三菱UFJ銀、国の国債管理政策と金融政策に一石


三菱UFJ銀行は国債の入札に特別な条件で参加できる特別資格(プライマリー・ディーラー)を返上する方針を固めた。特別資格は国債入札に際して財務省と事前協議ができるといった利点がある一方、発行予定の4%以上の応札を義務づけられる。
三菱UFJの国債保有残高は28.3兆円に達する。みずほ銀行の15.6兆円、三井住友銀行の9.8兆円と比較しても突出しており、マイナス金利の現状にあって国債への投資拡大は大きな損失につながる。投資家や預金者に対する責任を担う一民間金融機関としては合理的な判断である。
これにより直ちに国債の安定消化体制が崩れるわけではない。とは言え、日銀による追加的金融緩和のハードルは明らかに上がったと言え、また、長期金利の動向にもこれまで以上に注視する必要がある。

みずほ、三井住友は「直ちに三菱UFJに追随することはない」と言う。しかし、特別資格を保有する21社の他行他社にあってもいつまでも損失を容認することは出来ないだろう。いずれにせよメガバンクトップの「護送船団からの離脱」は、国の国債管理政策に対する重大なメッセージであり、財政健全化の遅れに苛立つ国際市場からの評価も含めて、日本国債の市場構造を大きく変質させかねない。もはや、異次元だ、バズーカだ、などとはしゃいでいる場合ではない。

今週の”ひらめき”視点 06.05 – 06.09

代表取締役社長 水越 孝

 

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