アジア開発銀行、年次総会開催。自らの改革こそAIIBへの対抗策となる


5月5日、アジア開発銀行(ADB)の中尾総裁は開催中のADB年次総会で「増資」について言及した。今回の総会では既存2基金を統合、2017年の融資枠は現在の1.5倍、200億ドル規模に拡大することが既に合意されている。しかし、年間8000億ドルと試算されるアジアのインフラ需要に対応するには不十分であると判断、増資に向けて具体的な調整に入る、という。
また、日本の麻生財務相は日本からのアジアインフラ投資の強化策として「JAICAを活用してADBと連携するスキームを創設、政府開発援助(ODA)の拡充も含め、官民一体となった柔軟な資金供与を行なう」方針を発表した。
一方、中国の楼継偉財政相も演説で「アジアインフラ投資銀行(AIIB)はADBを補完するものであり融資における連携や人材交流の必要性」を訴えた。

AIIBをめぐる日本の論調は、執拗に牽制するか、様子見を決め込むか、あるいは、異常なまでに焦燥するか、いずれも極端に過ぎる。上記報道も「中国主導のAIIBに対抗」とか「新興国における存在感を維持する」といった視点から説明される。

しかし、中南米ではボリビア、エクアドル、コロンビア、ペルー、ベネズエラの5カ国で立ち上げたアンデス開発公社(CFO)と米国が主導する米州開発銀行(IDB)が共存する。前者がインフラ、後者は教育、保健分野などそれぞれに強みが発揮されている。

要は適切な条件と透明性のもとで新興国の需要に迅速かつ十分な資金を供給できるか、という点にある。この意味において、ADBも反省すべき点は多い。ADBの抜本的な改革は、AIIBへの参加の是非とは別の次元において徹底的に議論されるべきであり、そうであってはじめて「連携」や「協調」に対してイニシアティブをとることが可能となる。

今週の”ひらめき”視点 05.03 – 05.08

 

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