と「クリーンなカジノの実現」を表明するとともに、大型民間投資による経済効果を強調した。

確かに短期的な経済効果はあるだろう。しかし、成功事例として引用されるシンガポールは日本にとっての戦略モデルとはなり得ない。国家の規模も産業構造も異なる(2016年12月16日付けの本稿参照)。そもそも世界の観光地に対する差別化戦略として、カジノ型消費施設は日本にとって有効であるのか。日本の魅力の本質が「爆買い」などではなかったことは、その後も増え続ける訪日観光客たちが教えてくれたはずだ。

そう、日本への投資を準備する海外勢にとっての「旨み」は訪日外国人市場ではない。彼らが狙うのはギャンブル依存症大国、日本のマネーである。
カジノはマネーを移動させるだけのビジネスであり、そこに新たな社会的価値は生まれない。敗者は一時の高揚感と引き換えに資産を明け渡す。しかし、本当の敗者は彼らではない。そこに税収を依存せざるを得なくなる国であり、地方である。
国民資産の売却に支えられる国などもはや国家の体をなさないし、そのような国を魅力的に思う外国人もいないだろう。「世界最高水準の安全」、「クリーンなエネルギー」という言葉への信頼が失われて6年、ここでも本質についての議論は先送りされる。


今週の”ひらめき”視点 04.02 – 04.06
代表取締役社長 水越 孝