ブリグジット、正式表明。世界の関係が“取引化”する中にあって、英国とEUは新たな理念を提示できるか


17日、英国のメイ首相はEUからの完全離脱を宣言した。ヒト、モノ、サービスの自由な移動を保証する単一市場から離れ、独立国としての権限を取り戻す。
一方、メイ氏は「野心的な自由貿易協定」を各国と締結し、“グローバルな貿易立国”を目指すとも表明した。
EUとの交渉は容易ではあるまい。そもそも英国の正式な離脱は2年という交渉期間の終了後であり、この間における第3国との交渉は禁じられている。移行期間の設置も取り沙汰されるがこれもまだ不透明である。

日本から英国への直接投資額は22億1000万ポンド、1000社を越える企業が英国に拠点を構える。そして、その多くが英国を含む単一市場EUを見据えての進出である。
経営環境の不透明感は募る。しかし、それゆえに現時点で過剰に悲観する必要はない。むしろ、欧州戦略を見直す好機として、シンプルに自社の海外事業を問い直すことが最大の備えとなるはずだ。

今、米国の行方も見えない。習金平氏はダボス会議で「他国を犠牲にして自国の利益追求をしてはならない」とトランプ氏に釘を刺したというが、自国の政策を省みればそれもまた「取引」の言葉にしか聞こえない。
大英帝国の盟主、英国が自治植民地に対して本国との対等な地位を認めたのは1931年のウェストミンスター憲章である。以後、各国は独立へと進む。立場は逆転した。時間はかかるだろう。しかし、この交渉を通じて英国が“開かれた独立国”として新たな国家観を確立し、一方でEUも地域統合の理想と制度を再定義し、そのうえで両者が生み出す“グローバリズムの次のステージ”に期待したい。

今週の”ひらめき”視点 01.15 – 01.19

代表取締役社長 水越 孝

 

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