2012年版 製薬市場の10年展望
わが国の製薬業界も他の先進諸国と同様に、新薬の特許が切れたならば後発医薬品がそのシェアを得るというパテントクリフの時代に突入しました。政府は、これまで2012年度中に後発医薬品の数量ベースでの比率を30%以上にすることを目標としてきましたが、達成することが困難な状況となりました。それにもかかわらず政府としては、今後も後発医薬品の普及拡大目標については継続することを明言しております。また、これまでわが国では、製薬企業各社にとって長期収載品の存在が新たな新薬上市までの間をつなぐ生命線ともいえる存在でした。それを製薬企業は放棄しても新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度を恒久化することを選択しました。その結果、製薬企業各社における長期収載品の存在は、度重なる薬価引き下げにより厳しい状況に追い込まれております。今年4月の薬価改定では0.9%程度の追加引き下げが行われることになりました。当然、新薬を上市できない製薬企業にとっては、新たな新薬上市までの期間、長期収載品で凌いでいくということが困難になり、戦略を間違ってしまえば経営が逼迫することになってしまいかねません。一方、医薬品流通市場においては、依然として厳しい納入価交渉が行われ、実勢価が大幅に下落し、医薬品卸の営業利益率が0.13%にまで引き下がってしまいました。このような状況下にあって昨年末からカテゴリー別の納入価交渉ということが急浮上してきました。これは医薬品卸連が推進しようとしている単品単価取引へのつなぎとして考案されました。このことに関しては好意的な声も聞かれますが、立場によって大きく思惑が異なります。ましてやこれまで引き下がってしまった実勢価を短期間で改善し、医薬品卸の営業利益率を引き上げていくためには、製薬企業も医薬品卸もこれまでのあり方を大きく見直すことも辞さないという覚悟が必要です。このことは、場合によっては短期的にせよ自社のシェアを低下させることになりかねません。その大きな戦略転換が果たせなければ、これまでの修正となってしまい、大きな成果を得ることができなくなってしまいます。
製薬企業や医薬品卸にとって、今が自社の体質を変え、21世紀の環境変化に耐えられる組織構築を行うチャンスです。「過去は変えることができないが、今を変えることで未来を変える」ことは可能です。本調査レポートでは、製薬市場を取り巻く環境変化の流れを捉えつつ、今後、わが国の製薬市場がどのようになっていくかということを予測いたしました。
※紙媒体で資料をご利用される場合は、書籍版とのセット購入をご検討ください。書籍版が無い【PDF商品のみ】取り扱いの調査資料もございますので、何卒ご了承ください。
調査資料詳細データ
■本資料のポイント
- 新薬の特許切れにともなうジェネリック医薬品の拡大で売上げが大幅に減少するパテントクリフ時代に突入した製薬企業の経営持続のあり方を探る
- カテゴリー別の納入価交渉はこれまでの状況を一変させることができるのか
- TPPはわが国の製薬企業にとって黒船的存在になりかねない
- 薬価差の拡大は医薬品のコモディティ化を促進させる
- 在宅医療の強化とその危うさ
- TPPはわが国の医療機関に大きな影響を及ぼす可能性がある
- 薬局が経営を持続させるために必要不可欠なこと
■本資料の概要
第1章 製薬産業を取り巻く構造変化
第2章 新たなる時代への対応を問われる医薬品卸
第3章 パテントクリフ時代に突入した製薬業界
第4章 緩やかな成長を持続する医療用医薬品
■掲載内容
第1章 製薬産業を取り巻く構造変化
プラスとなった2012年診療報酬改定の実態
実際はマイナス改定
定額負担制度の導入、再診料の引き上げは見送り
病棟薬剤師活動評価の引き上げ
在宅医療強化の改定
一般名処方加算新設で後発医薬品使用を促進
民主党政権下での医療の未来像
病床利用率70%
病院数や病床数は減少する
在宅医療の推進だけでは、将来の医療問題を解決できない
変わる診療所、グループ診療は拡大する
TPPの締結は、医療機関にとっても経営危機を招く
構造転換を求められる調剤薬局
2012年調剤報酬改定、2年間の延命措置確保
在宅医療強化の動きが活発化
門前薬局は曲がり角
M&A等で規模を拡大する大手調剤薬局チェーン
経営持続・拡大の決め手は、信頼される薬剤師の確保と育成
第2章 新たなる時代への対応を問われる医薬品卸
カテゴリー別交渉は新たなる道を開けるのか
新薬創出加算制度で活路を見出せなかった医薬品卸
医薬品をコモディティ化させる納入価交渉
2012年を「悪しき慣習を断つ1年」にできるのか
カテゴリー別交渉は単品単価取引への流れを作れるのか
納入価交渉の大幅改善は消費税引き上げまでがタイムリミット
医薬品卸の未来は広がるのか
医薬品卸は未来指向の経営に転換しているのか
何が自社の経営資源なのか
MSのあり方を見直す
今後、製薬企業との関係は変わる
医薬品卸の業界再編は進展するのか
第3章 パテントクリフ時代に突入した製薬業界
新薬創出・適応外薬解消等促進加算は試行期間の延長
恒久化が果たせなかった新制度、2014年に検証を実施
製薬業界から長期収載品の追加引き下げに不満噴出
加算返還品の市場に及ぼす影響
新薬創出加算品の仕切価設定
新薬創出加算制度を維持するには、会社全体で取り組むことが求められる
混迷する市場環境下で経営持続の道を模索するジェネリック医薬品企業
ジェネリック医薬品の目標を50%に引き上げ
崩れる0.7掛けルール
日本型ジェネリック医薬品企業のビジネスモデルの将来性
新薬メーカー以上に国際化の必要性
TPPはわが国の製薬業界にとって黒船的存在
「医薬品産業ビジョン」が吹っ飛んでしまう
長期収載品を主体とした製薬企業やジェネリック医薬品
企業にとっては生存の危機
内資系企業は、どれだけの企業がアジアへの本格進出を果たせるのか
業態転換を求められる内資系企業が増加する恐れと、
政府の製薬産業対策の必要性
第4章 緩やかな成長を持続する医療用医薬品
成長の足枷となるのか市場拡大再算定
当初予想を絶対的な数値とすべきなのか
TPPの議題として取り上げられるのか
コモディティ化する医薬品
分野によってはコモディティ化で商品価値が毀損
在宅医療の推進は市場の伸びを抑制
成長を阻む要因は数多く存在する
先行き不透明感が強まるわが国市場でその将来をどう見るか
わが国の医療用医薬品生産高予測(2011年~2019年)
製薬業界における破壊的イノベーションの必要性
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