VW排ガス不正問題、EUの信用問題へ波及
違法ソフトの搭載車は世界で1100万台、失われた時価総額は4兆円、ブランド価値の毀損は1兆2000億円、、、不正の影響を語る数字の大きさはいずれも想像を越える。しかし、問題の深さは単に“規模”にあるのではなく、VW内部並びに関係者たちのガバナンスの不備と狡猾さの連鎖にある。
ソフトを開発した独部品大手ボッシュは2007年の段階で「規制逃れのためのソフト搭載の違法性」をVWに警告、2011年にはVWの最高意志決定機関である監査役会が問題を把握、2013年時点では既にEUの欧州委員会も不正ソフトの存在を掴んでいた、という。
ドイツ検察当局はヴィンターンコーン前社長について詐欺容疑で捜査を開始、VWは関与した幹部3人の停職を発表した。とは言え、問題はもはや一企業の組織犯罪のレベルを越えた。ドイツはEUの優等生であり、その強いドイツを支えてきたのが自動車産業である。そして、日本や世界と熾烈な競争を展開する次世代エコカー市場における欧州勢の戦略技術が“ディーゼル”である。最大市場の米国攻略に向けて焦りがあったことは想像に難くない。しかし、どこかに非ヨーロッパに対する驕りはなかったか。
“ドイツというシステムの膨張”に懸念を表明し、また、“EUは生まれながらに死んでいる”と断じたのは仏の社会学者エマニュエル・トッドである。不正の起点は、ドイツに、あるいは、EUに内在する“本質の綻び”ではなかったか。両者の事後対応を世界は注視する。
今週の”ひらめき”視点 09.27 – 10.01
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