“トランプ的なる強さ”への待望を懸念する
共和党の候補者指名が確実となったトランプ氏はネブラスカ州の演説で「日本が輸入牛肉に38%の関税をかけるなら、アメリカは日本の自動車に38%の関税をかける」と発言して喝采を浴びたという。
米国で販売される日本車の4台のうち3台は米国製であること、販売部門も含めると45万人を北米で雇用する日本メーカーの“グローバル化”の実態を鑑みると、氏の発言が非現実的であることは明白である。
しかし、問題の本質は、「事実に立脚した議論を封じ、不安と不満をもって共感と高揚感を生み出す」手法が極めて有効に機能している点にある。
グローバル化は一方で、それが可能な企業や個人と、国家に代表される制度との関係を曖昧にする。そして、旧来の社会に取り残された人々の受け皿がトランプ氏に象徴される過激なリーダーであり、サンダース氏の善戦、フィリピン大統領選におけるドゥテルテ氏への信任も背景は同じだ。世界は、同様に“内向き”のトレンドにある。強いリーダーシップへの期待、言い換えれば、新たな従属への期待は、かつて、E・フロムが「自由からの逃走」で指摘した状況に類似する。パナマ文書はそうした文脈における反動か、それとも、単なるスケープゴートか。
今週の”ひらめき”視点 05.08 – 05.12
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