コーヒー飲料の容器市場動向
コーヒー飲料用の容器市場に業界の注目が集まっている。特に①コンビニのカウンターコーヒー市場の急拡大に伴う「カウンター飲料」に最適な容器開発②缶コーヒーのアルミ缶化―といった流れが進んでいる。
2012年までカウンターコーヒーは一部のコンビニの展開にとどまり、市場規模は大きくなかった。しかし、2013年にセブン―イレブンが全店導入を発表して以降、同年のカウンターコーヒー市場は6億9500万杯にまで拡大したと推計される。カップ需要量でみると、コーヒーチェーン店が5億個、ファストフード店が11億個とみられる。使い捨て容器の市場としてみれば、コンビニのカウンターコーヒーはコーヒーチェーン店を上回る規模にまで拡大している。
コンビニのカウンターコーヒーにはコールド品とホット品とがあり、コールド品にはプラスチック容器、ホット品には紙カップが使用されている。紙カップは断熱性のあるカップが用いられ、自動販売機の紙カップとは外観も異なる。多くのコンビニでは凹凸のあるエンボス形状の断熱カップが使用されているが、中には発泡断熱カップも採用されている。いずれも熱さを感じにくいように設計されている。セブン―イレブンではエンボス形状の断熱カップが主体であるが、四国・九州では発泡断熱カップも使用されている。
カウンターコーヒーの成功を背景に、コンビニ各社は新たなカウンター飲料ビジネスの立ち上げを検討しているとされる。一部のコンビニではすでに、ミルク入りコーヒーや紅茶などが追加されている。また、生ビールを提供する案も検討されているようだ。こうした動きを受け、容器メーカーにはカウンター飲料に最適な容器開発を急ぐ必要があるとする企業もある。
缶コーヒーを容器形状別にみると、プルタブの付いた金属缶とキャップの付いた金属缶に大別される。キャップ付き金属缶のほとんどはアルミ缶が用いられており、プルタブの缶コーヒー用容器では長らくスチール缶が主に使用されてきたが、現在はアルミ缶の採用が進んでいる。これは鉄鉱石価格の高騰を受け、コーヒー飲料メーカーが鉄よりも比較的価格の安定しているアルミの採用にシフトしていることが影響している。
現在、プルタブ付き缶コーヒーの中でもブラックコーヒーでアルミ缶化が進み、2014年以降にはミルク入りコーヒーでもアルミ缶が採用される機運が高まっている。ミルク入りコーヒーでスチール缶が使用されてきたのは、缶へのコーヒー充?・封止後に殺菌処理工程が必要となるためだが、アルミ缶でも殺菌処理工程への対応を可能にしたことから、ミルク入りコーヒーでもアルミ缶の使用が可能となった。
飲料メーカー各社の缶コーヒーのアルミ缶化への取り組みには温度差がある。コーヒー飲料メーカー3社が積極的にアルミ缶化を進める一方、他のコーヒー飲料メーカーは様子をうかがう状態にある。しかし、スチール缶材コストの高止まりが今後も見込まれるため、先行3社の展開が奏功すれば他のメーカーも追随すると推測される。
2014年8月 主席研究員 相原 光一
株式会社共同通信社「Kyodo Weekly」2014年3月3日号掲載