米中、それぞれの“自国ファースト”が市場経済を脅かす


17日付けの日経によると、中国上場企業の約1割、288社が共産党による経営介入を容認すべく定款を書き換えたという。具体的には社内に党組織を設置し、重大事項については党組織の意向を踏まえるといった内容。権力基盤の絶対的強化を進める習近平指導部に対する過剰な忖度であるのか、あるいは、生き残るための強かな知恵であるのか、実態は不明である。確かなことは企業が共産党の支配下に置かれることを名実ともに受け入れたということである。

はたして企業はどこまで“政治的”に利用されるのか、現時点では分からない。とは言え、企業活動に対する直接的な統制は外資を遠ざけるはずであり、現在の情勢を鑑みれば“経済的”には得策とは言えまい。とすれば、政治的な意味における統制の必要性、言い換えれば、社会の分断が想像以上に大きくなっているということか。香港やSNSに対する尋常でない統制の強化は否が応でもそれを予感させる。
もう一つの大国、米国の分断も危機的な状況にある。人種差別事件に対するトランプ氏の対応は米国を代表する多くの企業によって否定された。しかし、そうした中にあっても、名指して企業を批判し、あるいは、要求する権力による直接介入は続く。

習氏、トランプ氏、権力構造は異なるものの共通するのは極端な“自分ファースト”主義である。米国は北朝鮮問題への中国の取り組みを非難、通商法301条をかざして経済的な脅しをかける。一方の中国はこの6月末に米国債の最大保有国に返り咲いた。いずれ債権者としての立場を米国との交渉に持ち込むかもしれない。今、米中による“政治的取引”の応酬が世界の市場経済にとっての最大リスクとなりつつある。

今週の”ひらめき”視点 08.13 – 08.17

代表取締役社長 水越 孝

 

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