百貨店の苦戦はオウンゴール!? 成長ビジョンの再構築が必須


2月16日、総務省は2015年の消費支出が実質ベースで2.7%減、2年連続で前年割れになったと発表、翌日、日経は全国主要百貨店の2015年既存店ベースの売上が前年比▲0.2%、4年ぶりの減少となったと報じた(「日経MJ」調べ)。日経によると東京、大阪、福岡を除くすべての地区で前年割れ、とりわけ、北海道が▲6.1%、東北が▲4.3%と苦戦した、という。
百貨店市場の停滞は実質賃金の伸びが4年連続でマイナスとなったこと(厚労省)も背景にある。とは言え、スーパーが消費増税の反動減となった3月を除き1年を通じて前年を上回ったことを鑑みると、苦戦の要因は百貨店自身の営業戦略そのものにある。

訪日観光客によるインバウンド需要は確かに都心店の売上を押し上げた。実際、観光客需要を取り込んだ‘雑貨部門’は全国平均でも+7.6%と高い伸びとなった。しかし、主力の衣料品は紳士が▲2.1%、婦人が▲3.9%と振るわない。もちろん、天候の影響はあるだろうし、主力部門の不振は今に始まったことでない。とは言え、円安を背景にしたインバウンド需要や一時の株高を背景にした富裕層にMD全体が引っ張られ過ぎたと言えないか。つまり、百貨店がもっとも大切にすべきベターゾーンへの取り組みを軽視したことが、最大かつ最後の主力顧客である中間層の百貨店離れをもう一段加速させたということだ。

年明けの首都圏マンション市場は1戸あたり平均単価が前年比+25%と大幅にアップしたものの販売戸数は▲11%に止まった。1月としては5年ぶりの低水準であったという(不動産経済研究所調べ)。今、百貨店はこうした状況に陥りつつあるのではないか。インバウンドの拡大基調は続く。しかし、‘購買行動’の変化は既に顕在化しつつある。マーケットとMDとの乖離がこれ以上大きくならないうちに、百貨店各社はMD戦略を個店単位で見直すとともに、中長期的な時間軸に立って事業戦略そのものを再構築すべきである。次に“遅きに失した”時は、もはや再編すべき業界も残されていないのだから。

今週の”ひらめき”視点 02.14 – 02.18

 

~変化の予兆をつかむ、変化の本質を見抜く~
今週のWebニュースクチコミランキングはこちらからもご覧になれます。

 


コメントを残す