米フォード、年内に日本から完全撤退。内向き志向を強める米国で対日批判の引き金に?


フォードの2015年国内販売台数は4968台、外国車におけるシェアはわずか1.5%である。この数字は2位VWの1/10を下回り、10位ポルシェ、11位フィアット、12位プジョー、13位ルノーにも届かない。こうした状況を鑑みると、日本市場からの撤退、アジア事業の再編(同時にインドネシアからの撤退も表明)、中国市場への集中投資、というフォードの経営決定は驚くに当らない。マツダの経営再建などを通じて日本市場と深く関わってきたフォードの市場における長期低迷は、結局のところ商品企画、販売政策、ブランド戦略など、経営戦略上の失態以上の何物でもあるまい。

しかし、ここで懸念されるのは、これをもって「米国車に対する参入障壁の高さの証明」などという“言い掛り”が米国内で声高になることである。TPP交渉における「軽自動車」に対する理不尽な攻撃は記憶に新しいが、単にローカライゼーションに失敗した一企業の経営判断が、市場閉鎖性問題を再燃させるリスクを含んでいる。とりわけ、TPPの議会承認、大統領選を控えた米国において、対日自動車問題は分かり易く、また、労使双方に対して効果的なメッセージとなる。
一方、TPP署名を前に、外交と通商の両面から攻めと防衛に先手を打つべきこの時期、その当事者たる担当大臣が自らの疑惑の釈明と防衛に汲々としているようでは話にならない。

今週の”ひらめき”視点 01.24 – 01.28

 

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