貿易収支と対外純資産のトレンドから見えてくる日本の可能性


22日、財務省は4月の貿易収支が3ヶ月連続で黒字となったと発表した。輸出から輸入を引いた貿易収支は8235億円、単月の黒字額は東日本大震災前の2010年3月以来の大きさとなった。
原油安と円高基調の為替トレンドを背景に輸入額が抑えられたことが直接的な要因である。しかし、注目すべきは黒字の大きさではなく、輸出が▲10.1%、輸入が▲23.3%と貿易総額そのものが大きく縮小したことにある。

震災、為替といった要因もある。しかし、これを一時的なものと考えるべきではない。24日、財務省からリリースされた対外資産負債残高によると昨年末時点の直接投資残高は151兆6千億円、前年比106.8%となった。この額は東日本大震災前年の2.2倍、結果、対外純資産は339兆円を越えた。対外純資産とは日本人(政府、企業、個人)が海外に保有する資産から外国人が日本国内に持つ資産を差し引いた額である。日本は2位ドイツ(195兆円)、3位中国(192兆円)を引き離し、世界1位である。

その対外純資産が5年ぶりに前年を割った(▲6.6%)。円高による外貨建て資産の目減りと外国人による円、債権、株への投資が増えたことが要因である。後者はすなわち、‘海外直接投資へシフトする日本’への信任であるとも言え、皮肉にもこれが日本の対外純資産の押し下げ要因となる。

今週の”ひらめき”視点 05.22 – 05.26

代表取締役社長 水越 孝

 

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